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ラケッティア! ~異世界ゴッドファーザー繁盛記~  作者: 実茂 譲
セヴェリノ王国 元気よくおかえりと言ってあげよう編
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第一話 アサシン、分からない人はいますぐグッドフェローズを見よう。

セヴェリノ王国、マントーノ、旧王国星暦831年。


 人気のない森の夜道を箱馬車が走る。


 馭者席にはマリス、その横でアレンカがスースー寝息を立てていて、ツィーヌはすぐ後ろの座席でシャベルを横に置いて、ぼんやりしている。


 ごと、ごと。


 音が鳴る。


「何か鳴ってる」


 マリスが言う。


「何が?」


「わかんないけど、音がするんだ」


 アレンカが目をこする。


「うーん、何なのですか? アレンカ、眠いのです」


「音が鳴ってるのよ」


「音?」


「マリス、馬車止めて」


 田舎の道際で手綱を引き、ゆるゆると馬車は止まる。


 三人とも馬車を降り、馬車からぶら下がるランタンの赤い光が車体の後ろに取りつけた茶色い艶消し加工のトランクを照らす。


 音はそのトランクから鳴っていた。


 三人とも黙ったまま、お互いを目配せしたりする。


 アレンカがこくこくうなずいたので、ツィーヌがトランクの鍵を取り出し、蓋を開けた。


 なかにはテーブルクロスに包まれた血まみれの人間が入っている。


 カンパニーの理事〈判事〉と呼ばれる老人だ。


 老人はうめき、血でふさがった目をまたたきながら、待て、待て、と言っている。


「こいつ、まだ生きてたんだ」


 マリスがナイフを抜き、テーブルクロスの上から判事を何度も刺す。

 そのたびに老人が血反吐を吐き、オエッ、オエッとうめく。


 アレンカが右手を開いて、老人のほうへ差し出す。


 そのまま、魔法の火の玉を四発ぶち込む。


 ぶすぶすと燻ぶる〈判事〉を見つめてから、ツィーヌはトランクの蓋に手をつけ、そのまま閉じた。


 ここでトニー・ベネットの『ラグズ・トゥ・リッチーズ』が流れるのが様式美である。

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