ハッピーエンド
最後です
「まさか私が最初になるとはね」
ドラン王国の王室。ベットに力なく横たわるジル・ドランを囲むように四柱の神々と従者が立っていた。
「申し訳ありません父上。コナー・エイベル及びにクロエ・ラシーヌ、ヤン・リオット、シルヴィ・ラビエとは連絡が取れておらず……こんな時に奴らは何を!」
ジル国王陛下の息子エクトル・ドランはジル国王陛下の横たわるベットに寄り添い謝罪した。
「……いいんだエクトル。」
「ですが父上……」
「……いいんだ。彼らには国のため……いや、世界のために沢山の無理をさせた。これ以上彼らの人生を私が奪う訳にはいかないよ。」
ジルから放たれる言葉の一つ一つをその場にいる全員が噛み締めた。
「……エクトル。最後に一つ聞いてもいいかい?」
「……はい、父上」
「私はエクトルから見て、どんな父親だった?君の父親として手本になることはできたかな?」
「父上は……父上は!誰よりも優しい人でした!家族のことを思い、民や世界のことを考る。普通の父親よりも守るべきものが多いというのに、誰のこともも切り捨てない。最高の父親であり!尊敬する王様です!」
エクトルは大粒の涙を流し、しゃくり上げながらも自身の思いを父に伝えた。
「そうか……なら良かった。すまないエクトル……私は少し疲れた……少し眠ることにするよ……」
「はい……おやすみなさい父上……後のことはお任せください。父上たちの作った平和は、私……いえ、私たちで後世まで守ってみせます。」
ドラン王国国王 ジル・ドラン 享年 百五十八歳
老衰にて死亡 王室のベットで家族や神々、従者に安ら中に眠った。世界を救った英雄が一人亡くなったことは、瞬く間に世界に広がり、涙を流した。
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「ジル様亡くなったって……」
サンテール王城、その一室にも、古き旅の仲間の死を悲しむものが二人。
「そうね……後でお墓参りに行きましょ。コナーやクロエも誘ってね。」
「あぁ……」
「そんな顔しないで、ヤン。それともあの日の決断を後悔してる?」
「そんなわけないだろ!君と一緒になれたことは今でも嬉しいし、最高だよ!けど……知り合った人が一人……また一人と自分の前から死んでいくのは、なんというか……」
「そうね……意地悪してごめんね!それにしても思い出すわねあの日のこと……」
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「シルヴィ……俺と付き合ってくれ!」
フェルメとの戦いから三年。ヤン・エリック二十才。シルヴィ・ラビエ 年齢?
「ちょ……突然なに!」
「君がコナーのことが好きなのはわかってる!」
「な……!」
「だから、玉砕する覚悟はしてきた!はっきり答えてくれて構わない!」
「だから、ちょっと待ちなさいって!なに、ヤンって私の事好きだったの!?異性として!?」
「……海蝕洞で溺れた俺を助けたことがあっただろ
?あの時に一目惚れしたんだ。」
「そんなの覚えて……思い出した!あれってヤンだったの!」
「気づかれてすらいなかったか……」
「そりゃそうでしょ一瞬のことだったし……ってそんなことで好きになったの!?」
「君にとっては「そんなこと」かもしれないけど。俺からしたら大事な思い出なんだ。薄れかける意識の中見た君の姿は今も忘れない。」
「それで……付き合ってくれと……」
「あぁ!どんな答えでも受け入れるつもりだ!」
シルヴィは同じところをグルグルと歩きながら少し考えた。
「ねぇ、ヤン。」
シルヴィはヤンの名前を呼ぶと、自身の指を少し切り、傷口から水の魔力で血液を操り、ピンポン玉ほどの血液の球体を生み出した。
「私たち魚人は長生きなの。あなたがもしケヴィン元国王のように、大量の魔力が込められた人魚の血液を飲んでくれるなら結婚だってしてあげてもいいわ。」
ケヴィン元国王は現サンテール女王レティシアの血液から魔力を取り込んだおかげで、一命を取り留め、長命となった。
