4th TARGET
【溢れる憎悪】
「そういう事か。対策は出来ねえってわけか。」
「ああ、だから諦めろ。」
「いいや、魔力切れを待てばいいってことだろぉ!?」
あまり頭のいい奴ではないと思ったが、ここまで知能の低い生き物だとは。
だが、この辺は街に近いが後ろは森。
森に入ればヴィスパーに襲われかねない。
俺は床に能力を使い、森を越え、その先の砂漠地帯まで飛ぶ。
奴は森を真っ直ぐ抜けて現れる。
俺は進行を妨げるように太めの砂の柱で道を塞ぐが、相手はそれを飛び越え、左手に生成した剣で切りかかってくる。
俺はそれを右腕を剣にして守りに入る。
そのまま、渾身の勢いで腹部に剣にした左腕を突き刺すようにぶつける。
だが、刃が通らない。
「どういう……事だ。」
明らかに硬くなったのだ。
それは身体能力が上がったから、とかそういうものではなく完全に別の物質のような硬さを誇っていた。
「俺の能力は硬化なもんでな、さっきは随分調子に乗ってくれたなぁ!」
吸血鬼の右足による強烈な蹴りを左頬に受ける。
流石に身体能力の上がった吸血鬼の蹴りを顔面に直撃はかなりこたえる。
普通の人間なら死ぬだろう。
だが、やはりやつは知能がかなり低い、やつの最大の弱点の一つだ。
今の攻撃、硬化を使えば俺でも危うく死ぬ程の威力は出たはずだ。
なのにやつはそれをしなかった。
だからといって、あの硬化をどう対処するんだ?
と思う者もいるだろう。
簡単だ、俺は全ての鉱物を自由自在に操るのだからな。
両腕を刃にし、怒涛の連撃を仕掛ける。
これにより吸血鬼は退くが背中に砂の壁があるのに気付く、硬化をする。
俺は右から砂の柱で追い討ちをかける。
「ふっ、どうした!戦い方が荒いぞ!」
こいつのこれも弱点の一つだ。
傲慢さ、やつは自分の有利を確信すると余裕を見せる。
俺は大量に柱を使い、吸血鬼が硬化で防戦一方になるよう仕向ける。
何度も続ける。
「いいかげんにしろぉ!」
「くっ。」
俺はその場に膝をつく。
「やっと魔力切れか……くくく。」
聞いたか?俺はわざわざ演技で膝をついてやった。
ただそれだけで、こいつは魔力切れと判断するのだ。
知能が低く、己への慢心が生む弱さだ。
「おらあぁぁぁあ!」
そして、知能の低い奴とはここぞと言わんばかりに叫ぶ。
それが俺の狙いだ。
操る砂を大量に吸血鬼の口の中へ侵入させる。
「てめえ!なんのつもりだ!……は?」
そして口の中から糸が伸びている。
「鉄製のワイヤーだ。ここからはわかるよな。」
中から砂が溢れ出るように吸血鬼をバラバラに破裂させる。
これで終わりだ、知能の低い吸血鬼。
硬化が体内までに及ぶか、などそんな事はどうでもいいんだ。
大事なのはやつがそれをする前に殺す、ということだ。
念入りに完全に粉々になるまで肉を内蔵を潰す。
もう一度は流石に骨が折れる。
「今戻ったぞ、イルミナ。」
「あ、戻った?空間移動マシーンもそろそろ出来そうだよ。」
早い。
戦っていたのも数十分の事だ。
その間で、となると。
やはりイルミナ、彼女は"天才"の部類なのかもしれない。
だが、ほかの機械もさっきと比べて活発なような、ここにある全てが空間移動に関係のある機械ということか?
「ナナシさんはこのまま人間の世界へ?」
「そうだが、何かあるのか?」
「獣人の世界に『全知』っていう何でも知ってる能力の持ち主がいるんだよ。そこに行ってからでもいいんじゃないかな、って。」
『全知』……か。
北見翔也について聞いてから人間界に行く方が確実かもしれない。
「ちなみにさ、ボクは消せないからね。」




