サッカーの始まりと裏切り
始まって5分経つ頃には小鳥の言葉の意味が分かった。
「心配しないでいい。」
「お前がそこまでズルいとは思わなかった。」
その2つの言葉の意味が。
始まって5分で私たちは2点リードしていた。
小鳥とフランだけじゃない。
店長さんも異様に強い。
スペック差で言うならば……。
私と雛乃が三輪車。
メイドさん達が自動車。
敵チームがスポーツカー。
小鳥とフランと店長さんはガンダムだ。
機体差の暴力。
どう考えたって負けはない。
私がゴールキーパーでぼーっとそんなことを考えてる間にまた1点取った。
これで3-0。
「……」
このままでは余裕で勝てる。
だけど。うーん。
「タイム!!タイム!!」
試合が再開する前にタイムを取る。
こんな一方的な試合、楽しくない!
「小鳥!ちょっとだけいい?」
手を引いて物陰へ。
「店長さん!なにもの!」
小鳥は店長さんの正体を知ってる。
何ものなの!あの人!
「お前が連れてきたのに知らねぇのかよ。」
呆れて1つため息をつく。
そしてその正体を教えてくれた。
「元プロだよ。女子サッカーの。」
「そんなの私たちずるじゃん!」
「まぁでも相手は店長さんの正体気づいてるし。
その上で楽しそうにしてるからいいんじゃね?
元プロとサッカーできる機会って貴重だし。」
問題はそこだけじゃない。
そりゃ負けたくなかったし、店長さんが頼れるのは嬉しい。
でも……。
私は自分の力で頑張って勝ちたい。
運が良かったから、何もせずに勝てました。
そんなの嫌だ。
「そうだ!向こうのキャプテンにお願いしてくる!」
「な、なにをだよ!?おい!」
すぐに向こうのキャプテンと話はついた。
仲間にも許可を取る。
「ちょっとはしゃぎすぎたわね……。
私、抜けた方がいいかしら?」
「いいですいいです!
そのまま本気出してください!」
もう全部準備は整った。
私は自分の顔を両手で一度叩いて、覚悟を決める。
「雛乃も、みんなもごめんね。
私の我が儘に巻き込んじゃって。」
そう言うと仲間たちは口々に大丈夫だって言ってくれた。
「あの3人に目にもの見せよう!」
私は元キャプテンとして声を張り上げる。
15人の仲間たちに聞こえるように。
そして3人の敵にも聞こえるように。
「お嬢様。敵になるのは二度目ですね。」
「前と同じ作戦は効かねえからな。」
「手加減してほしくなったら言ってちょうだいね!」
敵はフランと小鳥と店長さん。
相手にとって不足はない。




