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ピッギョピギョにしてやんよ byミジンコ

 大会三日目。

 今日は準決勝二戦が行われる予定だ。


「とうとうここまで来てしまったか.........」


 控え室にて頭を抱えるグラド。

 先程もあの糞餓鬼皇帝に負けるな、手を抜くなと念を押されてしまったのだ。


 正直、本気の自分に勝てる相手なんてこの大会には居ないんじゃないかと思い始めた頃だ。


「あのウランフって男はかなり強そうだったがなぁ..........勝たせるのは何か嫌な予感がする」


 勘の鋭いグラドは、ウランフの醜い内面を一目見ただけで見抜いていた。

 だから正直あの皇帝よりもタチの悪そうなウランフに勝たせるわけにもいかない。


「あの変態は.......どう、なんだろうか」


 マスクドM。

 ミジンコ種のマスクを被った奇妙な男。

 彼がどれくらい強いのかはわからないが、ミスリル級程度ではあまり期待できないだろう。


「だが、多分あの男は最低でもアダマンタイト級はある筈だ」


 バッ!と立ち上がるグラド。

 彼の勘は鋭い。

 その勘が今日は良いことがあると告げている。 

 ならばあの変態は相当な実力者と見て良いだろうと思う。

 あくまで勘の話ではあるが。


『はいはいこんにちわぁ~~~~っ!!

 皆のカミラちゃんですよぉぉぉぉっ!!!』


『そして解説のゴリゴリ・マッチョスキーなのである。俺は筋肉が好きだ!!』


「いいぞ、筋肉ー!!」

「カミラちぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

「カミアァァッ!オアアァァッ!!!」

「儂も筋肉が好きじゃぁぁぁぁぁ!!」


 魔道具スピーカーを通して会場の様子が伝わってくる。

 大会三日目が始まった。










『三日目は準決勝になります!!

 今日戦うのはぁ、あ?あれ?』


『む?どうしました、カミラさん?』


『ここで、皆さんに残念なお知らせがありますぅ。

 準決勝第一回戦にてミコト選手が棄権だそうです!』


「「「えええええええ!!!」」」


「そんなぁぁ、ミコトちゃん見たかったのにぃ」

「み、見れないなんて.....」

「ふざけんなよ!こっちは楽しみにしてたんだぞ!」

「残念だ、非常に残念だ.......」


 荒れる観客席。

 ミコトとミコトを楽しみにしていた観客達には悪いことをしたな。

 一応代わりは用意しておいたけどどうだろうか。


『ですので代わりにエキシビションマッチが組まれているそうです!

 何々?おおおっ!凄いですよ皆さん!!

 な、な、な、なんとツバキが誇る「七天刃」のメンバー同士による試合ですっ!!』


「「「「おおおおおおおお!???」」」」


 どよめく観客達。


 『七天刃』は普段人前で戦ったりすることは無い。

 戦争や凶悪なモンスターの討伐等の際にしか人前で戦うことがないので、この日に大会を見に来た人々はある意味幸運ともいえる。


『普段お目にかかれない「七天刃」の戦いであるか。一回戦が見れなくなったのは残念であるが、これはこれで中々に運がいいのである』


『戦うメンバーは「七天刃」第三席!コゼット・キングズリー VS 第6席!ジェド・ナタク!!七天刃の中でも師弟コンビとして知られている二人ですっ!!!』


「「「「おおおおおおおおおお!!!」」」」


『楽しみですねぇ!ですが!ですがですよ!?まずは本戦の続きからですのでまだちょっと後になりますぅ!!』


「「「「ええええええええ!!」」」」


 喜んだり落ち込んだり忙しい観客達。

 最近「お」か「え」しか言わなくなってきた気がする。



『それではぁ!準決勝第二戦にいきましょー!!

 先ずは西側の入場口よりぃぃ、グラド・レクセウスぅーーーっ!!!』


 歓声と共に入場口より現れたグラド。

 堂々とした雰囲気は、まだ20代と若いながらも威厳を感じさせる。


『そしてっ!東側の入場口よりはミジンコ狂いの変態ことマスクドMだぁーーーーーっっ!!!』


 続いて東の入場口より1メートルぐらいのミジンコが現れる。










 ん、ミジンコ?













