求愛の仕方
前回から続いています
【求愛ダンスの秘密】
「和馬、やらないの?」
結婚の報告と、その他の話で6人で集まったところ。
まず直人さんから。
「和馬が作ったんだから、やるべき。
和馬で最後だし」
鈴のお兄さん。
内容は、結婚式の余興の話。
私たちは、こじんまりとした式をしたい。
むしろ、写真だけでも良い。
そう話したところ、お父さんに泣かれた。
娘をエスコートするのが夢だったらしい。
両方の家族と仲の良い友人ならどう?とお母さんズ。
そのまま、幾つかパンフレットを取り出した。
「ここのお店、美味しかったわ」
お母さんたち、私たちを口実にして。
自分らが楽しむために出かけていませんか?
「会費制で、人前式も楽しそう」
結果、私のその一言で決定。
神父役に鈴のお兄さんに。
司会を鈴にお願いしようと、声をかけたはず。
「鳥の求愛ダンスって言ったのは和馬だね」
直人さん。
「嫌と言うほど動画見たわよ」
茜さん。
「そうだっけ?」
和馬さん覚えて無いようだ。
「大学出たばかりでお金ない。
お金かけずになにかないか。
そう言ったのは覚えているけど」
どうやら、大学の卒業後すぐに。
大学時代の友人が結婚したらしい。
その余興をしたのがきっかけのようだ。
「集まるのは男ばかりだし。
最初ハカとかの案も出たんだよ。
でもさ、晃ならともかく僕らじゃ」
試しにやってみたら、見栄え良くなくてと続ける。
和馬さんも、直人さんもどちらかと言えば細身だ。
鈴をお姫様抱っこしたのも驚いたほど。
そもそも、雰囲気からして全く系統が違う。
大声を出す想像が全くつかない。
「何処かの部族の結婚式だったらと言ったのは晃」
和馬さんが、補足。
ちゃんと覚えているみたい。
「それミックスしたら面白い。
そう言って、音楽をつけたの誰だっけ」
鈴のお兄さん、別にそこまで深掘りしなくても。
「よし、何故この踊りが出来たか。
皆に聞いてくる」
直人さん、だからそこまで。
遅かった。もう発信済みだった。
「当時の資料が出てきた」
返信の中に決定的な証拠があったよう。
「ほら。和馬の絵だよな。
この棒人間」
直人さんが、皆が見やすいようにスマホを置く。
確かに和馬さんが書く絵だ。
横に鳥の名前と、求愛ポーズと書いてある。
鈴がスマホを取り出して調べ始めた。
「途中、編成手伝ったのは覚えているけど。
そうだっけ?」
和馬さん思い出せないらしい。
あ、この感じはトボけてる。
「音楽のベースも和馬らしい」
今度は、鈴のお兄さんの方に返信があったようだ。
「部族の結婚の時に使う音楽。
あれ幾つかミックスして。
ゲーム会社に就職したマコトが。
音楽に落としたらしい」
それで、あんなに本格的な音楽だったのね。
「その最初の動画送られてきたよ」
今度は茜さんだ。
鈴と2人で身を乗り出す。
動画の和馬さんは真ん中に居る。
あの時は、嫌だったけど。
今なら余裕で受け流せる?
ドキドキしてきた。
「ほら、和馬が説明している」
見ると、新郎らしき人の姿が横にある。
「求愛ダンスをして。
嫁に認めてもらえみたいな事言っているね」
この前見たのとは、バージョン違いみたい。
「あ、見本見せるらしい」
和馬さんが手を挙げる。
すると、背後の人たちが踊り出した?
