金策そのいち 怪しくないお薬
「フラン、だいじょぶー?」
「はい!大丈夫です!」
めぐるちゃんが持ってきた錠剤。
点検したフランから安全のお墨付きは貰えた。
つまりこの薬に一切の害はないということだ。
治験の内容は以下のとおり。
1日2回の錠剤を1週間。
それでなにかぼんやりしたり身体があついなーってなったらめぐるちゃんに伝える。
ただそれだけ。
つまり実質的な拘束時間はゼロ。
フランもそれなら良いでしょうと許してくれた。
「じゃあ最初の一錠……いただきます。」
お水を口に含んで、錠剤を飲み込む。
おっきくないし飲み込みやすい。
とりあえずこれで治験はスタート。
さてさて何がおきるやら。
「とりあえず何も感じないよ!
元気いっぱい!」
むきむきと元気をアピール。
めぐるちゃんは小さく笑って応えた。
「効果が出るにしても時間はかかりますからね。
えへへ。でも実験がありますからね。
今日はずっと一緒に経過観察です……。」
そう言ってめぐるちゃんが私に近寄る。
経過観察なら仕方ないね。
さて、なにして遊ぼうか。
とまあそんな風にスタートした怪しくないお薬の治験。
1日目は特に何もなし。
2日目も特に何もなし。
めぐるちゃんと一緒に居る時間が増えたこと以外は、特に変化のない日々。
ただ気になることもひとつ。
「お、王子様……?なにかどきどきしたりしませんか?」
めぐるちゃんはしきりにそんな風なことを聞いてきた。
特にそんなことはないけど……。
でもそう言われると少し気になってしまう。
そんなちょっとした違和感を抱えて4日目。
治験も折り返しに入った日。
めぐるちゃんの勉強を見てるときだった。
(……?)
エアコンは……ついてない。
でもなんだか妙に暑い気がする。
「めぐるちゃんめぐるちゃん。
もしかして薬効いてきたかも。
ちょっと暑い気がする。」
私がそう言うと、めぐるちゃんは目を光らせた……気がする。
ようやく薬の効果が出てきたからだろう。
ちょっと嬉しそうだ。
「え、えっと、それじゃ経過観察です!
い、色々質問させてください!」
そう言うとめぐるちゃんは机の引き出しから聴診器を引っ張りだした。
椅子を少し回転させて私と向かいあう。
なんだか病院に来たみたい。
「え、えっと。他に症状はありますか?」
「んー。特にないかな。
身体がちょっとぽかぽかするだけ?
今、暖房はついてないよね?」
「は、はい!暖房ついてないです!
ぽかぽかするのはお薬の効果ですね!
そういう効果があります!」
強く断言された。
じゃあそういうことなのだろう。
ぽかぽかするお薬……。
なんのためのお薬なのかな。
それはさておき、診察は続く。
「えっと……お熱は……?」
まずはおでこに手が触れる。
そっと触れたあと、ちょっとの間。
そしてすぐにおでこをこつんとぶつけてきた。
「……!?」
自然な流れでぶつけてきたから、ちょっと反応が遅れた。
おでこぶつけんのはお医者さんじゃなくない??
急にそんなことされると心臓に悪い。
「ご、ごめんなさい!でも熱はなさそうですね。」
「う、うん。熱はないと思うな……。」
「ふむふむです。」
どきどきはしたけどね。
とはいえそれは治験には関係ない。
というかそんなことレポートに残されたら困る。
ということで、それは隠して次の質問を待つ。
「王子様、手を出してください。
「う、うん。」
言われるがままに手を差し出す。
するとめぐるちゃんはふにふにと私の手を揉み始めた。
「めぐるちゃん、こ、これは?」
「みゃ、脈を測ってます!
や、やましいことなんてないですよ!ほんとです!」
「ふ、ふーん。そ、そうなんだ……。」
ふにふにふにふに。
やたらめったら手を揉まれる。
そんな風に脈って測るものだっけ?
でもこれも治験のため。
恥ずかしいけど我慢……ひゃっ!
「め、めぐるちゃん、く、くすぐってない??」
「え、ぇと、そう、あの……。
お薬は皮膚を過敏にする効果もあって……。
そ、それを確かめ中です……。」
そ、そうなのか。
身体をぽかぽかさせて皮膚を過敏にする。
なんとも不思議なお薬だ。
(くすぐったい……うぅ……。)
ぎゅーっと口を結んで我慢。
こしょこしょこしょこしょ。
確かに普段よりくすぐったいかも。
むぅー……。
それからしばらくすると、めぐるちゃんは満足したかのように手を離した。
そしてスマホにポチポチとなにかを入力。
報告書でも書いてるのかもしれない。
「とりあえずこれでいいよね……。
ちょっとアイス食べて冷えたいかも……。」
「え、えっと、さ、最後、最後です!
お腹、お腹めくって……」
聴診器を構えるめぐるちゃん。
まあお医者さんといったらそれだもんね。
言われるがままにお腹をめくる。
そんな時だった。
「ただいまー。わ、なんかあちぃな。」
ぱたぱたと手で扇ぎながら、小鳥が帰ってきた。
ん、あれ?
「おかえり小鳥。暑いの?この部屋。」
「うん?めっちゃ暑いぞ。窓開けていいか?」
そう言って小鳥は窓を開けた。
涼しい風が入り込む。
不思議なくらいにすっきりとした空気に変わった。
さてさて。
どうやら身体のぽかぽかはお薬のせいじゃないようだ。
「それで?これはいったいどういうこと?」
ということで、これからは事情聴取タイム。
なぜめぐるちゃんは嘘をついたのか。
その謎を解き明かさねば。




