クラスの日常、よくある光景
変になったからちょっと修正しました。
結局、L○NEを見ても、ネットの掲示板を見てもめぼしい情報はなかった。
俺が聞いていなかったところはテレビ側の質問が少々で、内容としては何故情報を隠していたか、そして何故それを一部だとしても明かす気になったのか。
これの答えはずばり一位だと知られて全世界の能力者達から追われるような身になることを嫌がったからというなんとも珍妙な答えが一つ。
もう一つの答えは流石にスポンサーとなる数多の企業に悪い気がしたから、らしい。
なんだそれ。
初めに出た感想がソレだ。
俺が自分の能力の事とか昨日の朝に起きた戦闘で過去戦ってきたトラウマの事とか色々蘇ってきてナイーブになっていたというのにコイツといえば涼しい顔でそんなことを言う。
それなら強すぎる能力を持ったことで襲ってくる困難に挫けずに立ち向かっていったと夢想した俺を返せ。
若干不機嫌にそう考えながら通学路を歩く。
遠見にはまだ明日に決まった勉強会の予定を連絡していない。
どうせ教室で会うんだしその時までに静城と集合場所を決めてから、遠見に伝えればいい。
というのがさっきまでに出した結論だ。
ということで早速静城に連絡をとr―――。
「おはよう」
―――る必要はなかったか。
「お、おはよう」
いきなり隣に出現してきて正直びっくりした。
何もない空間が一瞬ブレたと思えば何事も無かったように静城が出現してからの挨拶だ。
ビックリしないと誓ってもこればっかりは無理でした。
「連絡、見た?」
歩きながら隣でその紅い瞳を向けてそう問いかけてくる。
何か噂になりそうな気配がして怖いな。
「見たよ、集合場所と時間はどうする?」
「んー……」
そう言うと静城は考え込むように手を口元に持ってくるしぐさをする。
それを見れば見るほど身長のせいで同い年だということを忘れて子供扱いしてしまいそうだ。
なんというか、小さい頃の妹とか、こんな感じだ。
なんか無性に兄心が湧いてきそうになる、こうよしよしと頭をなでるみたいな…。
いや死ぬな、社会的にも物理的にも。
「駅前は?」
アホなことを考えている内に静城は自身で結論を出してから俺に候補となった場所を提示する。
「駅前か……」
駅前といえばここらだと新宿駅がそれに該当する。
俺たちの通う学校から徒歩十分の距離で、俺の住むマンションからだと歩いて大体七分くらいの距離にある。
駅前というのも待ち合わせの場所として優秀といえるし、俺としても近い場所であってありがたい。
「よし、じゃあそこに集合で。時間はどうする?」
場所は決定したから次は時間だ。
都合が出来た、といっても準備だったりとか身だしなみだったりとかを整える必要がある訳で、こうして再度聞いておくのは決して間違いではないはずだ。
遠見のヤツは大抵の時間暇なはずだからどの時間でもいいと考えると静城の都合に合わせた方がいいだろう。
この相手に合わせる姿勢は人付き合いで重要な要素の一つだから自分がコミュ症だと思う人は真似してみなさい。
自分の意思が弱いだけだって?
うるせえ、こういうのはレディファーストが発動すんだよ。
「二時くらいは?」
「オッケー、明日の二時に駅前でいいな?」
「ん」
静城が頷いているからこれで決定だな。
「じゃ、先行くね」
「ん?ああ、わかった」
先に行くとは一体…?
ここから校門までまだ七分~八分くらいかかると思うが誰かと待ち合わせでもしているのだろうか。
そう思いながら静城の後ろ姿を手を振って見送りながら目で追っていると一瞬でパッと消えてしまった。
目の前で消えた。
「つくづく便利な能力だなおい……」
その光景を見て思いつくのは静城の<空間操作>による空間転移だ。
それにより一瞬でこの場から教室へと転移したのだろう。
それならば時間ギリギリに家から教室へ転移してもよさそうなのだが、今日は明日の勉強会のことについての打ち合わせをするために今の時間に俺のそばへ転移してきたのだろうか?
