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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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このみちゃんについて


「ちょっとこの後時間あるか?」


カラオケの翌日。

寝ぼけ眼を擦ってランニングした後、私は小鳥に呼び止められた。

なんのことだろうか。

メンバー集めのことなら、言われなくても頑張るつもりだ。

今日こそは新しいメンバーを集めてみせる。

カラオケで上がったテンションは依然上がったまま。

今日の私は一味違う。


でもそんなやる気も速攻で出鼻を挫かれてしまった。


「もうメンバー集めはやめていい。」

朝ご飯を食べ終えたあと、小鳥はそう言った。


「あれ?まだ8人だよね。足りないよ?」

「こっちにはフランちゃんとあたしがいるし。

 8人でも充分だろ。」


それでも3人差だし。

相手が誰かもまだ聞いてない。

やるからには勝ちたいし、メンバーはちゃんと揃えたいけど……。


「相手はうちの大学のサッカーサークル。

 お遊びでやってるくらいだし、そう強くはねえよ。」

「でもなんで急にメンバー募集辞めるの?

 私、やる気満々だよ?」


そう言うと小鳥は少しだけ困った顔をした。


「ほら、前に雛乃のストーカーに絡まれてたろ?

 目立って変なのに絡まれて欲しくねぇんだよ。」

そう言うと小鳥はポリポリと頭を掻いた。


「まぁそこまで言うならやめるけど……。

 相手チームの人に怒られない?」

初心者だらけのチームで、メンバーも足りてない。

ナメられてると思われても仕方ない。

「そこはあたしの頑張りでどうにかするよ。

 あたしは3人力くらいはあるしな。」

小鳥は胸を張ることもなく、それが当然であるかのように言った。

そこまで言うなら信じるけど……。


「でもこのみちゃんって結局どういう子なの?

 そんなに変な子には見えなかったよ。」


小鳥がちょっと気まずそうな顔をした。

でも私ももう当事者だ。

どんな子なのか、知ってることは聞いておきたい。


ちょっとだけ迷って小鳥が話し出す。


「どこまで知ってる?」

「このみちゃんは雛乃と付き合ってたと思ってる。

 それと家の前で小鳥に追い払われたところまでは。」


小鳥はまた大きなため息をついた。


「まあ大体はその通りだよ。

 でも私が追い払ったのは1回じゃないからな。」


聞くとこのみちゃんの付き纏いはだいぶ深刻だったらしい。

ほとんどノイローゼになるくらいに。


朝も夜も恋人だからと家に来る。

最後の方は小鳥も泊まり込みで対応したらしい。

結果的に雛乃はバイトを辞め引っ越した。

それくらいまでに、このみは思い込みが強いとのことだった。


「お前と雛乃が似てるとはいえ……。

 本当にお前に矛先を向けるとは思わなかったよ……。」

「多分もう大丈夫だとは思うけどね……。

 私、法に触れるタイプのロリコンだと思われたし。」


でもあんまり深く関わるのは確かに辞めた方がいいだろう。

みゆちゃんとの関係が嘘ってバレたら、みゆちゃんにも矛先が向きかねない。


「そんな訳だから、サッカーのメンバーは気にすんな。」

そう言って小鳥は私の頭をくしゃくしゃと撫でた。

まるで小さい子どもを慰めるように。

心配してくれてるのは分かるけど、さすがにその扱いは嫌だ。



「よし!」

私が急に大きな声を出したから小鳥が首を傾げた。


「代わりにサッカーで活躍するから!

 私が3人分……いや2人分は頑張るよ!」


そう私は宣言する。

メンバー集めの代わりに、サッカーで頑張ってやる。

フランや小鳥に頼ってなるものか。

子ども扱いなんて二度とさせてやらない!


ぽかんとする小鳥の手を引く。


「ほら、大学まで時間あるし!

 練習手伝って!」


さっきまでの深刻な顔も崩して小鳥が笑う。

微笑ましいものを見るように。


試合までは残り11日。

これからが私の本気の見せどころだ。


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