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Vtuberをさぼってみた(リメイク)  作者: 東海林


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3/3

助けてみた

俺は久しぶりに駅へ来ていた。


「……久しぶりだな」


最後に駅を利用したのはいつだっただろう。

Vtuberとして活動していた頃は、配信とゲームばかりしていたせいで、外に出る機会自体が少なかった。

こうして改めて駅を見てみると――


「相変わらず、変な人ばっかりだな」


改札付近で、酔っ払って裸で寝ているおっさん。

何やら熱心に宗教の勧誘をしている人。

よく分からないモンスターの着ぐるみを着て、何かを配っている人。


「……やばい奴のバーゲンセールか?」


東京ほどではないにしても、駅ってこんなに濃かったっけ。

俺はなるべく変な人たちから距離を取りながら、周囲を見渡す。

すると。


「ん?」


少し離れた場所に、女の子がいた。

その前には男が一人。

どうやらナンパされているらしい。


「…………」


女の子の表情を見る。

明らかに困っている。

周囲にも人はいるけれど誰も助けようとはしていない。


見て見ぬふり。

まあ、そうなるよな。

俺だって普段ならそうする。

余計なトラブルには関わりたくない。


でも。


「……流石に見過ごせないか」


女の子が嫌がっているのが分かる。

だったら助ければいい。

俺は二人のところへ歩いていく。

そして、男に聞こえるように声をかけた。


「神崎、ここにいたのか。ほら、行くよ」


当然、女の子の名前なんて知らない。

なので適当に神崎と呼んだ。

女の子がこちらを見る。


「……え?」


男も俺を見る。


「誰?」


「誰って……彼氏だけど」


「…………」


俺は適当に言った。


「行くぞ、神崎」


「…………」


女の子は完全に固まっている。

そりゃそうだ。

知らない男から突然、神崎と呼ばれて、さらに彼氏扱いされている。

俺だったら普通に怖い。


だが。


「お前、彼氏持ちだったのかよ。ならさっさと言えよ」


「え?」


「じゃあな」


「…………」


ナンパしていた男は、思ったよりあっさりと引き下がった。

そのまま近くの居酒屋が並んでいる方へ歩いていく。


「……チョロすぎないか?」


まさかこんなに簡単に帰るとは思わなかった。

あいつ、本当にナンパする気あったのか?

俺は女の子の方を見る。


「いきなり声かけてごめんな」


「……あ……ありがとう……ござい……ます」


「ん?」


緊張しているのだろうか。

言葉が途切れ途切れになっている。

まあ、いきなり知らない男に話しかけられたら緊張するよな。

むしろ俺でも警戒する。


「大丈夫?」


「……はい」


「なら良かった」


俺はそのまま立ち去ろうとする。


「それじゃあ、俺は行くから。またナンパされないように気をつけてな」


俺は駅の出口へ向かおうとした。

その瞬間、ぐいっ。


「……ん?」


服を引っ張られた。

振り返る。

女の子が俺の服の裾を掴んでいる。


「どうした?」


「あ……その……」


女の子は少し俯いたまま、何かを言おうとしている。

そして。


「ら……LINE……交換して……ください」


「…………」


スマホを取り出し、LINEのQRコードを表示している。


「……LINE?」


「はい……」


「…………」


これ、断れなくないか?

漫画でこういう展開を見たことがある気がする。

助けた女の子から連絡先を聞かれる。


漫画ならいい。

漫画なら。


「……現実で起きるのか、これ」


俺が思わず呟くと、女の子が首を傾げる。


「……?」


「いや、何でもない」


俺もスマホを取り出す。

仕事用のスマホなんて持っていない。

なので普段使っているスマホのLINEを開く。


QRコードを読み取って――


「追加っと」


これで登録完了。


「……ありがとうございます」


「別にいいよ」


「……あの」


「ん?」


「お礼……したいので……お昼……食べに……行きませんか」


「昼?」


俺は時計を見る。

確かに、そろそろ昼飯の時間だった。


けれど。


「別に大丈夫だよ」


「…………」


「服を買いに行かないといけないから、ごめんな」


今日は本社に行くための服を買う予定だ。

適当な服装で企業の本社に行くのは流石にまずい。


「……そうですか」


女の子は少し残念そうにする。

俺と一緒にいない方が、この子にとっては楽なんじゃないだろうか。

さっきから緊張しているみたいだし。


「じゃあ、俺は――」


「なら……服……買いにいきましょう」


「…………」


「え?」


「服、買いに行きましょう」


「いや、なんで?」


「私も……行きます」


「…………」


話が繋がっていない気がする。


「別に着いてくるならいいけど」


俺がそう言うと女の子は小さく頷いた。


「はい」


……まあ、本人がいいならいいか。

俺は駅の出口へ向かって歩き始める。

するとまた服を掴まれた。


「……?」


「……行きましょう」


「いや、歩けるから」


「…………」


「…………」


離してくれない。


「……諦めるって、たまには重要だよな」


もう好きにしてくれ。

多分この子、俺を逃がす気がない。

今も俺の服を掴んでいる。


「ていうか……」


ふと周囲を見る。

俺の服を掴んで歩く女の子。

そして、その隣を歩く俺。


この状態だけ見ると、ディズニーに初めて来たカップルみたいだなしかも、かなり距離が近い。

ただし俺たちは今日初めて会った。

名前すら知らない。


「……まあ、いいか」


俺はそのまま服屋へ向かった。

そして結局、女の子と一緒に服を選ぶことになった。


「これ……似合うと思います」


「そう?」


「はい」


「じゃあ、これにするか」


「……!」


何故か女の子が嬉しそうにしている。


「こっちは?」


「それもいいと思います」


「じゃあ、それも買うか」


そんな感じで服を選んでいき――気が付けば、予定していた服は全部揃っていた。


「助かった。ありがとう」


「いえ……こちらこそ」


最初はかなり緊張していたようだったが、買い物をしているうちに少しずつ普通に話せるようになっていた。

最後の方なんて、普通に会話していた気がする。


「じゃあ、俺は帰るけど」


「はい」


「駅まで送るよ」


「……ありがとうございます」


俺は女の子を駅まで送った。

そして改札前で別れる。


「それじゃあ、また」


「……はい。また」


女の子はそう言って、改札の向こうへ歩いていった。

俺もそのまま家へ帰る。


「……なんだったんだ、今日」


駅に来ただけだった。

変な人を大量に見かけて。


ナンパされている女の子を助けて何故かLINEを交換して何故か一緒に服を買って。

そして帰ってきた。


「まあ、服は買えたからいいか」


明日は本社に行く。

闇音恋歌と話す。

それだけだ。


……たぶん。

俺はそんなことを考えながら、買ってきた服を袋から取り出した。

もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。

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