まあそんなことを知っても特に意味はないんだが。
「さっさと教室行って遠見に日程でも伝えるか」
俺はそう結論付けてやや歩く速度を上げる。
静城に遠見の参加を伝えるか迷ったがサプライズとして驚かせるのも一興だな。
いや別に忘れていたわけでは断じてない。
……ないよ?
まあ実際、遠見の野郎筆記の成績はいい方だから俺もテスト前の時はたまにお世話になる。
そんなヤツが助っ人みたいな感じに出張ってくれるんだから悪いことではあるまい。
俺がわからないところは遠見に任せて、静城がわからないところも遠見に任せてやればいい。
俺が気まずくなる心配もないし、遠見は静城とお近づきになれて、静城は分からないところを的確に答えてくれる助っ人をゲット。
遠見が勉強会に参加するだけでこれだけのメリットがあるのだから感謝してほしいね。
もう一石二鳥どころか一石三鳥だ。
勝った。
何に?自分自身だ。
……急ぐか。
――――――
教室の戸を開けて時間を確認すれば八時二十分を指していた。
うむ、とてもいい時間だ。
この朝のHR十分前くらいになると登校する生徒が多くなる。
まあこれは中学でも小学校でもそうだったから全国共通だと思うがこの十分前からの人の多さというのは人嫌いの人間や、人ごみに酔いやすい体質の人間といったやつらからすると筆舌に尽くしがたい辛さがある。
勿論、俺もその一人だ。
だから俺はギリギリの時間である十分前に登校するのが俺のルーティンと化していた。
遠見は俺より五分前の十五分くらいに来ることが多いのでもう来ていると思って自分の席を目指しつつ時計から目を離して教室を見る。
「お、今日は遅刻してないな。感心感心」
いた。
「いつも遅刻してる体を装うんじゃねえ。俺は素行だけみれば優等生だ。」
「そうだな、素行だけ見ればな。素行だけ見ればな!」
「繰り返すな、決して重要なことじゃねえ」
遠見は俺を見つけるといつも通りに軽口を叩いてくる。
昨日の件などなかったように超然としていて、ある意味器が大きいともいえるだろう。
「勉強会の件な、明日の二時からだけど暇だろ?」
「なんで事実確認みたいに聞いてくんだよ、暇だけど!」
よし、暇だな。
「ならいい、二時からっつったけどちょっと前の一時五十分に駅前に来てくれるか?」
そう言うと遠見は心底不思議そうな顔をする。
「いいけど、何故に?」
「紹介したいヤツがいんだよ、そいつと一緒に勉強する話だったからお前地味に成績いい方だし助っ人を頼みたいって訳だ」
ここでちょっとだけネタバラし。
昨日遠見と別れてから早速頼った訳をちょっとだけ開示する。
察しがいい遠見はこれでうまく釣れるだろう。
「そっか、わかった一時五十分だな」
ほら釣れた。
ちょろいぜ。
「ああ、よろしくな」
キーンコーンカーンコーン…。
ここで朝のHRを知らせる鐘が響く。
教室にもクラスメイトが全員登校しており鐘を聞いて自分の席へと移動を開始している。
俺もそれに倣い遠見に「じゃ後で」と声を掛けてから席へと移動する。
そして今日もまた学校での一日が開始した。
―――――――――
キーンコーンカーンコーン……
「終わったぁー」
今六限目の終わりを示す鐘が響いた。
これで掃除をして帰りのHRを終わらせれば帰れるのだ。
俺の様な学生からすれば天国の鐘だ。
しかも今日は金曜であるから明日は土曜で休みだ。
これに嬉しさというかこの一週間の内五日学校に行ったという淡い達成感が胸に沁みる。
やはり金曜はいいものだ。
「おーい遠見くん、掃除しなきゃだめでしょ?机運んで」
「おっと、悪い菱田」
この青いショートボブが特徴な女生徒はクラスメイトの菱田葵。
身長は女性の平均くらいで顔立ちは一般的に見てかわいいと思えるくらいは良い。
ただし彼女自身は自分の評価を普通と言っているのだが、それは違うとクラス全体でよく言っている。
