椅子取りゲーム
「それでは椅子取りゲームを始めます!」
「いえーい!!」
現在のメンバーは7人。
私、フラン、小鳥、雛乃、いちごうさん、にっきさん、さんさん。
7人でできるゲーム。
みんなで考えて、いちごうさんの案が採用された。
椅子取りゲームのルールはシンプル。
音楽が鳴ってる間は椅子の周りをぐるぐる歩く。
音楽が止んだら、椅子に座る。
7人で椅子は6つ。
誰かが脱落する。
誰かが脱落したら椅子を減らして再スタート。
最後のひとりになるまで、それを繰り返すというものだ。
ただ普通のお家に椅子は六脚もないから、今回は座布団3つと座椅子3つで代用だ。
スピーカーの準備もおっけー。
さっそくゲーム開始……の前に。
「じゃあ罰ゲームはどうする??」
「では罰ゲームはどうしようか?」
私といちごうさんの声が被った。
勿論、ゲームをするなら罰ゲームは必須だ。
「こしょこしょ!こしょこしょがいいです!」
「はい、じゃあくすぐりに決定ね!」
フランのひと声で罰ゲームはくすぐりに決定。
いたずらっ子なフランは人をくすぐるのも好き。
罰ゲームが決まったら、次は商品を決める番だ。
「優勝商品は……」
「フランちゃんにぎゅーされたい!」
「はい!いいですよ!」
さんさんの言葉に、フランがそう元気よく返事をした。
というわけで優勝商品はフランのぎゅー。
ふへへ。
それは絶対に欲しい。
さてさて。
罰ゲームも賞品も決まったところでゲーム開始。
椅子を囲んだところで、いちごうさんが音楽を流した。
『どぶねーずみみたいにー♪うつくしく』
綺麗な歌声。
聞き覚えのある声だ。
「待って!!ストップ!!」
雛乃がそう言って、いちごうさんに飛びかかる。
するといちごうさんはスマホをすーっと滑らせた。
『しゃしーんにはうつらな』
追いかけた雛乃が音楽を止める。
その隙にみんなが椅子に座った。
まあ、つまり。
「雛乃お姉様の負けですね!お覚悟を!」
「ずるい!ずるいわ!卑怯よ!ひゃっ」
ジリジリとにじりよるフランに、雛乃はそう抗議した。
ただそんな抗議もなんのその。
フランは雛乃を押し倒すと、くすぐりを始めた。
「まっ、だ、だめ、ひっひゃっ」
「待ちません!えへへ。」
フランの容赦ないくすぐり。
まずはひとり目の犠牲者だ。
「雛乃、リンダリンダなんて歌うんだね。」
「酔ってるときは歌うよー!
えへへー。これでひとり脱落だね!」
いちごうさんはそう、悪戯に笑った。
思ったよりも彼女は策士なのかも。
なにはともあれ、ゲーム再開だ。
音楽係は雛乃に交代。
今度は普通のアップテンポなBGMが流れ始めた。
BGMに合わせて椅子の周りを歩く。
(とりあえず早めに小鳥は潰しときたいな。)
このゲーム、当然だけど1番やばいのは小鳥だ。
瞬発力もフィジカルも群を抜いている。
というわけで小鳥を潰す。
これはもう確定事項。
次に音楽が止まった時が小鳥の終わりだ。
BGMが止まる。
その瞬間、私の作戦が始まった。
「あ、小鳥。UFOだ。」
「は?」
「もらいっ。」
一瞬の隙を見逃さず、椅子を奪った。
他のみんなも無事に座れた。
小鳥はこれで敗北。
「は!?今のはずるだろ!?」
「頭脳プレーだよ。ふふー。小鳥の負けー。」
「ふふー。罰ゲームです!」
「わ、待て!ぎゃ、ひゃ、ははは!」
フランの罰ゲームタイム。
2分くらいそれを眺めて、またゲーム再開。
これで残りはフランといちごうさん、にっきさん、さんさん、私。
フランのぎゅーまであとちょっと。
そこからはシンプルな椅子の奪い合いだった。
3回戦でにっきさんが脱落。
4回戦でいちごうさんが脱落。
「新入り、意外とフィジカル強いね。」
「ふふー。毎日フランたちと走ってるからね。」
やっぱり私はだいぶ強くなっているらしい。
普通の女の子には押し合いで勝てるようになっている。
筋肉もりもりになるのもそう遠くない。
とはいえここからが勝負どころだ。
対戦相手はさんさんとフラン。
さんさんはスポーツも万能らしいし、フランは無敵の存在だ。
(とりあえず揺さぶりをかけてみるか。)
「さんさん、負けてもフランがくすぐってくれるよ?
