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おうごんの

「はむはむ、やっぱりリンゴは美味いな! なぁアレフ?」


 シグがにっこり。


「俺はお前が笑顔でいてくれて嬉しいよ。でもシグ、リンゴばかりでよく飽きないな?」

「はっはっは! (われ)がリンゴの味に飽きるはずが無い。それにしても言うではないかアレフ! さすが吾が騎士!」

「はいはい。褒め言葉と受け取っておくよ」


 と、飛び込む影一つ。法衣を(まと)った……ジュリアだ!


「アレフ! アレフ聞いて! 信者さんから聞いたの! 黄金のドラゴンが西の砂漠で飛んでいるのを見た人がいたの!」


 ◇


 ガンラガンラ。ゴンロゴンロ。パカラパカラ。

 馬車は走る。砂漠に向けて。

 俺たちは一路、黄金のドラゴンを追っていた。


「なーなーアレフ? そのドラゴンに会いに行くのか?」

「竜人族かもしれないだろ?」

(われ)ら竜人族はそう簡単にドラゴンに変身なんてしないのだ。それに竜人族はもう……」

「それに?」

「いや、なんでもないのだアレフ!」

「んー? 怪しいぞシグ」

「何を言う! 吾は偉大なる竜人族の皇女シグルデ! 誇り高き竜人族! 立派なレディなのだ!!」

「はいはい。で、ジュリア。とりあえず飛び出してきたけどさ、詳しい事を教えてくれよ」

「うんアレフ。例の信者さん、怪しい儀式を見たんですって」

「怪しい儀式? なにそれジュリアちゃん」

「全身黒づくめで黒マントにフードを被っていたらしいんです」

「うんうん、それでジュリア」

「それでね、そのの人たちが火を囲んで輪になって、なにやらブツブツ呪文のような物を唱えながら火に剣をささげていたらしいんですよ」

「あからさまに怪しいわね、それ。秘密結社? 暗黒教団?」

「あとはですね、とこからともなくドンどこドンどこって太鼓の音が聞こえてきたって言われてました」

「怪しさ大爆発じゃないの!」

「ですよね?」

「そうよ!」


「黒づくめ……おいシグ」

「何だアレフ?」

「お前の関係者じゃないのか?」

「ん、アレフの言ってる事がわからないのだ!」

「とぼけるなよ。お前を崇めている教団の関係者だろ?」

「アレフがバカじゃないのだ……」

「うん、シグよりはまともだと思ってる」

「なにおう!? そこになおれ吾が騎士アレフ!!」


 やおら揺れる馬車の中で立ち上がり、弾んだ瞬間、仰向けにこけるシグがいる。

 まぁ、そんなシグは見捨てておいてだな。

 どうせ話す気は無いのだろうし。


「アレフ君、心当たりでもあるの?」

「うん、ファラエルさん。俺、故郷の街で黒ずくめの男と戦って剣を貰ったんだ。ほら、腰に下げているこの剣」

「いつも思っていたけれど、立派な剣ね」

「うん。その人は俺と剣を交えた後、俺にこの剣をくれて言ったんだ」

「剣を、くれた?」

「そうなんですファラエルさん。『この剣をやろう。見事姫を守って見せろ』って」

「姫……それがシグルデちゃんの事なのね?」

「はい」

「うーん、黒づくめの集団、黄金のドラゴン。何かあるわね。いえ、無いわけがないわ」

「そうですかね、ファラエルさん?」

「そうよ! そうあるべきなのよ! ジュリアちゃんもそう思うでしょ? アレフ君はそう思わないの!?」

「いや、どうして決め付けるのかな、って」

「そうですよファラエルさん。私もつい慌ててアレフに急いで馬車を出すように言っちゃいましたけど……」

「何を言ってるの二人とも。決まってるじゃない! お約束よ!」


 ダメだ、本当にダメだこの人も。

 一瞬でもファラエルさんに期待した俺がバカだったのかもしれない。


 カンラゴンロ。ガラガラ、パカラパカラ……。

 やがて、乾いた風が吹いてきた。


 ◇


 そしてやって来た黄色い砂丘連なる砂漠。

 ここはそんな砂漠への入り口──オアシス。


「ねえ小父さん、この辺りで全身黒づくめの怪しい集団がいるって噂を耳に挟んだんですけど、何か知ってます?」

「ああ、それは竜の教団の連中だよ」


 ジュリアがオアシス街の酒場で銀貨を一枚渡し、ターバン小父さんの口から漏れた言葉。

 あっさりわかる怪しい影の正体!


「ファラエルさん、俺たち王都の図書館まで行って伝承・地理を調べたよな?」

「調べたわねアレフ君」

「なんだよ、秘密でもなんでもないじゃないか! こんな簡単にわかる事がどうしてわからなかったんだよ!!」

「ふ、このファラエルお姉さんはね、昔から調べ物が大の苦手だったのよ……」

「なにカッコつけてるんだよカッコつけてるよねファラエルさん!?」

「フッ。さすがあたしね。見事に見落としていたわ」

「それ威張るじゃないよね!? 違うよね!?」

「能ある鷹は爪を隠すものなのよ」

「隠してないからソモソモその能がないから!」

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