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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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パピコパーティー


「はいみゆちゃん、半分あげる。」

「ありがとね、おねえさん。だいすき。」


帰り道。

コンビニの前で私たちは少し寄り道していた。

みゆちゃん希望の勝利のパピコ。

コンビニで買ったからスーパーで買うよりちょっと高い。

でも今はそれも気にならなかった。


(???)


いや、頭の中ははてなでいっぱいだもん。

87万円。

そう、87万円だ。

さっきまで100円買ったとかで一喜一憂していたのに。

87万円。

全然理解が追いつかない。


「おねえさんしゃがんで。あーん。」

「あーん。」

言われるがままに口を開けると、みゆちゃんがパピコを口に入れてきた。

「すって。」

「ーっ。」

言われるがままに吸い込む。

ホワイトサワーの美味しい味がした。


「でもこれで当面のお金問題は解決ですね。

 おめでとうございます。お嬢様。」


フランは笑顔でそう拍手した。

小鳥も釣られてパチパチと拍手。

小鳥の手には私が奢ったパピコ。

唐揚げのお返し、チョココーヒー味。


「でもふたりで決めたからね。半分はみっ」

半分はみゆちゃんの。

そう言おうとしたが、当のみゆちゃんに邪魔された。

口をちっちゃな手で無理やり塞がれてしまった。

「おかねだしたのはおねえさんだから。

 ぜんぶおねえさんのだよ。」

そう言ってむにーっと口を引っ張られた。

「いうあん、おあえのおお。」

「きこえない。」

お金のことだから、ちゃんと話さなきゃ。

そう言いたいのに、みゆちゃんの手が口から離れない。

無理やり引き剥がすわけにもいかず、またされるがまま。


しばらく口の中をむにむにされて、ようやく解放。

溶けかけのパピコをぐっと吸い込んで、ちょっと真面目なお話。


「みゆちゃん、でも本当にお金は大事だからね。

 半分はみゆちゃんの。これは譲れないよ。」


まっすぐに目を見てそう言うと、みゆちゃんはむーと口を尖らせた。

でもちょっと考えたあとに頷いてくれた。

これで取り分は半分ずつ。


「お金はひとまずおじいちゃんに預けるね。

 無駄遣いしちゃだめだよ。約束。」

「うむ、やくそく。」


指切りげんまん。

まあ無駄遣いしちゃ駄目なのは私も同じ。

お互いにとっての約束。


「では帰って焼き肉パーティーですね。

 ふふ。お嬢様のお金持ち祝いですね。」


フランはそう言ってパピコのゴミを私たちの手から抜き取った。

そのままスキップして歩き出す。

私が楽して当面のお金を手に入れたのがよっぽど嬉しいらしい。

跳ねるようなスキップ。

ちょっと歩いたらくるりと回ってにこりと笑顔。

とっても可愛い。


「お嬢様、これからも競馬で稼ぎませんか?

 楽しみながら稼げるなんて天職だと思います。」

でも言ってることは中々に凄まじい。

私にそんな才能はない。

「こ、今回はたまたまだからね。

 うん、もうしない……。

 簡単に儲けられるって思っちゃいけない……。」

「むー。別にいいのに。」

にこにこ笑顔から不満げな顔。

でも職業ギャンブラーはちょっとさすがにね。

みゆちゃんの教育にも悪い。


「みゆちゃんも今回はたまたまだからね。

 競馬で暮らそうとか思っちゃだめだよ。」

「うむ。しょうち。」

「あと小鳥も!こんなのたまたまだからね!

 絶対に真似しちゃだめだよ!」

「いや、しねぇよ。

 あたしを何だと思ってんだよ。」

「おばか。」


チョップされた。


「まあでも貯金はしとけよ。

 将来のこととかあるしさ。」


小鳥はぶっきらぼうにそう言った。

将来のこと?

言ってる意味が分からず首を傾げる。

すると小鳥は失言でもしたかのように目を逸らした。

その反応から老後の資金のことでは無さそう。

小鳥の言う『将来のこと』とは……。


(え、まさか。)


まさかまさかだけど、私と小鳥との将来のこと考えてる?

一緒に過ごすにはお金も必要だから貯めておけと。

そんなこと言いたいの……?


「おねえさんかおあかい。」


みゆちゃんが私の顔を見てそんな風に言った。

いや、考えすぎかもしれないけどさ。

でもやっぱり気になる……。

クリスマスに告白する予定なんだもん。

ちょっとくらいは今のうちに成功する理由のひとつくらい増やしてもいいよね……?


「え、えっと将来ってな、なんのことかな。」

「い、いや、その。」

「な、なんか気になる言い方だね。」


勢いに任せてゴリ押す。

すると小鳥は観念したかのように口を開いた。


でもそれは私の思った答えじゃなかった。


「お前と雛乃。付き合ってんだろ……?

 将来結婚とかするならさ。

 貯金は必要だろ……。」


お前と雛乃付き合ってんだろ。

お前と雛乃付き合ってんだろ。

頭の中で反芻して、そう言えばそうだったと思い出す。


ふむ。


(ぎゃあーーー!!!忘れてた!!!

 小鳥に告る前に、その誤解解かないとじゃん!!!)


小鳥は私と雛乃が付き合ってると思ってる。

その誤解を解かないことには小鳥が付き合ってくれるわけがない。


「あ、そ、そうね。ひ、ひなのとね。

 たしかにそうだね。」


私はかろうじてそうとだけ答えた。

ということで、明日は雛乃とちゃんとお話しなければ。

ちゃんと別れる。

そんな重大ミッションが舞い込んでしまった。


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