それはそれでお得じゃない?」
「え、フランちゃんのぎゅーだよ?
負ける選択肢はないよ。」
真顔。
どうやら揺さぶりは効かないようだ。
正々堂々頑張るしかあるまい。
「じゃあいくよー!ミュージックースタート!」
その掛け声に合わせて、また音楽が鳴り始めた。
まあとはいえだ。
毎日ラジオ体操をして、毎日ランニングをしてる。
そうやって基礎体力の上がった私なら、多少は勝負に……。
「あれ?」
BGMが鳴り終わったと思った瞬間。
もうその頃には勝負が決していた。
フランもさんさんも早業すぎる。
私の立てる戦場じゃなかった。
「へへー。お嬢様にはまだ負けないですよ?
私は完璧な執事ですので!
では罰ゲームです!」
ということで私も罰ゲーム。
念入りに全身をくすぐられた。
「……」
「新入り。大丈夫?」
雛乃がよしよししてくれた。
なんか私だけ罰ゲーム気合い入ってた……。
フラン、めちゃくちゃ楽しそうだったけど地獄を見た。
泣いても許してくれないとは。
一生分笑った気がする。
気を取り直して最終戦。
フランVSさんさん。
「え、え、えっとふふふらんちゃん?
私、勝ったら、ぎゅー。」
「もちろんです!勝てたらですけどね!」
ソワソワしてるさんさんにフランはそう答えた。
目に炎が灯る。
さんさんの気合いは充分だ。
「じゃあ最終戦、スタート!」
今度の掛け声役は私。
あとは音楽の流れるままに。
「ふんふーん♪えっへへー♪」
フランの鼻歌。
余裕のよっちゃんだ。
一方、さんさんさんは真面目な顔。
全力で勝ちに行っているのが見て取れる。
中々止まらない音楽。
ずっと笑顔のフランとは対照的に、さんさんの顔はどんどん険しくなる。
音楽が鳴り止んだら座るだけ。
ただそれだけのゲームなのに、それはまるで西部劇のような緊張感だった。
音楽が止まった。
その瞬間。
「っ!」
「♪」
フランはあっという間に席についた。
当然の結果である。
人間がフランに勝てるわけがない。
「ふふー。私の勝ちです!」
フランはそう言って勝ち名乗りをあげた。
誇らしげな表情。
とっても可愛らしい。
「な、負け…ぎゅー……。」
一方でさんさんはとっても悔しそうだ。
そんなにぎゅーされたかったのかな。
ただ敗者には罰ゲームのルール。
フランは可愛い笑顔のまま、そっとさんさんに近づいた。
「お覚悟です!」
「……ひゃ。」
フランの容赦ないくすぐり。
足もお腹も首筋も、フランが好き勝手にくすぐるのだ。
息ができなくなるくらいくすぐったい。
当然、さんさんも身体を捩って逃げようとする……と予想してたけどそんなことはなかった。
「あれ?さんさん、くすぐったくないのですか?」
「うん……実はくすぐりとか効かない……。」
フランがいくらくすぐろうが、さんさんは気まずそうに困った顔をするだけ。
フランはむぅっと口を尖らせた。
「むむむ。では罰ゲームは終わりです。」
「うん……ごめんね。」
ちょっと申し訳なさそうなさんさん。
フランは踵を返して、さんさんに背を向ける。
1歩、2歩。
ほんの少しだけこちらに歩いて、次の瞬間。
「ひゃ、ひゃ、あぇ」
それがさんさんの最後の言葉だった。
フランは振り返り、勢いをつけてさんさんの胸元に飛び込んだ。
そしてさんさんは言葉を失った。
「わ、わ、大丈夫ですか?
むぅ。頑張ったで賞のつもりだったのですが。」
「ふふ、ふら、ふらん、」
「はい!フランです!ぎゅー!」
かろうじて吐き出した言葉に、フランが元気よく応える。
そして追撃にもっと力を込めたぎゅー。
それでさんさんはノックダウン。
ふらりと力が抜けた。
「わ、さんちゃんがやられた!」
「さんちゃん起きて〜。」
いちごうさんとにっきさんがさんちゃんに駆け寄る。
ただもう手遅れだった。
笑みを浮かべて倒れるさんさん。
悔いはない。
そんな安らかな笑顔だった。
ということで椅子取りゲームの優勝はフラン。
残念ながら景品のぎゅーは貰えず。
まあでもいいのだ。
お家に帰ったらたくさんぎゅーはできるしね!