音楽は変わらない。
でも、和馬さんは踊らず説明に徹しているようだ。
「鳥の求愛って見たら本当だ。そのまんま」
鈴が、その鳥の動画を再生。
それに合わせて動画も行ったり来たり。
ちっとも進まない。
「集団になるとカッコ良く見えるのが不思議だよね」
あ、新郎が新婦をみている。
新婦にやれって言われた。
渋々始める新郎。
「ここでハカ出てきた」
1人でやっているけど。
確かに迫力がない。
声すら聞こえない。
「新婦にダメ出しされている」
これはこれで面白い。
「あ、踊るシーン始まった」
ここから、以前みた流れの通り。
ちゃんと新婦さんから合格貰えたようだ。
「だから、花音には踊った。
合格も貰った」
和馬さんが拒否している。
「花音、出番」
私?鈴の意味がわからない。
「和馬、花音ちゃんのお願いなら断らない」
鈴のお兄さん、そこ?
仕方なく和馬さんに近づく。
耳元で内緒話。
「今度2人の時なら、もう一回見せてくれる?」
和馬さん仰け反った。
「やる!」
周りの歓声。
「だから、余興はなし!
花音だけに見せる!」
周りからの大ブーイング。
多分、これが正解。
過去ならともかく。
これから見るのは、私だけでいい。
【クリスマス会】
「お邪魔します」
和馬さんが、やって来る。
お母さん主導で、家の大掃除。
これで、年末大掃除しなくて済むわ。
なんて、笑いながら言っていたけど。
多分、今大戦争中。
「どうしたの?」
来た和馬さんが首を傾げている。
「気にしないで」
笑って誤魔化す。
ことの発端は。
メインの鳥をどうするかと言うところに遡る。
「和馬さんとこ、クリスマスは骨付鳥みたいよ」
お母さん。
「うちは、いつも唐揚げじゃないか」
お父さん。
「和馬さん、照り焼き好きだって」
私。
「焼き鳥食いたい」
弟。
とりあえず、骨付鳥は買う。
焼き鳥は、冷凍を使う。
唐揚げはお父さん。
照り焼きは私。
担当が決まる。
そして、当日を迎えた。
ケーキはお父さんが作るはず。
信じていた私。
「花音が作るんじゃ無かった?」
お父さん。
「作れる訳無い」
お母さん、慌ててケーキ屋に電話。
「ダメだって」
そこから、大戦争の始まりである。
「書いたもの買ってきて」
お父さんに送り出された弟。
『生クリームが売り切れている。
とりあえず、小麦粉と卵はゲット』
通知には、そんな文字が。
「良かった」
隣で私の通知を見た和馬さん。
割と大きな包みを車から取り出す。
「こっちは、花音の分」
私には、小さな箱。
で、こっちの大きな包みは?
「多分、渡したらわかる」
首を傾げながら台所へ。
包みを開ける。
「ブッシュドノエル?」
開けた包みから出て来たもの。
お母さん、弟を呼び戻す電話を掛けている。
「母から花音さんの家は。
いつもいちごショートだと伺いまして。
もう一個あっても、花音たちとなら食べられるかなと」
ぶつくさ言いながら戻ってきた弟も。
ケーキを見た途端機嫌が戻る。
「これ手作りじゃない?」
お母さんの言葉にハッとする。
そう言えば、ケーキを作るとは聞いていた。
デザートも作ってくれたことある。
「学生時代、お金無くて。
皆に頼まれて作っていたんです」
ちょっと照れている和馬さん。
お父さん、写真こっそり撮っているの。
バレてるからね。
クリスマスパーティーは盛り上がった。
恒例のしりとりでは。
お父さんが同じ言葉で渡すのに。
和馬さんがソツなく答えて。
お父さんを悔しがらせたり。
言葉合わせゲームでは。
延々と誰も回答が合わなくて。
なかなか終わらなかった。
そして、外で二人きりになって。
ポケットに入れっぱなしだった箱。
そっと目の前で開けてみる。
「指輪だ」
デザインは控えめ。
でも、可愛い。
完全に私の好み。
「花音の仕事場、派手なのは禁止。
婚約指輪付けられないって嘆いていたから」
顔合わせに間に合わなくてごめんねと謝られても。
これなら、付けていても怒られない。
小箱を和馬さんに押し付ける。
笑いながら、そっと指に嵌めてくれる。
「明日仕事楽しみ、かも」
揶揄われるのは間違いない。
先輩、嫌味言うかも。
でも、それも楽しみな気がする。