『でーれれーー♪でれれれでれでれーーー♪』


『ふぁっ!?何これ?!放送に変なもの流されてますぅ!!!』


 突然、魔道具のスピーカーから妙な音楽が流れ始める。

 どうやら放送がジャックされたらしい。

 そしてぞろぞろと現れるミジンコの群れ。


『でっれれー♪でれっれっれーー♪でぇーれれー♪』


 行進するように整然と並んで現れる大量の巨大ミジンコ。

 色とりどりのミジンコ達が美しい行進を見せる.........。


『でれれれぇーー♪でっでっでっでーーん!!』


――ザッザッザッザッザッ


 ミジンコ達の迫力に、浮いているのに足音が聞こえているような錯覚に陥る。


『なっ、なんなんですかこれはー!?ちょっとホラーですよこれ!??』


「うわぁ!?なんだこれ?なんだこれ!!」

「ミジンコしゅごいのおぉぉぉぉ」

「あの変態.......いったい何者なんだ.........」

「ぶはっ!面白ぇぇ!もっとやれぇ!!」

「ミジンコ居すぎ......気持ち悪い、うえぇ.......」


 混乱するカミラちゃんに喜んだり気持ち悪がったり忙しい観客達。

 スピーカーから流れる音楽も終盤に差し掛かってきた様だ。


『でぇーれぇー♪ででででぇぇぇぇぇぇん!!でっでっでっでっでっでぇぇぇぇぇーーーーん!』


 整然と並んだミジンコ達は、まるで軍隊のようにビシッと美しく並ぶと二つに分かれ、間に道を作る。

 そして、


「ぴぎょぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

『ででででででででででーーーーーーーん!!!』


「「「「ピギョオオオオオオオオ!!!!」」」」


 肩で風を切って歩いてきたマスクドMはミジンコ達の列の一番前まで来ると『デーン!』とポーズを決めた!

 歓声を上げるミジンコ達!!


『うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!無駄に技術力の高い変態だあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!』


『うむ!入場からとても楽しかったのである!』


 完全にドン引きのカミラと、正反対で楽しそうなゴリゴリ。

 我らがミジンコ野郎は入場からもう既にレベルが違うのだよ!


「ぴぎょぎょぎょぎょぎょ!!

 グラド・レクセウス!我は宣言する!ここで我と戦う事になったのが運の尽き、お前は我に傷一つ付けることが出来ずに倒れ伏すであろう!」


 ビシィッ!とグラドを指さし、無駄に洗練された無駄のない無駄なポーズをとってみせるマスクドM。

 恐らく世の日本の中学男児が見ていれば、その厨二臭さに歓喜したであろう。

 だが、ミジンコである。


『おおーーっと!?これはいきなりの勝利宣言!グラド選手への挑発かぁーーーっ!??』


 グラドに向かって整列していたミジンコ達が一斉に目を向ける。


「よかろう!マスクドMよ、このグラド・レクセウスが受けて立つ!!」


「フッフッフッ、威勢の良い男ぴぎょ!あっさり負けても後悔するなぴぎょ!」


 大量のミジンコ達は入場口から戻っていき、両方の戦闘準備が整う。





『さ、さぁ、気を取り直して...........すぅ、はぁ。

 それでは始めたいと思います。皆さん準備は宜しいですね?

 それでは.........始め――――ッッ!!!』


――ドォォォォォォォォンッ!!!


 開戦の太鼓の音が会場中に鳴り響く。


「うおおおおおおおッッッッ!!」


 轟ッ!!と音を立てて振るわれるロングソード。

 グラドの全身は炎のような『限界突破』のオーラに包まれている。

 彼は開始直後から全力を出して戦うことにしたのだ。


――ギャリギャリギャリギャリ!


 凄まじい速度で振るわれたソレを刀で受け流すマスクドM。

 二本の剣と刀の狭間より、バチバチと火花が舞い散る。


『速い!滅茶苦茶速かったですよ!今の!!』


『俺でも殆ど目で追えなかったのだ。グラド選手はかなりやる気ですな!』


 剣を打ち合う二人。

 あまりのその速さに、観客達の目にはその残像しか写らない。


「魔導師の癖にとんでもない強さだな!この私についてこれる騎士など殆ど存在しないぞ!?」


「ぴぎょぎょぎょぎょ!! 我をそんじょそこらの魔導師等と一緒にして欲しくは無いな!!

 ふふふ、そして準備は整った!現れろ!『ミジンコトルーパーズ』!!!」


「何っ!?」


 カッ!と会場が光に包まれる。 

 そして、



『『『『ピギョオオオオオオオオ!!!!!』』』』



 ミジンコ!

