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がいせん

「はっはっは! 悪を倒した後のリンゴはとっても美味いのだ!」


 シグはとっても上機嫌。

 衛視長さんからたっぷり謝礼をもらえたし!


「そうだね。結局ファラエルさん力押しするんだもの。驚いたよ」

「あら。アレフ君も結局力押しでしょ?」

「俺は<<剣士>>だし!?」

「あはははは! わたしは炎の魔術師だけには負けないの。氷の魔術こそ至高! 氷の魔術こそ最強の魔術なのよ! 氷の魔術ばんざーい!」

「アレフ、ファラエルさん凄く嬉しそう」

「炎の魔術師に相当恨みがあったんじゃないのかな?」

「えー? あの人個人に対してじゃないの?」

「それはどうだろ?」

「ねー、シグちゃんもそう思うよね?」

「んー? ジュリア? ダメだ! このリンゴは(われ)のものだ! いくらジュリアが優しくてもこのリンゴはやらないぞ!?」

「だいじょうぶ、取ったりしないし! むしろもう一個あげちゃう! はいシグちゃん。新しいリンゴ!」

「おおおおお! さすがジュリア! 大好きなのだー!!」


 シグがジュリアの胸に跳び付いた。

 その豊かな胸に深々と顔を埋めて。


 え? ファラエルさん?

 ファラエルさんはほら……喜びの乾杯を他の冒険者グループとやってるよ。


 ◇


「アレフ~あなたもほら、ジョッキが空いてるわよ?」

「ちょ!? ジュリア!?」


 ジュリアの目が据わっている。

 ううう、誰だよジュリアにお酒飲ませたの!


「今回は本当に女神ライア様の勝利だったわよね! ライア様のくれた私たちと衛視の皆さんとの団結の勝利! これ!」

「お、おう。そうだったな」


 今回ジュリア……何かしたっけ?


「この街には女神ライア様を崇めている方は少ないけれど、今回の件で女神ライア様最高! 女神ライア様素敵! 女神ライア様万歳! って思う人たちが多いと思うの!」

「お、おぅ」


 そ、そうかなぁ……。


「女神ライア様はね、まだ私にはお声をお掛けくださらないけれど、きっと直ぐ傍で見守ってくださっているに違いないのよ。ああ、お優しい女神ライア様……」


 ああ、まだジュリアは神様の声が聞こえないのか。

 でも、珍しいよな。あれだけ凄い神聖魔術が使えるというのに未だに神様の声が聞こえないだなんて。


「アレフ、アレフはどう思うの? やっぱり神様の声が聞こえないプリーストなんて、何の魅力も無い……?」


 耳に熱い吐息が掛かる。


「おうわぁ!?」


 俺は思わず飛びのいた。

 湿った吐息、なんだが良い香り、それにあの、ちょっとだけ触れた柔らかな胸の感触……!

 ジュリア。

 ジュリアももう大人に……。


「なぁなぁアレフー」

「ん?」


 お子ちゃまがリンゴを齧りつつ俺の横にちょこんと座る。

 ん、今日のシグは俺が買ってやった赤い服を着ているな!

 あの可愛い服だ。


「シグ、似合ってるぞ?」

「本当か!?」

「もちろん!」

「おお、アレフ! アレフならそう言ってくれると信じておった! さすが吾が騎士を名乗るだけの事はある! 吾にぴったりの物を見繕ってくるとはな! アレフ、ますます見直したぞ!!」


 ◇


「ファラエルさんファラエルさん」

「ジュ、ジュリアちゃんまさか飲んでるの!?」

「え? 飲んでませんよ?」

「いや、でも、その……」

「アレフがですね、シグちゃんに掛かりっきりなのはどうしてでしょう。やっぱり私よりシグちゃんのほうが可愛いからでしょうか……」

「そんな事は無いわ。ジュリアちゃんは充分魅力的よ?」

「じゃあ、どうしてアレフは私には服を買ってくれないのに、シグちゃんにだけ買ってあげるんです? 鎧の事もそうでした」

「う゛」

「私がどれだけアレフに尽くしても、アレフは振り向いてくれないんです。どうせ私は日陰の女……」

「そ、そんな事ないわ! お、落ち込むことなんて何も無いのよジュリアちゃん!」

「いえ、わかってるんです。どうせ私はアレフにとってただの幼馴染。それだけの女なんです……」


 と、運ばれてくるリンゴジュース。


「これは?」

「ああ、アレフ君からジュリアちゃんにだって。日頃の感謝をこめて、だそうよ?」

「え? アレフから私に?」

「そうそう。アレフ君、とってもジュリアちゃんの事を気にしてるんだから。いつも冒険のときはね、ジュリアちゃんが怪我しないように気を配ってるの。それにね、依頼者の人からの心無い言葉の数々からもアレフ君はジュリアちゃんの事をかばってるわ」

「そ、そうだったんですか?」

「そうよ! まさか気づいていなかったのジュリアちゃん?」

「……ああ……気づいていませんでした……」

「アレフ君、言葉数は少ないけれど、とてもジュリアちゃんの事を大切に思ってるのよ? これは本当。このファラエルお姉さんが保障するわ?」

「そんな……ああ、アレフ!」


 ◇


「と、まぁ……誰よ、ジュリアちゃんにお酒飲ませたの」


 ◇


「アレフ……いつもありがとう。今回もアレフは私を守っていてくれたのね?」

「え? あ、うん。もちろん」

「やっぱりそうなんだ! アレフありがとう!!」


 ジュリアがいきなり抱きついてきた。

 引き剥がそうと思ったけれど、よく見るとジュリアが涙目だったんで止めた。

 ジュリア。もっと優しくしてあげてないとダメだな。

 ジュリアは元々俺が無理を言って冒険に連れ出したようなものだし。

 うん。今度からはもっとジュリアに優しくしよう。

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