第三十七話〜第三十九話
第三十七話 筒抜けの計画
人間たちは、何かを企んでいた。
武器を失った兵士たち。
集まって相談している。
スライムは少し離れた場所から見ていた。
見ているのは、一匹ではない。
壁の隙間。
床の下。
建物の陰。
人間のすぐ近く。
小さなスライムたちが、
すでに入り込んでいる。
「次は森から――」
「夜に――」
「別の街にも知らせて――」
聞こえた。
スライムは情報を共有する。
別のスライムが聞いた情報も共有される。
王都。
街道沿いの街。
森の中。
兵士たちの集まる場所。
人間の計画が、
次々とスライムたちへ伝わっていく。
人間たちは知らない。
自分たちのすぐそばに、
小さなスライムたちがいることを。
相談すれば、
その内容がスライムたちに伝わる。
どこで話しても。
小さなスライムたちが聞いている。
そして合体する。
すべてが一つになる。
人間の計画は、
スライムたちには…
筒抜けだった。
第三十八話 無言の圧力
人間たちは、計画を実行しようとしていた。
森の入口。
兵士たちが集まっている。
武器は少ない。
それでも、何かを作っていた。
木材。
網。
金属。
火を起こす道具。
スライムたちを捕まえるためのものらしい。
スライムは、その目の前へ出た。
一匹ではない。
数え切れないほどのスライムたちが、
静かに集まる。
人間たちがスライムを見る。
スライムたちも人間を見る。
そして、
一匹のスライムが魔法を使った。
炎が生まれる。
次の瞬間、
用意されていた道具が、
一気に燃え上がった。
木材が燃える。
縄が燃える。
金属まで赤くなる。
人間たちは動かない。
スライムたちも動かない。
ただ、そこにいる。
圧倒的な魔力。
圧倒的な数。
そして、無言。
人間たちは炎を見つめている。
誰も近づかない。
誰も武器を持っていない。
スライムたちは一歩も動かなかった。
それだけで十分だった。
しばらくして。
人間たちは、ゆっくり後退した。
スライムたちは追わない。
ただ見送る。
スライムたちは思った。
戦う必要がないなら、戦わない。
けれど、
いつでも戦える。
それを知ってもらえればいい。
人間たちが去っていく。
スライムたちも静かにその場を離れた。
第三十九話 共存
しばらくすると、
人間たちの間に一つの認識が広がった。
襲わなければ、襲われない。
武器を持っていなければ、襲われない。
最初は疑っていた人間もいた。
けれど、何度も確かめるうちに、
それが分かってきた。
畑を耕す人間。
店を開く人間。
学校へ行く人間。
誰もスライムたちを攻撃しない。
スライムたちも、人間を襲わない。
やがて、
街中で、スライムを見かけても、
人間たちは逃げなくなった。
「スライムだ」
それだけ。
道を少し譲る。
それだけだった。
いつしか、人間にとってスライムは、
恐ろしい魔物ではなくなっていた。
スライムたちも決めた。
人間たちの食べ物は、奪わない。
畑の作物。
店の商品。
家にある食料。
それらには手を出さない。
人間が作ったものは、人間に必要だ。
けれど、
骨は別だった。
道端に落ちていた骨を、
一匹のスライムが取り込む。
問題ない。
むしろ、食べられる。
合体する。
情報を共有する。
骨は食べてもいい。
そう決まった。
スライムは、人間の街を歩く。
人間も、スライムの横を歩く。
襲わない。
襲われない。
それだけで、
世界は少し、静かになった。
つづく




