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ふるやしきのかい

「アレフアレフ。ジュリアたちが変な事を言っていたのだ」


 リンゴを片手にシグがボヤく。


「なにを?」

「良くわからないのだ!」

「おいおい、何だよそれ」


 と、背後から俺の耳に息が吹きかけられる。


「ひやぁああああ!? ファラエルさん!? 止めてくださいよ!」

「そ、そうですよファラエルさん! アレフになんてこと!?」

「うふふ、ごめんなさいねアレフ君、ジュリアちゃん。この前の蛇が出た屋敷の話よ。改修工事が上手く進まないんですって。依頼主さんは相当に怒っているらしいわ。『下調べが不十分だったのではないか』って、カンカンだったそうよ?」

「なーなー。それのどこがいけないのだ?」

「シグちゃん、私たちの仕事が不十分だったとクレームが入ったらしいの。詳しい事はファラエルさんが知ってるから。お話を聞きましょう?」

「くれーむ? ジュリア、何を言っているのかわからないのだ……」

「ええ。シグルデちゃんにはちょっと難しいお話だったかしら」

「こらファラエル! (われ)を子ども扱いするな!」

「はいはい、ごめんなさいねシグルデちゃん。はいリンゴ」

「むむむー。まぁ、吾は心が広いから許すけどな!」


 ファラエルさんから差し出されたリンゴをさっと奪い取るシグ。

 さすが、手が早い。

 が、お前のプライドはそれで良いのか?


「うーんファラエルさん、依頼人に謝罪に……行きますか?」

「その必要は無いわ。その代わり、もう一度調べて来てくれですって。今回は無報酬よ、アレフ君」

「仕方ないですね」

「そうね。こればかりはね」

「それで、まだ屋敷にはあの蛇が出るのか? あの一匹で終わりではなかったのか……」

「いえ……それが……」


 と、ジュリアを一瞥するファラエルさん。


「お化けが出るらしいの。大工さんが怖がって工事が止まっているらしいのよ」

「お化け!?」

「嫌ぁああああああああああああ!!」


 ◇


 色々と手直しが入ってはいるものの、今だ荒れた箇所の残るその屋敷。

 俺達はその改装工事の途中で放り出された屋敷内に踏み込んでいた。


「物が勝手に動いたりするんですって。ああ、この部屋よ? 確か」

「ぽ、ポルターガイスト……ですか? 怖いですよ、ファラエルさん」

「そう? ジュリアちゃん」

「よし、今夜はこの部屋で一晩明かそう。泊まって確かめてみようか」

「そうね。アレフ君と一緒の部屋に泊まる……なんだか新鮮ね」

「何ですかそれ!? 誤解を招きそうなんですけど!?」

「あら、あたしは誤解されても構わないのよ?」

「ちょっとファラエルさん!?」

「そうですよファラエルさん! それにアレフと二人きりだなんて!!」

「あらジュリアちゃん。なにもあたしとアレフ君がジュリアちゃんたちと別々の部屋なんて言ってないじゃない?」

「え!? そ。それは……あの……」


 ◇


 ポルターガイストか。

 家にある家具が勝手に飛び回ったりするアレ……。

 正体って何なんだろうな? やっぱりお化け?


「なぁジュリア。ターンアンデッド……頼めるよな?」

「ひいぃいいいいいい!? もう出たの!? もう出た!? お化け!?」

「いや未だだから。未だ何も起こってないから。だから落ち着けよジュリア」

「ひぃいいいいいいい!? ダメダメダメ、もう何も言わないでアレフ!?」

「いや、あの……だからジュリア?」

「ひぃいいいいいいい!?」


 と、そんな時だった。

 ちょうどジュリアの怯えをあざ笑うかのように──。


 カチャ。カチャ……ガタガタガタ……ごぉおおおおおおおおっ!!


「ひぃいっ!? あ、アレフ~~~!! 助けて、ねぇ助けて!!」

「おわわ、アレフアレフ! 大工道具が飛んでいる!」

「そうね、色々飛び跳ねてるわね」

「どうしてファラエルさんは平気なの!? おかしいでしょ、おかしいわ!」

「落ち着けジュリア、いいからターンアンデッド!」

「怖い怖い怖い怖い怖い!?」

「大丈夫だジュリア、俺がいるから!!」


 俺はとっさにジュリアの震える両手を手に取り掌で包んだ。


「あ、アレフが……いる?」

「ああ、俺がいるから! だから大丈夫だ! 落ち着けジュリア!」

「でも……でも……」

「俺はずっとジュリアの傍にいる!」

「アレフ……」

「だからターンアンデットを早く!」

「そ、そうね……アレフ、信じるから。私、信じるから! 女神ライア様、お力を! ターンアンデッド!!」


 眩い光が部屋を覆いつくし、バラバラと大工道具が床に落ちてきた。


「ターンアンデッド、ターンアンデッド!!」

「おいジュリア、もう良い。終わったよ」

「はぁ、はぁ、はぁ……終わった?」

「ああ、終わった」

「ジュリアちゃん、よっぽど怖かったのね」

「ジュリアは怖がりなのだ」

「でも、もう終わったから良いじゃないか」

「そうね。帰りましょうか」

「はい!」


 と。気を許したその時。


 カチャ。カチャ……ガタガタガタ……ごぉおおおおおおおおっ!!


「嫌ぁああああーーーー! もう一匹いるし、いたし!?」

「ちょ、ジュリア頼む!」

「嫌ぁああああああああ! もう嫌ぁあああああああああ!!」

「ジュリアー! 落ち着けジュリア」

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