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甘く爽やかな、

 





 部屋から出た綾を迎えたのは、初秋のひんやりとした空気だった。

 外に出なかった十日の間に随分と季節はすすんだようだと、綾は暖かく快適に保たれていた客間の空気に慣れた身体を微かに震わせ、肩を抱きしめる。


「でも、頭がすっきりしますわ」 


 鬱々とした思考が、キンと冷えた空気に払われていく。


 内廊下に等間隔で並ぶ明かり取りの小窓や、露台テラスへと繋がる嵌め硝子の格子扉から見える景色は、綾の居室側から見える整えられた庭園とは違い鬱蒼と生い茂る森ばかりだ。

 居室側が表で、その反対に位置する内廊下側の裏なのだろう。

 随分と様子が違うものだと思いつつ、磨き抜かれた木目のうつくしい廊下を、ゆっくりと歩く。


 屋敷は随分と大きなものらしい。 この階だけでも部屋数はざっと見て十はある。

 この建物の様式とどこか似ている綾の祖父宅も、一般的に見れば随分と大きなものだが、こちらはそれと比べるのも烏滸がましいほど広々とした屋敷だった。


 絵画や彫刻が寂しくならない絶妙な間隔で配されていることに綾は感嘆の思いを抱きつつ、それらを眺めながらしばらく歩を進めていると、いつの間にか突き当たりに行き着いた。

 目の前の扉を開ければ上下階を繋げるゆるい螺旋状の階段がある。 綾がそれを下っていくと、屋敷の大きさに見合わぬ小さな扉の前に出た。

 握りの使い込まれた把手とそのすぐ手前の床に敷かれた土落としの様子から、普段は使用人たちが使っているのだろう。 どうやら外へ繋がっているらしいその片開きの小さな扉の把手を回してみれば、鍵はかかっていなかった。

 綾は改めて把手を握りしめると、外へと押し開いた。



 扉を開け屋敷の裏側に出ると、そこは使用人たちの作業場らしき広場だった。

 屋敷から大人の足で十数歩分ほどの範囲で踏み固められ均された地面には、綾の目には何をするものなのかは分からなかったが、作業途中らしい道具や洗濯台が置かれている。

 しかし今は休憩時間なのか、人も蛇も誰もおらず閑散としている。

 綾は屋敷を背にして広場の向こうを見ると、その光景に、思わず呟きを洩らした。


「空気が違うとは思いましたけれど」


 この屋敷があるのは大自然の山中だった。

 あの空から落ちた時の自然の分布図を思い出せば、さもありなんである。


 屋敷裏の広場すぐに雄大な山が聳え立ち、その丈高い木々が小さな広場を越えて四階建の屋敷を飲込むが如く、まるで覆い被さるようにせり出して屋根へと陰を作っている。

 山の嶺は大層高く、厚く垂れ込めた雲海に隠されて、その天頂を窺い見ることは出来なかった。



 綾が辺りを見回していると、微かな匂いが鼻についた。


「……あら?」


 風に乗ってほんの微かに甘く爽やかな香りがする。 匂いの元を目線で辿れば、広場の端に山へと繋がる細い道が見えた。

 人や獣が通って出来上がったらしいそれは、歩道というよりは獣道との表現の方が妥当そうだ。 足場は悪そうだったが横幅はあり、スカートでも十分登れそうだった。


「目的もありませんし、行ってみましょう」


 広場を横切ると、綾は山道へと足を踏み出した。

 山を登りはじめてすぐ、木々の様子に違和感を感じて綾は立ち止まった。

 それが何かと考えようとしたその時、背後からがさりと草を掻き分ける音がして咄嗟に振り返ったが、小さな動物でも通ったらしく、何も見当たらない。

 ほっと息を吐いた綾は、頭を振り払うと何かに追われるように、今までよりも足の運びを早くして目の前の山道をまた登りはじめた。


 段々と急勾配になっていく上に道幅も狭まっているようで、度々服の端を枝に引っ掛けそうになりながら、足場の良くない道のりを足元を一つ一つ確かめて登る。

 そうして暫く行くと、甘い香りが強くなってきた。 それにもうすぐだと励まされて、足を前へ前へと動かしていると突然、目の前の視界が大きく開かれた。





 

 その香りの元は。



 …それにしても季節をまるきり無視投稿ですね。

 冬に終わらせる筈だったからなあ…



 でもここからちょこっと連投出来る、


 かも知れない。

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