第20話 それでも俺は、ネルソンでガルダを登る
とはいえ、どれだけ裏事情を妄想したところで、ゲーム画面の中でネルソンは、黙々とガルダに向かって歩いていく。
現実のネルソンは五万メートルを走り抜けたらしい。
ゲームのネルソンは、俺の操作ミスでクレバスに落ちる。
モデルが誰かはさておき、画面の中の男は、何度死んでもまた立ち上がる。
画面端には、またもや「DEATH: 104」と表示された。
雪崩に巻き込まれた直前のフレームで一時停止すると、ネルソン(※たぶんブラピ)が、どこか吹っ切れたような表情をしている。
「……いや、ごめん。ちゃんと練習する」
思わずモニターに向かって謝った。
現実のガルダに近づく前に、まずはこのゲーム内ガルダで、せめてまともに一合目まで行けるくらいにはなりたい。
「最高峰と人類最高峰の頂上決戦」のコピーは、やっぱりやかましい。
やかましいけど、そのやかましさに釣られて、俺はまた「登る側」に引きずり戻されつつある。
ハリウッドと闇運営の泥沼闘争が裏で進んでいようと、ブラック・ビーツのアリバイが雑だろうと、俺にとっては、今コントローラーの先にある雪面こそが問題だ。
現実の山では、もう二度と味わいたくない種類の恐怖がある。
でも、ゲームの中なら、何百回死んでも、リトライボタン一つでやり直せる。
ネルソンに顔を借りて、五万メートルの怪物に挑む練習をする。
それくらいの無茶は、きっと許されるだろう。
とりあえず、ニーソンスキンのことは絶対に深追いしないと誓いながら、俺は今日も、仮想ガルダの斜面で派手に滑落するのだった。