 ケンミジンコ!

 タイリクミジンコ!

 カブトミジンコ!

 ハリナガミジンコ!

 ビワミジンコ!

 etc...........


 大量の巨大ミジンコ達がフィールドいっぱいに現れる!!


『うわああああ!気持ち悪いですぅぅぅぅ!!』


「フハハハハハ!!

 ピッギョピギョにしてやんよグラドぉぉ!!!」


『『『『ピギョオオオオオオ!!!』』』』


「な!?何だこれはぁぁぁぁぁ!!??」


 突然大量に現れたミジンコに動揺を隠しきれないグラド。

 それでもなんとかマスクドMの攻撃を凌ぎきっている辺り、やはり帝国最強の名は伊達では無いのだ。

 だが、ここで勝たせてやる訳にも行かない。


「全隊突撃ーーーッッ!!!」


『『『『ピギィィィィィィッ!』』』』


 号令にあわせて一斉にグラドへと群がるミジンコ達。

 あるミジンコは身体強化を掛けて体当たりを仕掛けたり、あるミジンコは魔力を練って強力な魔法の準備をしたりしている。

 このミジンコ達の正体はタツキの召喚獣だが、一匹一匹の戦力は本物のモンスターならB-は超えている。

 有象無象による突撃では無いのだ。


「ぬおっ!ぐっ、ふぅっ!はっ!」


 次々に襲いかかるミジンコ達をなぎ払うグラド。

 斬っても斬っても次から次へとまたミジンコ達が突撃してくる。

 まさにミジンコ地獄。

 蟻のように群がるミジンコ達に必死で剣を振るうグラド。

 ミジンコによっては一撃で倒せないものも居て、だんだんと対応が追いつかなくなる。


「おおおおおおおお!!」


『『『『ピギョオオオオオ!!!』』』』


 追いつめられたグラドは空中へと飛び上がり、『天歩』を使って逃げようとしたが、


『ピギョオオオ!』

『ピギイイイイイ!』

『ピギァァァァ!』


 正面から『火焔槍』、右方向から『氷結槍』、左方向から『雷撃槍』の三種類の魔法が空中のグラドめがけて飛んでくる。

 全てミジンコによる魔法だ。

 そしてその全ての威力も国の宮廷魔導戦士隊クラスの威力がある。


「ふざっ、けっ........フハハハ!何なんだお前は!桁違いにも程があるぞ!!」


 間一髪、空中で身をよじったグラドは上手くそれを避けきると、再び地面に着地し、離れたところに立つマスクドMに問う。

 そしてその答えは、


「悪いなグラド。今はこのミジンコ馬鹿に負けてくれ」


「くはっ.......成る程....合点がいったよ。それなら全力にて俺を倒せ。いや、俺を倒してくれ」


 マスクドMの答えから意図をある程度理解した彼は再び剣を構える。

 これが、最後の一撃になるだろう。


「いざ、『地絶』!!!」


 大地すら切断するとも言われる必殺の一撃。

 彼はその魔力と力の全てを一刀に籠めてマスクドMへと振るう。


「はあぁぁぁぁっっ!!」


「いいだろう、応えよう!行くぞ!『ミジンコバスター』ッッ!!」


 大量のミジンコ達が一気にグラドの方へと引き寄せられる。


「ぬぅぅぅおおおおおお!!!!」


『『『ピギョオオオオオオ!!!』』』


 グラドは迫り来るミジンコ達を斬りながらマスクドMへと迫っていくが、その進む先はミジンコによって覆い尽くされ彼は完全にミジンコに捕らえられる形となった。

 そして、


「さらばだ」


 カッ!とミジンコの塊が輝き始める。


――ドオオオォォォォォォォン!!!


 凄まじい大爆発が起きる!

 自爆って素晴らしい!

 様式美だと思う!!


 マスクドMは光の壁によってその身を爆発から守る。






 そして、爆発による煙がおさまった後。

 フィールドにはマスクドMただ一人のみが立っていた。

 グラドは塵一つ残さずに殺され、控え室にて復活させられたのだった。

 つまり、この試合は、


『ま、マスクドMの勝利ぃーーーーっ!!!

 な、なんと帝国最強にまで勝利してしまったーーっ!!!?』


「ぴぎょおおおおおおおお!!!」


 勝利の雄叫びを上げるマスクドM。

 決勝戦の選手が決まった瞬間だった。

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