なんというか天然が少し入っている青髪少女で、静城を猫とすると菱田は犬というのがしっくりくる。
それは彼女の真面目さからくるもので、今のように時たま注意をしてくる。
クラス委員ではないがクラスの中でも発言力のある子で、自分の意見をしっかり発言できているがクラスの場が和むのもあってマスコット的な立ち位置だ。
因みに遠見はクラスのサンドバック。
「もー、私だって一々注意するの面倒なんだから悪いと思ってるなら言われずともやってよ」
「悪かったって、今やるからそれ以上は勘弁してくれ」
ビシッと人差し指を向けてくるが身長が俺より下なのでその姿勢だとかわいいという感想しか生まないぞ菱田よ。
因みに胸は無い。貧乳だ。
「だがそれが良い!!」
「「!?」」
声に出していないが電波を受け取ったらしいクラスメイトの男子がお約束とばかりに声を上げる。
おかしいな…あいつの能力は読心系ではないはずだ…。
「…ビックリした。なんなんだろうね?」
「そ、そうだねー」
そっぽを向いて上ずった声で答えてしまった。
いや実際なんも知らんがあの言葉の意味を理解していない菱田からすれば本当にわけがわからないだろう。
これ以上サボるような真似をするわけにもいかないしさっさと自分の持ち場に行って掃除するか…。
「あ、ねえ黒谷くん。さっきの意味何かわかる?」
世の中には知らなくていいことが有ってだな……、じゃなくて。
今俺に話を振ってほしくなかった…。
だってほら、さっきの男子の視線どころかクラスから向けられる教えんなという意味を含んだ脅しという名の視線(死線)が突き刺さっているから。
…いや、言わないからね?
俺だぞ?言う度胸があるとでも思っているのかこいつら。
「さあ?俺もわからんから遠見辺りに聞いてみたら?」
完璧に狙いをそらせれたんじゃないかこれ。
「うーん…、後でそうしてみるね。今は掃除しよう!」
よし、後は任せたぞ。サンドバック。
そうして本人の預かり知らぬところで幸運を祈りつつ掃除をしようと持ち場に向かった。
―――――――――
掃除も終わり、今は最後の帰りのHR中で後藤先生の話を聞き流しながらクラス中のそわそわした空気を肌で感じながら早く終われ早く終われと念じ続ける。
「――という訳でテストは来週からだからきちんと勉強して来い。能力をぶっ放せるのも今日が最後だから派手にかませ。後は……ねぇな、んじゃ号令」
「きりーつ、きをつけー、れーい」
「「「さようならー」」」
キーンコーンカーンコーン…。
クラス委員の長谷部が号令をしたとき丁度放課後を知らせる鐘が鳴った。
今日は金曜日。
火曜日の時と金曜日の時に校内ランキングを賭けた能力勝負を行うことを許される。
しかし、来週からは中間考査がありこれは休止となる。
普通ならそう考えるだろう。
くどい様だが、ここは能力者専門学校。
テスト最終日の三日目。
この日は生徒個人にあった能力テストが存在するのだ。
それは能力を測ることは勿論、最終テストは教師との熱血バトルで締められる。
よって、今日も校内ランキング制度は通常通り運用される。
『放課後になりました。校内ランキングバトルの開始を許可します。―――放課後に―――』
「始まってしまった…」
正直早く帰りたい…。
校内ランキングは成績に直結などせず、個人個人の能力戦闘適正を計ったり、世界ランキングの仕組みの理解を深めることや、競い合いの精神を養うことを主な目的で導入されている。
故に参加だけして放置という俺の姿勢も決して間違いではない…はず。
だから帰っていいよね、うん。
「おい黒谷!面貸せ、バトるぞ」
帰ろうと教室を後にしようとした俺を引き留めた人物は遠見だ。
遠見はあらかじめ俺を監視していたかのように俺が帰ろうとした寸前で声をかけてきておりとてもうざい。
正直声を掛けられた瞬間イラッと来たのは言うまでもない。
それにバトるってなんだ、新しい動詞かなにかか。
