お昼休みと後半戦
「ふふっ。中々苦戦中ですね。」
4つのレースを終えてお昼休み。
3人並んでお昼ご飯を食べていると、フランは笑ってそう言った。
そう、中々に苦戦中。
4レースを終えて残金は1000円。
今のところ勝ちはない。
「いつも惜しいんだけどね。むずい。」
「ね。むずい。」
そう言ってみゆちゃんと頷きあう。
2レース目と3レース目はそこそこに人気の子の単勝に賭けて失敗。
4レース目はちょっとでも勝ちたいなと1番人気の子に200円賭けてそれも失敗。
安全策でも駄目なものは駄目。
賭け事というのは難しい。
「ふふっ。悪いな。あたしばっかり勝っちまって。」
小鳥は煽るようにそう言った。
負け続ける私たちとは対照的に、小鳥は地道にちょっとずつ勝っている。
現在の残高は1850円。
いつの間にか850円も差がついてしまった。
850円の差は大きい。
お昼ご飯も、小鳥はうどんの他に唐揚げまで買っている。
「勝者のご飯は豪勢でいいですな。」
「いや、あたしは普段からこうだろ。
でもほら、勝者からの恵みをやろう。」
「ありがと。」
お恵みでもらった唐揚げをひとくち。
みゆちゃんもひとつ貰ってふたりではむはむ。
まあでもここからどう逆転しようか。
穴馬に賭けて一発逆転?
それとも本命でじわじわ狙い?
うーむ、難しい。
「みゆちゃんはどう思う?」
「つよいおうまさんにかけよう。」
「オッケー。作戦は決まりだね。」
作戦名:強いお馬さんに賭けよう。
強いお馬さんに賭ければ負けない。
シンプルだけどいい作戦だ。
「よし、じゃあご飯食べたらまたパドックだね。
ふたりで強いお馬さん見極めよう?」
私がそう言うと、みゆちゃんはぐっと親指を立てた。
ということでご飯を食べてパドックに移動。
またふたりで実際にお馬さんを見ながら作戦タイムだ。
「見て見て!あっちのお馬さん白くて綺麗!
絶対に強いよ!」
「きぐう。わたしもそうおもってたの。
あのおうまさんにしよ?」
「うん!」
作戦タイム終了。
今回賭けるのは『サトイモダイコン』。
倍率は7.4倍。
3番人気の子だ。
「ふーん。じゃああたしはあっちの子にする。
今回は複勝にしとくわ。」
小鳥が賭けるのは4番人気。
単勝での倍率は8.1倍。
複勝だと2.6倍。
「次は負けないからね!」
「からね!」
ふたりでそう宣言してレースの見える位置へ。
そして結果は。
「また負けた……。」
「けたね。」
やっぱり駄目だった。
競馬むずい。向いてない。
コーヒー味のアイスを買って反省会。
「でもまた2着でしたよ。すごく惜しかったです。」
フランはそう言ってみゆちゃんの頭をよしよしと撫でた。
うーむ。
でもこれでまた差がついてしまった。
「小鳥は勝ったんだっけ?」
そう聞くと小鳥はドヤァと悪い笑顔をしてみせた。
これで1000円差。
でも残りは7レース。
まだ諦めるような時間ではない。
そしてそれから5レース。
結果から言うと、もうだめだめだ。
勝てなくなった。
「フラン、夜ご飯は焼き肉にしようぜ。
お金はあたしが出すからさ。」
「ふふ。もちろんいいですよ。
小鳥お姉様。今日はすごくついてましたもんね。」
勝利を確信して、小鳥は朗らかにフランとそう話してる。
もうこの時点でほとんど小鳥の勝ちは決まった。
私とみゆちゃんチームは一度勝ったものの、残金500円。
小鳥は一度大きく買って、残金はなんと4000円。
勝ちを確信するのもむべなるかな。
「お嬢様、次のレースで最後にしましょうか。
焼き肉パーティー、ゆっくりやりたいですよね?」
フランはそんな提案をした。
むー。
次で最後になるのか。
「……まあ、しょうがないか。
でも最後まで諦めないからね。」
「からね。」
みゆちゃんとふたりで戦意をアピール。
せっかくだ。
最後に一発逆転を狙おう。
「よし、最後はどーんと三連単狙おうか。
勝つなら圧倒的に!だよ!」
みゆちゃんに向けてそう言うと、みゆちゃんは少し考えたあとにぐっと親指を立てた。
私の作戦に乗ってくれて嬉しい。
さてさて、じゃあ最後のお馬さん選びだ。
もう倍率は気にしない。
みゆちゃんとふたりで強そうなお馬さんを目利きして、残りの800円で三連単を買った。
1着から3着まで寸分の狂いなく的中させる。
まあまず当たんないだろうけど、勝てば一発逆転。
圧倒的な大勝利だ。
「もしあたったらパピコはんぶんこしたいな。」
「当たったらね。そのときはパピコパーティーしよ?」
「お腹壊しちゃうのでだめです。」
パピコパーティーの案はフランに却下された。
でもひとまずこれが最後の勝負。
ほんの僅かな期待を込めてレースが見える位置へ。
そして結果は約87万円が手に入った。
小鳥との勝負は私とみゆちゃんチームの勝ち。
んな馬鹿な。




