誕生日パーティーの夜
投稿の際、誤って抜けてる話がありました……。
申しわけありません……。
いてっ
また布団を敷くのも忘れて寝てしまった。
小鳥の手が私の顔面に触れていた。
寝返りを打った拍子に私の顔を叩いたらしい。
(フランはどうしてるかな)
猫型ロボットを真似て、フランは夜は押し入れで過ごしてる。
私が寝てる間、フランは何をしてるんだろう。
ちょっとだけ様子が気になった。
押し入れに耳をくっつけてみる。
「……っぐ……っぐ」
小さく泣いている声が聞こえた。
なんで?今日はあんなに楽しかったのに。
小さくノックをして押し入れを開ける。
「……フラン?大丈夫?」
「お嬢様!もう寝てる時間では!?」
涙を拭って私の方を向く。
それでも涙は隠しきれていなかった。
「しー。小鳥寝てるから。
ちょっとだけ外で話さない?」
フランは小さく頷いて、私に着いてきた。
「なにか嫌なことあった?大丈夫?」
アパートの外。
誰も使っていない駐車場に2人で腰掛ける。
フランは涙を堪えるように口を結んで何も喋れない。
「私と小鳥がお誕生日を迎えたのが嫌だった?」
フランが悲しむなら多分寿命のことだと思った。
「お嬢様はお見通しですね。」
そしてそれは図星のようだった。
「小鳥お姉様はお嬢様より1つ歳上なんですよね。
いつか小鳥お姉様は私たちより先に居なくなって、お嬢様もいつか居なくなってしまいます。」
小さな声で少しずつ言葉を紡ぐ。
「やっぱり60年って時間は短いです。」
そう言ってフランはポロポロと涙を零した。
私はただ静かにフランの頭を撫でる。
フランの余命をずっと一緒に過ごす。
もしそれができるならどれだけ幸せだろう。
でもそれは絶対にできない。
だから私は何も言わなかった。
だから私は……。
「お嬢様?なんで笑ってるんですか?」
フランが驚いた顔で私を見る。
「今日がすごく楽しかったからだよ。」
私はそう言ってフランの涙を拭った。
「フランが居なきゃお誕生日会なんてしなかった。
小鳥とももう会わなかったかも。
でもフランが居たから楽しかった。
フランが居たからまた友達になれた。」
フランの口元を引っ張り、無理やり笑顔にする。
「フランが言ったんだよ。
短い時間を一緒に楽しもうって。
だから笑って。フランも楽しんで。」
フランの口から手を離す。
その顔はちゃんと笑顔だった。
「でも泣きたい時は一緒に泣こうね。」
私はそう言ってフランの手を引く。
部屋に戻ると小鳥は何も気づかずに眠っていた。
「しー、ですね」
フランが口元に手を当てて押し入れに戻る。
その顔はさっきよりも安心した顔に見えた。