第三話 ラケッティア、ジョーシキ覆る。
「とにかく勝負だ! ヨハネ!」
と、意気込んだイスラントをピン一本で卒倒させ、とりあえず操縦室へ運ぶ。
勝負するのは構わんが、動力室で派手にやり合って、艦に備わっている自己保存兵器がおれたちのことを生きたまま蒸発させたりしたら、かなわん。
「そんなことはしませんよ」
「そうは言っても、この船、どんな仕掛けがあるか……って、あれ。いま、誰がしゃべった?」
「おれじゃない」
「おれも違う」
「カルリエドでもないだや」
「ボクです」
操縦室に動力室で見たコアの縮小バージョンがあらわれる。
さあさあ、お立合い。しゃべる石の登場だ。
「とか、言ってる場合じゃない。何者じゃ?」
「ボクはこの艦の操作補助知能です。あなたたちは?」
「来栖ミツル、ラケッティア」
「ギルバート・ロー、錬金術士」
「ジャック、バーテンダー」
「カルリエド、カルリエドは石屋なんよー」
ひし形の石が光る。
「ボクを起動させたのはどなたですか?」
「あっちで転がってるやつ、イスラント。暗殺者だ」
「輝素判定法から測定するにボクは百万年ほどスリープ状態にあったようですね。ここは何という星ですか?」
「そういや、考えたことがなかった。何て星なんだろ」
「星? オーナー。星とはなんだ?」
「え? おれたちが住んでる場所だよ」
「いや、オーナー。星は空で輝くものであって、おれたちは星に住んでいるわけではないだろう?」
「……なあ、ジャック。カラヴァルヴァから出航して、西の海をずっと行くと、どうなる?」
「途方もなく大きな滝があって、流れ落ちる」
なんてこった! この世界、地球がお盆みたいに平べったいと思ってる!
「ギル・ロー! カルリエド! あんたらもまさか――」
「おれたちの住む世界は平べったいに決まっているだろ?」
「ブラッダ。これ、ジョーシキだや」
転がっているイスラントを蹴飛ばし目覚めさせ、たずねた。
「おい、おれたちが住んでる世界は平べったいか?」
「いきなり、なにを? それより、この縄をほどけ」
「簡単な質問だ。おれたちは普段平べったいお盆の上に住んでるか?」
「誰がこたえるか――わ、わかった。だから、深爪はやめろ! 我々が住んでいるのは平らな世界だ」
こいつら、宇宙空間に出たら、思いっきりビビるな。
地球は丸いんだぜ。
――†――†――†――
地球は平らだった。
え? なにこれ? 宇宙空間に巨大なお盆があって、水がざあざあ流れ落ちてるんですけど。
これ、なんかいろいろ物理法則がメチャメチャになってない?
え? おれが間違ってたの?
「ほらな。平らだろ?」
「へい、SIRI! 他の星もこんななの?」
「はい。ところで目的地が設定されてませんけど」
「あー……フレイアって場所に行きたい。わかる?」
「了解しました。しっかりつかまっててください」