だがエルフやドワーフや魚人とは違い、老いる速度は変わらず、ケヴィン元国王は三百年間老い続けることになり、言葉を発することすら苦痛を感じることとなった。
ヤンは一切迷うことなくシルヴィの作り出した血液の玉を片手で受け止め口に含んだ。
「……ちょ!」
何の躊躇もないヤンの行動にシルヴィは驚いたが、ヤンは気にすることなく「ゴクリ」と音を立て飲みこんだ。
「ヤン、あんたねぇ……もう少し考えなさいよ!ケヴィン元国王の話は聞いたでしょ!長生きすることはできても老ける速度は変わらないよ!」
「考えたよ……ずっと考えてた。」
「ずっとって……」
「俺やコナー……それにクロエは普通の人間だ。ジル王子だってケヴィン元国王ほど長生きはできない。そうなったら君が一人残されてしまうから……もしも告白が上手くいったら君から血液を貰うつもりだった。」
「どうしてそこまで……」
シルヴィは気づいていた。自分だけが世界に取り残されることを。だが、ヤンはシルヴィ以上にシルヴィのことを考えていた。
「君が好きだから」
シルヴィは両手で顔を覆い隠し涙を流した。義理の母であるレティシアとケヴィン元国王の悲劇。人間と異種族の恋愛など上手くいかないと思っていた。
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「それで私たちは結ばれたのよね!あの時のアナタが言った「君が好きだから」は何度思い出してもかっこよかった!」
「……恥ずかしいから辞めてくれ。」
「ごめんごめん!そういえばあの後お母様に挨拶しに行って、「海や森なんかの魔力が多い場所で過ごせば老けるのも遅くなるわよ」って言われたっけ!」
二人が過去の思い出話に花を咲かせていると。
「パパとママばっかりずるい!私もお話混ぜて!」
「アリエル!そうね、どこから聞かせましょうか……あれは、まだ海が恐れられ、魔物が危険な生き物だった頃。サハギンに追われていた一人の女の子のお話。」
ヤン・リオット 享年 五百六十歳
人魚の血を飲むと不老不死になれるというデマが流れ、人間による人魚狩りが行われた際に娘のアリエルを庇い瀕死の重症を負った。ヤンは瀕死の状態で人魚 狩りに来た人間を皆殺しにした後、シルヴィの膝の上で息を引き取った。
シルヴィ・ラビエ 享年 六百五十八歳
ヤンの死後も魚人の女王として長い間、君臨し続け老衰にて家族と民に惜しまれながら亡くなった。
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「次はどこに行く?……コナー?」
「……ドランに行こう。久しぶりにジルさんに会いたくなった。」
「そうだね!じゃあドラン王国に出発!」
コナー・エイベル 享年???
雷の神チャクが体に宿ったことにより、長命へと変化。パペティアの語った最悪の未来を迎えないため今日もクロエ・ラシーヌと世界を回っている。
クロエ・ラシーヌ 享年???
普通の人間であったはずの彼女だが、何故か数百年経っても姿も変わらず存命している。現在はコナー・エイベルと共に世界を回って悪い人間を懲らしめている。
最後まで【異世界冒険録~七柱の神と十の種族~】を読んで頂きありがとうございます。
本来この作品はマルチエンディングで他のルートも書く予定だったのですが、他の作品を描きたい欲が湧いてきてしまい断念することにしました。
最後に補足として。この物語はパペティアが世界で暗躍していた時は悲劇などがコナーの周りで起きましたが、パペティアが死んだ後はフェルメが脚本をするようになり単調な話になります。
フェルメにはパペティアのような脚本家としての才能がなく、あっさり死ぬ結末がお似合いだと思い第二形態は一話で退場してもらいました。
他にも話したいことは沢山ありますが、これにて【異世界冒険録~七柱の神と十の種族~】の後書きを終わります。(タイトル変更を考えているのですが案がある方はXにて連絡いただけると助かります)




