布と布の戦い(2)〜布の力〜
形勢はパッチワーク団に傾き、影の織工は確実に数を減らしていった。しかし、戦場の混乱の中、ヴァルゴは不敵に笑った。
「面白い…だが、布の力を使うのは我々の専売特許だ」
そういうと、ヴァルゴは自身が纏っていた黒い布を広げた。布は宙に浮かぶと空に広がっていく。やがて、パッチワーク団を覆い被せるような大きさになると、
そこに浮かび上がるように新たな模様が現れた。
「な、なんだ…?」
ジョナサンが身構える。
「これは、“影縫い”の術。お前たちの動きを完全に封じる布だ」
ヴァルゴの声に呼応するように、空に広がる黒い布からは無数の黒い糸が伸び、パッチワーク団の面々に絡みついた。
「しまった…!」
ヴァルゴの黒い糸に絡め取られたパッチワーク団は動くことが出来ず、立ち尽くしている。
「またか!」
アーチボルドも膝をつく。
「やられた...この糸の量ではパッチワークの鎧も役に立たねぇ...」
「これが影縫いの術。これだけの数、操ることは出来ぬが、動きを止めることは可能だ」
ヴァルゴは続ける
「お前たちの布は優しい。だから負けたのだ。
布は支配し、管理するものだ」
ヴァルゴが手を振ると、動けなくなった仲間たちが糸に絡め取られ、引きずられていく。
「間違っているわ、貴方」
タエが歩み出た。
「ふん、老婆が何をする?」
「糸にはね、支配する力なんてないの。あるのは、布を、人を、結びつける力だけよ」
タエは静かに針を取り出し、黒い布に近づいていった。
「何をしている?」
アーチボルトが力を振り叫ぶ。
「俺らは囮さ。ばあさん、今だ!」
「何をする気だ、老婆!」
「ヴァルゴ、あなた、ここほつれているわ」
タエは黒い糸の"ほつれ"を勢いよく引き抜いた。
「しまっ…」
黒い布はみるみるうちに糸に戻ってゆき、やがて
全ての糸がタエの手におさまった。
ヴァルゴの影縫いの術は破られた。
それはタエの経験、観察眼、またジョナサン、アーチボルド。またパッチワーク団との信頼の上に成り立つ、ヴァルゴにとって最大の攻撃。
「動けるぞ、アーチボルド!」
「わかってるぜ!」
ジョナサン、アーチボルドが同時に切り掛かる。
「お前の布はもう機能しない…!」
「やらせるものか!」
ヴァルゴは口からピンポン玉ほどはある大きさの
どす黒い糸の塊を吐き出した。その異常に真っ先にジョナサンが気づいた。
「こいつ、まだ糸を...まずい!奴、逃げるぞ!」
「もう遅い」
「これで終わりではないぞ...パッチワーク団」
ヴァルゴは舌打ちした後、口から出した糸をまるでターザンの様に操り、廃墟街の闇へ消えていった。
「...クソ、行かせちまった」
「あの消耗だ。そうそう仕掛けてくることはないだろう」
ヴァルゴは消え、影の織工の脅威も去った。
戦いは、ひとまずパッチワーク団の勝利に終わった——。