「なんでだよ、俺のランキングの成績知ってんだろ?」
だが俺のランキングの成績はほぼ参加してないだけあって校内ランキングの最下位から見ていった方が早い。
というかぶっちゃけ最下位でないことに逆に驚くくらいだ。
参加したことなぞ数回しかないのだから。
「知ってて言ってる。それに本気出せば校内十位余裕だろ」
「なに言ってんだか…」
よく見てやがる…。
確かにやる気出せば静城に勝てずともその下の二位、あるいは三位なんかはいける可能性がある。
だがそんなことでボロが出たりしてみろ、一瞬で俺は世界中から狙われることになるだろうよ。
「能力コピー何て良い能力してる癖に怠慢すぎね?」
「だから少しは仕事しろとでも?自由なんだから気が向いた時にでも活動すればいい話だろ」
遠見の言うこともわからんでもない。
俺の場合<能力コピー>として通っているが、それでも非戦闘向きの能力者より断然戦える。
そうなると当然そいつらより上の順位を狙えるだろう。
それをしないというのは確かに非戦闘向けの奴らからすれば顔をしかめる様な話だ。
なんせ自分よりも目立つ可能性を持っている者が真面目に活動していないのだから良い印象を持てないのも当然なことだろう。
順位が上がれば注目される機会も増える、それは世界ランキングに限った話でもない。校内ランキングでもそうだ。
学校内の誰がどういう能力を持っていて、それをどう生かせるのかという指標にもなり得るのだからランキング制度はよく考えられているものだ。
「一回だけでいいからさ、やろうぜ黒谷ぃ」
そう言って遠見の野郎はあろうことか人目をはばかることなく俺に泣きつく。
当然その行動は目立つことこの上なく、この教室にいるクラスメイトや廊下を歩いていた生徒のいくらかの視線を集める結果となった。
「引っ付くな暑苦しい!」
それを受けて引っ付いていた遠見を強引に引きはがす。
その時に蹴ってしまった俺は悪くない。悪いのは引っ付いてきた遠見なのだ…。
「頼むよー!勝負の後、俺の<千里眼>コピっていいからさあ」
「うぐっ」
引き剥がしたタイミングで遠見が言った言葉は正確に俺をここへ縫いとめた。
全部計算しているんじゃないかと思えてくるほどに、場を作ってから俺の行動原理をしっかりと酌んだ条件を提示したのだ。
天然なのか、狙っているのかは分からないが、肝心なのはこの交渉とも呼べない遠見の駄々が状況的に俺よりも遠見の方が圧倒的に有利になっていることだ。
俺は目立つことが嫌いで、人のことが信用できなくて、損得でしか人の繋がりを考えられない人間だ。
そんな人間が苦手とする状況に放り込まれ逃げ道の先には美味い話が待っているとすれば、その人間はどうするのかもうわかるだろう。
「わかった、わかったから、場所を変えるぞ。これ以上目立つのは嫌だ」
「おお!マジか、やったぜ。んじゃ行こうすぐ行こう!」
人は弱い生き物だ。
だから楽な方へと歩を進めたがる。
今回は決してこれ以上目立つのは嫌だからとか、遠見から逃げれなかったとかではない。
そう遠見の<千里眼>が欲しかったから出された条件に乗っただけだ。
だから逃げてない。
……舌戦で負けてないんだ。
「どうした?はやくいこうぜ」
「あー、うん」
集まった注目を散らせる様に俺たち二人は教室を後にした。
「痛っ、なにすんだよ」
「なんとなく」
「ひどくね!?」
ムカついてちょっと強めに肩パンした俺は悪くないのだ…。
まずは読んでくれてありがとうございます。
最近は一週間に一話上げられればいいなぁと考えている私です。
でもやっぱり一か月に2~3話投稿になっている私です。
…やはりプロットを書いて完成させるべきなのか。
ブクマ、感想、評価などなど心待ちにしてますのでお気軽にどうぞ。
2018/12/4
今後の展開に矛盾が生じてしまったので少しだけ修正を加えました




