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そして……

「リンゴが美味いのだーーーーーーー!」


 シグがリンゴを齧りながら叫ぶ。


「アレフ、アレフ! 私本当に心配したんだからね! ホントだよ? 本当だからね!」

「良くやってくれたわアレフ君! アレフ君ってば最高ね! お姉さん感激だわ!」

「アレフアレフ! さすが(われ)の騎士を名乗るだけの事はある! 見事だったな!」

「そうよアレフ! まさかチャンピオンを倒すなんて!」

「あたしね、さっきから嬉し涙が止まらないの。アレフ君、アレフ君本当にありがとう! おかげでこの前の負け分を取り返すことが出来たわ! 最高よアレフ君!!」


 俺が……『竜殺し』のアレフが闘技場のチャンピオン、ダルガンを倒したと言う噂はあっという間に王都中に広まっていて。


「よう『竜殺し』! 握手してくれよ!」

「アレフさん、この子の頭を撫でてくれませんか。強い子に育つように……」

「あいつあれでも銀級冒険者だぞ……どれだけ強いんだよ、なのにどうしてあいつがまだ銀級なんだ?」


 色々言われて来たけど。

 何よりも俺、──チャンピオンに勝てた事。

 その事が一番嬉しい。


 ◇


 おかげで指名で依頼が来るようになって……。

 今日も護衛依頼がしばしば舞い込むようになったんだ。


「酒場の用心棒?」

「うん、でもみんな握手を求めてくるし、用心棒と言うよりも客引きみたいなものかな」

「客引き?」

「うん。俺が酒場の中で立っていると、なぜだかとても目立つんだ」

「当然だな! 何せアレフは闘技場で常勝無敗のチャンピオンを倒したのだからな!」

「それはまぁ……そうだけど」

「はっはっは! アレフでも役に立つ事があるのだな! さすがはアレフ! みなの役に立っておるではないか!」

「いやいやシグ? もう役立たずじゃないし!?」

「その力を与えたのは誰か、思い出してみると良いアレフ!」

「え、あ、はい、シグのおかげだよね。無能の俺にスキルをくれたのはシグなんだから、感謝してるよ」

「本当に?」

「そこで疑うのかよシグ!?」

「アレフ、吾はリンゴが食いたいぞ」

「さっき食べてたでしょお婆ちゃん!?」

「誰がおばあちゃんだ誰が! 吾は麗しき竜人族の皇女、乙女の中の乙女シグルデ! バカにすると許さないぞ!!」

「あーはいはい」

「わかれば良いのだわかれば! はっはっは!」


 と、最近毎日がこんな感じだ。


 ◇


 そして、ライア教会からもたまにお誘いが来る。


「女神ライア様は仰いました。正しく生きなさいと」

「ジュリアー!」

「あ、アレフ。アレフ、今日はどうしたの?」

「ええとさ、教会の人に頼まれて……」

「何を?」

「ええとね、冒険の話をして欲しいって」

「冒険の話!? ライア様の教会で!?」

「ほら、俺とお前は一緒に冒険しているだろ? ライアのプリーストが勇者……俺のことだよ? それを助けているって方向に持って行きたいみたいなんだ。ライア教自体にも何度も勧誘されてるけど、それは断ってる」

「ライア教に勧誘されて断るなんて……そんなアレフ! アレフにはライア様の素晴らしさがわからないの!? ライア教に入信すれば、アレフも今以上に幸福になれるわ!」

「え?」

「ライア様はね、実に慈悲ぶかい女神様なの! そもそも私がライア様のプリーストを目指したのはね、スキルで<<僧侶>>をいただいたからでもあるんだけど……」


 ジュリアの目が、目がお花畑になっている。


「……そうよ! だからライア様は最高なのよ! ライア様ばんざーい! ライア様のおかげで今日もジュリアはこうして幸せに生きています! 現にこうしてアレフが私に逢いに来てくれました! 全てはライア様のおかげです! ね、ね! アレフもそう思うわよね!?」

「お、おう」


 そっとしておこう。

 俺はちょっとだけそう思った。


 ◇


 魔術学院からも依頼がよく来るようになったんだ。

 そして、ちょっと緊張気味の俺。


「今日は何の魔術試験なんですファラエルさん」

「ええとアレフ君。心配する事は無いわ。連続して射出される氷の矢の耐久試験だから」

「はぁ!? 俺に攻撃魔術の的になれって言うんです!?」

「はい、これ魔術防護服。これ着てちょっとそこに立ってて?」

「ちょっと待って、ちょっと待ったファラエルさん! これ絶対無事じゃ済まないしなにより凄く痛そうだし!?」

「いや、痛くないから。むしろ快感かも?」

「な、なななな、何を言ってるんですファラエルさん!? 正気ですか!?」

「正気も正気、そんな事当たり前じゃない。大丈夫大丈夫、それにね、こんな試験直ぐ終わるから。まー、十回程度は繰り返すけどね?」

「十回繰り返す!? 俺、攻撃魔法の的に十回もなるんですか!?」

「心配要らないわ。ちょっとだけ、本当にちょっとだけの事よ?」

「それちょっとだけじゃないでしょ本気でしょ回数多いしどうなってるんです本当に!?」

「え? 大丈夫大丈夫。全然怖くなんてないから」

「怖いですよ怖いです! 何をする気ですか、ああファラエルさん目が笑ってないし!?」

「さぁ覚悟して! アレフ君男の子でしょ!」

「そうですけどそれとこれと何の関係が!?」

「問答無用! それじゃ行くわよアレフ君! 覚悟!! アイスアロー(実験版)!!」

「そんな、ちょっと待っ……ギャァーーーーーーーーーーーー!」

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