第11章 あと少し
第11章 あと少し
11‐1
あの日から私は学校に行っていない
学校に行っていないと言うより
クラスメイトや同じ学年の人に会っていない
麻希の話によると
私が妊娠していることは2日も経たないうちに
全校生徒に広まったらしい
あのあと、私は教室には戻らず、麻希に荷物を持ってきてもらい家に帰った
携帯を見たら、仁百からメールが来ていた
『夏美、ごめンね
夏美のコト嫌ぃなゎケじゃナイょ。
大スキだから、、、だからコソ悲しかったの
マキには言うのになんでゎたしに言わなぃのぉ?
ひどぃょ。』
私が悪かった
ごめんね、仁百
苦しませたね、悲しませたね
私はこうちゃんに言った
「明日から当分学校に行かないで家に居るね。」
こうちゃんは笑顔で
「うん。でも家に居ても気をつけてネ?なんか、もうすぐってカンジする~!」
そう言った
流石に、学校で何言われたかなんて言えなかった
11‐2
『金倉ちゃん、1人だぞ』
学校に行かなくなって3日目にあるクラスメイトからメールが来た
いっつも人懐っこく喋りかけてきて、誰とでも話す、可愛いキャラの田井中優都〔タイナカ ユウト〕
『どういうこと?』
私は即行返信した
『おー☆よかった返信来て♪
元気ですかい?』
初めてに近いメールのやりとりに、ちょっとドキドキした
『元気だよ。私も、お腹の赤ちゃんも』
『よかったー☆
あのさ、金倉ちゃんさ、なっつーのことかばったじゃん?
そんでね、なっつーのコト侮辱したけど、自分の中だけで秘めていた
金倉ちゃんもかんなり侮辱されてんだ。助けてやんなよ』
可愛いキャラはメールでは消えていた
『教えてくれてありがと。やっぱりクラスの人みーんなあたしを批判してるの?』
『んまぁー大体
優都みたいに、別になんとも思ってないのも
密かにいるんじゃないかなぁー?
あぁそぉいえば、メガネっ子ちゃん3人組はなんとも思ってないみたい』
メガネっ子3人組
メガネといえば、あまり好かれていないようなイメージが強いが
あの3人組は全然好かれている
昼休みはよく、クラスの女子に囲まれていた
『そっかぁ…ならさ、3人組と麻希、くっ付けちゃってくれない?たーちゃんの力で』
『うーん…頑張ってみる☆そのかわり、赤ちゃん生まれたら抱かせろよぉー☆』
田井中優都 通称たーくんはやっぱりいい奴だ
『もちろんっ☆じゃ、また。よろしくね』
『やったぁー♪約束ナっ☆分かった!じゃな~』
11‐3
あれから1週間経った
私のお腹はパンッパンに
それと同時に私の胸もパンッパンに
今までは度々吐き気がしたが、それもなくなった
1週間でこんなに体調に変化があるなんてすごいと思った
プルるるっプルるるっ
15:30過ぎ
『090‐****-####』
見たことない携帯番号から
「はい…」
「もしもしぃー?」
なんだか聞いたことある優しい声
「はい…」
「優都だよー」
「あっ、たーくんか」
「優都で悪かった?ふふっ」
「全然 待ってたよ連絡」
「最近金倉ちゃんと話したー?」
そういうえば、あの日以来、会ってないし、話していない
「全然だよぉ」
「そっかぁー優都、くっ付けちゃった☆どうやってくったけたかは聞かないでーめんどいから」
ありがとたーくん
11‐4
学校に行かないと時間が経つのが早い
というか、暇
もう体調もいい
というか、早く生みたい
それが今の本音
予定日は来月の6日と決まった
この辺はまだ暖かい
しかしそろそろ冬らしくなるだろう
なんて…暇だから桃の毛糸で靴下を編んでいた手を止め小説家みたいなことを考えていた
「ひまー…」
思わず独り言
今日は11月の10日
実に晴れ渡っている…良き日だ
「いったい…」
わかんない……今までには味わったことのない痛み
急に…痛い…
人間が絶えられるのかっていう痛み
『痛み』なんて優しいものではない………『激痛』だ
「あぁれ…」
痛みは引いた
なんだかよくわからない……
でも怖かったから病院にすぐ1人で行った
11‐5
「先生、もう生まれちゃうんですか?」
平日だったので空いていた
なので私はすぐ、診察室に呼ばれた
「うーん…夏美さんの体じゃ出産には耐えれないと思う」
確かに私は小柄
でも、出産に耐えれないほどではないと思っていた
「私が小さいからですか?」
「んー違うの。やっぱり、若いと体にかかる負担が大きいし、もうすぐ赤ちゃんが生まれそう」
中山先生は言った
「帝王切開……とか聞いたことあるかしら?」
中山先生は私に少し近づいて言った
「あります…」
私は確信した
私は帝王切開で生むことになる
「先ほどの痛みは前駆陣痛[ぜんくじんつう]というもので陣痛に似たもで、陣痛ではない」
中山先生はさっきの痛みについて詳しく説明してくださった
「もう37週目に入っているようなので、1週間後に手術をしたいのですが大丈夫ですか?」
急過ぎる出産に私は少し戸惑っていた
「迷っている時間はあまりありません。遅くても18日には手術をします」
先生はそう言った
先生はその後、明後日までには病室を確保しておくからそれまでには荷物を持って来なさい
と言った
11‐6
「ただいまー」
何も知らないこうちゃんはいつも通り元気に帰ってきた
私は帰ってすぐ夕食の準備をしていたからもう、食べるだけだった
「今日も、美味しそう…」
こうちゃんはテーブルにのったお皿の中を覗きながら言った
「こうちゃん、話があるの」
私は重苦しく言った
「う…ん」
こうちゃんはさっきまでの笑顔を消して水で洗った手を拭きながら、座った
「実はさ………」
私は中山先生から説明された今の赤ちゃんの状況
帝王切開のことを丁寧に細かく話した
「そっかぁ……入院…ねぇ」
こうちゃんは視線を下に落とした
「でも、そんなに長い間じゃないし」
私は必死
「うん。でも、入院するしかないんでしょ?」
こうちゃんは泣きそうな顔で私に言う
「そうだよ。こうちゃんもパパになるんだから!少し我慢しないと」
私はそう言って誤魔化した
「そうだね。僕はパパになる!でもね、毎日病院に行っていい?」
こうちゃんは一粒だけ涙を落として行った
「もちろん」
私はこうちゃんに笑顔で言った
こうちゃんは大きい瞳を細くして笑った