40話《家庭科》
「はい。では今日は、カップケーキを作ります」
家庭科担当の舞野先生の言葉に返事をするが、男子はあまり乗り気ではなかった。まぁお菓子だからな。
「おかし作りは、レシピ通りに作らないと上手くできないので、気をつけてくださいねー。グルプ協力して、頑張ってくださーい」
俺の班は、朝に声をかけてきた友人と女子二人の四人グループ。
女子のうちの一人は家庭科部で、もう一人は美術部。料理やお菓子作りは人並みらしい。俺は当然できるけど……。
「料理できないのは俺だけか」
「滝沢くん、頑張ろう」
「大丈夫だって、岸辺がいる時点で勝ち星だって」
女子二人に慰められる、友人滝沢。確かに料理ができないのはこいつだけだけど、それ以外は全員できるし、うまいものができるのは当然だ。
「さすが岸辺くん。慣れてるね」
「そう?」
「岸辺は将来、いいお嫁さんになるね」
「せめてお婿さんと言ってくれませんかね」
ちょうどいい距離感。仲はいいけどただそれだけって感じ。
それがなんだかひどく心地いい。
「滝沢ー、後でお前の班の食わせてー」
「ちょっ、どういう意味よ!」
「やなこった!誰が颯音のを食わせるか」
「こらそこ。静かにしなさい」
カップに記事を注いで、そのままオーブンに入れる。
完成するまでは、片付けをしたり、雑談をしたりと過ごしている。
「そういえば岸辺さ」
「ん?」
「最近、Sクラスのイケメンの……海雨だっけ。なんか仲良いよね」
なぜか話題は蓮のことになった。
仲良し……まだ蓮と付き合う前にも、Sクラスの担任からもそんなことを言われたっけ。
クラスメイトにもそんな風に言われると嬉しいけど、ちょっと複雑な気分になる。
「そう?」
「うん。よくお昼休みの終わり頃に一緒にいるの見かけるし」
「確かに。クラス違うのに……何か接点あるの?」
「いや、まぁ……色々あって、仲良くなったんだよ」
「あ、まさか最近付き合いが悪いのはそいつが原因か!」
やっぱり、他クラスと仲良いのは物珍しいのか。いや、多分相手がSクラスだ。
なんだかんだ他クラスとの交流はあるけど、Sクラスだけは特別交流がない。その理由は単純に、あのクラスのメンバーはプライドが高いというか、頭のいい面子が揃ってるから他のクラスを見下している傾向がある。
だから、自然とSクラスとの交流は全くと言っていいほどない。だから周りは、物珍らしがるのだ。
「Sクラスだけどいいやつだよ」
「そうなんだ」
「まぁ、誰が誰と仲良くしてようと関係ないけどね」
「颯音ー、たまには俺とも飯食ってくれよぉ〜」
「はいはい。考えといてやるよ」
チンッという音ともに、俺たちの意識はオーブンへと向けられる。
取り出されたカップケーキは、綺麗に膨らんでいて、とても美味しそうだった。




