絶叫したくないふたりと付き添いのひとり
「スプラッシュマウンテン、お前は乗れんのか?」
「ふふっ。余裕のよっちゃんよ。
絶叫系なんて乗ったことないけどね。
私にかかればお茶の子さいさい。屁のかっぱ。」
「おねえさんかっこいい。」
ディズニーの行きたい場所を決めたとき、そんな会話したことを思い出す。
小鳥は私がこわがりだと思ってるのだろう。
だから私は余裕を持ってそう答えた。
みゆちゃんもよしよしと撫でてくれたっけ。
なんだか懐かしい。
そして時系列は今に戻る。
ジャングルクルーズを楽しんだあと、小鳥は前と同じ質問をした。
「このあとはスプラッシュマウンテンだけど……。
ほんとに大丈夫か?」
私はその質問に胸を張って答える。
「無理そう!私に構わず先に行って!」
ということでスプラッシュマウンテンについては、私は不参加。
だってカリブの海賊ですらこわかったんだもん。
それ以上の絶叫系なんて乗れるわけがない。
正直に言えて偉いね、と頭を撫でてくれるみゆちゃん。
甘やかされてる……。
「じゃあ行ってくるな。またあとで。」
「なー。」
小鳥とみゆちゃんに一旦バイバイ。
こちらに残ったのはフランとめぐるちゃん。
めぐるちゃんは絶叫系は乗りたくないとのことで私と同じ。フランは私たちの付き添い。
さて、なにして時間潰そうか。
「スプラッシュマウンテンは40分待ちだもんね。
私たちも適当なアトラクション探す?」
「あ、それならお嬢様!今こそです!」
フランが私の手を引っ張った。
指さす先にはお土産をたくさん積んだワゴン。
わ、それは、まさか……!
「めぐるちゃんも来てきて!カチューシャ!
お揃いの買お!」
「えへへ。みんでお揃いにしましょ!」
ということで私のしたいことリスト1位。
みんなでお揃いカチューシャ。
それを購入することができた。
ダッフィーの耳のカチューシャ。
すごく可愛い。
「わ、フランもめぐるちゃんもすごく可愛い!」
私がそう言うと、フランは誇らしげに、めぐるちゃんは少し恥ずかしそうに笑ってみせた。
その反応も可愛い。
よしよしとフランの耳を撫でる。
さすがに往来なので、本物じゃなくてカチューシャの耳だけどね。
それでもフランは嬉しそうに喉を鳴らしてみせた。
「ねぇねぇ。3人で写真撮ろう。
寄って寄って。」
道の端っこで固まってはいチーズ。
ふへへ。
いい写真が撮れた。
私はともかく、フランもめぐるちゃんも可愛い。
永久保存決定だ。
小鳥とみゆちゃんのカチューシャもおっけー。
じゃあ今度こそ次になにするか決めよう。
フラン、すごく楽しそうだったしもう一回ジャングルクルーズもありかな。
そう思ったところで、めぐるちゃんがおずおずと手を挙げた。
「あの、えっと、ちょっと休憩しても……。」
申し訳なさそうな声。
あ、そっか。
めぐるちゃんは1日遊ぶなら体力が足りないもんね。
それなら……。
「めぐるちゃん正直に言えて偉いね!
よし、休もう!」
「はい!すごく偉いです!近くにカフェがあります。
そちらに向かいましょう!」
ふたりでめぐるちゃんの手を引っ張る。
めぐるちゃんが無理しないでくれた!
それがすごく嬉しい!
ということで一旦休憩だ。
カフェに入って、ソフトドリンクを2つ注文。
お昼には早い時間だからか、席はまだガラガラ。
フランをお膝に乗せて、休憩タイム。
「ふぅ。止まると疲れてたー!ってなるよね。」
買ったコーラが喉に沁みる。
めちゃくちゃ美味しい。
「めぐるお姉様。ゆっくり休んでくださいね。
良ければマッサージしましょうか?」
「だ、大丈夫だよ。でもありがとね。」
わきわきと手を動かすフラン。
めぐるちゃんは少し恥ずかしそうに断った。
むぅっと唇をとがらせるフラン。
「じゃあフラン。私にお願いしていい?」
「はい!!もちろんです!!」
フランはぴょんっと膝から跳ねて、私の背中に回った。
鼻歌交じりに私の肩を揉む。
すごく気持ちいい。
ゆったりゆったり時間は流れる。
さて、次は私の番だ。
「フラン、交代!」
「私は大丈夫ですよ?」
「いいからいいから。」
フランをお膝に乗せて、肩をもみもみ。
ちょっとくすぐったそう。
でも嬉しそうにきゃっきゃと笑う。
可愛い。
今日はディズニーを楽しむ日。
それにフランに超楽しんでもらうと決めた日。
膝の上で喜ぶフランを見てると、心が満たされるのを感じる。
「えへへ。気持ち良かったです。」
しばらくすると、フランはまたぴょんっと立ち上がった。
そしてめぐるちゃんの背中へ。
今度はフランからめぐるちゃんにマッサージ。
そうして時間は過ぎていく。
あっという間に40分が過ぎて、小鳥とみゆちゃんを迎えに行く時間。
待ってる時間だって楽しい。
私たちは無敵なのかもね。




