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始まりはテンプレから

三章開幕です。

 やわらかい風が頬を撫でる―――


 転移した先は、草原のど真ん中に建つ、ストーンヘンジの様な建物の真ん中だった。


「ここは......何処でしょうか?」


「少し待ってて、今確認するから」


 俺は『座標の地図』を取り出して、場所を調べる。

 どうやら東の島にとんできたらしい。ここから一番近い国は『ツバキ王国』という国の様だ。

 たしかニコラスがいっていた話だと、勇者派の魔族がある一人の勇者と共に建てた王国のはずだ。


「見えるか?ここからはこの国が一番近いからここを目指そうと思う。いいかな?」


「タツキ様の向かう所なら何処へでもついて行きますよ」


「そうだね、僕も特に異論は無いかな」


 そうして俺たちは地図に従って、とりあえず一番近くにあった町『ヤナギ』へと歩き始めた。





 しばらくすると街道に差し掛かる。

 すると少し離れた場所から怒鳴る声が聞こえてきた。


「貴様等のような盗賊に私の商品を渡すわけにはいきませんな!!!!」


「あぁ??どうせおっさん殺して奪うから関係ねーだろ?いきがってんじゃねーよ」


「ウヘヘヘヘヘ、あの女後で使わして貰っても良いですかねぇ?お頭ァァ」


 見ると、和服の商人(恐らく奴隷商人だと思われる)の馬車が盗賊に襲われていた。

 商人は刀を構えて盗賊と対峙しているが、護衛はつけていなかったのか馬車の守りについているのは彼だけだ。


「ミラ、ブランシュ」


 二人に視線を送ると、「良い」と了承してくれた。


 直後、一迅の風が盗賊達を凪ぐ。


「んあ?あぁぁ..........?」


「へっ!?なっ何だ!!?」


 五人居た盗賊達がいつの間にか全員両腕を斬られて、手首から先を無くしている。

 そして、何か気が抜けたように全員倒れてしまった。


「こ、こりゃあ...........」


 商人がガクガクと震え始めた。

 ちょっとやりすぎたかな?


「ようっ」


「ヒイイッッ!!!!な、ななな何で御座いましょうかあぁぁぁぁ!!!!!」


「まぁ、落ち着けって」


 案の定後ろから寄って話しかけたらビビらせてしまった。

 なんとか落ち着かせようと宥める。


「タツキ様ー!速すぎです!!あんなの追いつけませんよ!!!」


「流石タツキ、と言いたいところだけどちょっとやりすぎたみたいだね?商人さん大丈夫かい?」


「ふ、ふへぇえええぇぇぇぇ」


 彼は完全に腰を抜かしてしまっているが、二人の美少女の登場によりなんとかもちこたえた。


「あ、あの貴方がたは一体どんな用事で.......?」


「俺達は旅人で、あんたが盗賊に襲われてたから盗賊が死なない程度に斬って気絶させた。用はそれだけだ」


 ポカン、とする商人の男。

 やがて気を取り直したのか、いそいそと服装の乱れを直すとこちらへ向き直った。


「いや、失礼した。申し訳ない。それと先程は有り難う。助かったよ」


「まあ気にするな。俺が勝手に助けただけだから。それに少しやりすぎちゃったしな」


「いやいや、何かお礼をさせて下さい。これでも私も商人の端くれ。受けた恩を返さないわけにはいかないのです」


 彼は被っていた帽子を外すと礼をする。

 頭に犬の耳が生えていた、気づかなかったけど尻尾も生えている。


「む、獣人なのかアンタ」


「おや?獣人を見るのは初めてなのでしょうか?その通りです。私は犬獣人のメッケ・モーノと申しまして奴隷商人を生業としております。以後お見知り置きを」


「おう。それじゃあさっきのお礼だけど、この国について色々と教えてくれないか?俺達はこの国に来たばっかりでこの国のことはよく知らないんだ」


「へ?その程度で良いので?いやいや、それでは駄目ですな。その程度なら何時でもお話ししますし何か他に欲しいもの等は無いですかな?」


「ん~?欲しいものか~~」


 特に欲しいものなんて無いんだよなぁ。

 強くなったお陰で欲しい物は大抵手に入るから な。

 それに俺はミラとブランシュが居てくれればそれで良い。


「二人は欲しいものとか無いか?」


 一応聞いてみるが、二人ともふるふると首を横に振った。


「すいません、今欲しいものとか無いんでまた別の機会に.......」


「奴隷とかでも駄目ですかなぁ。一応見てはくれませんかのぅ」


「じゃあ........一応は...........」


 俺とメッケは馬車の中の奴隷達を見る。

 鎖で馬車の壁に繋がれた男や女、果ては子供まで要る。

 種族も様々で、人族に獣人、水人族などが並んで座っている。


 奴隷の扱いは国によってそれぞれだ。

 人道的にちゃんとした食事や部屋を与えて働かせる国もあれば。人として扱われず、さんざん使われたあげく、ろくに食事もとれずに不衛生な生活を強いられすぐに死んでしまうなんてこともある。

 奴隷落ちしたときの理由にもよって、売られる国や待遇がきまったりするらしい。

 ニコラスから聞いた情報だとこんなところだ。


 ここに居る奴隷達はそこまで暗い顔をしていない事から、この国での奴隷の扱いは悪くないのだろうが、見ていてあまり気分の良い物ではない。


「なぁ、やっぱりやめに―――」


「...........??いや、待ってタツキ」


「??ミラ......??」


「タツキ、この子の事を『視て』くれないか?」


 そう言って、ミラは馬車の端に縮こまっていた十歳くらいの黒髪猫耳の幼女を指さす。


「...........わかった」


 ミラがそう言うのなら。

 俺はその猫耳幼女に鑑定を掛ける。




クロエ 獣人族 14才 ♀

天職:忍者・料理人

Lv.1

HP100/100

MP40/40

攻撃50

防御40

速度60

魔術50

スキル:調理Lv.6 危険察知Lv.-

称号:宵闇の黒猫



危険察知:生まれつき持っている以外に手に入れる方法がない特殊なスキル。自分を中心に半径30メートル以内の魔物を探知する。戦いにおける勘がよく働くようになる。


宵闇の黒猫:とある暗殺者一族の末裔。『暗器術』『隠密』『身体強化』『忍術』の効果が上昇。スキルレベルの伸びが全てにおいて少し上がりやすくなる。



 意外だ、10歳ぐらいだと思っていたが14歳だったか。年齢より幼く見えるな。

 それに、この称号は.............。


「............ミラ、この子は」


「その様子だと、ボクの予想通りだったみたいだね」


 商人の方を向き直ると、気になっていたことを聞く。


「メッケさん。少しいいですか?」


「はい、何でしょうか?」


「あの子なんですけど――――」


 そう言って、俺はどうしてあの女の子が奴隷になったのか質問する。

 すると、


「あの子はですねぇ、ついこの前仕事である村に行ったんですがそこで買ってきたんですよ。と、言ってもあの子には両親も保護者もおらずこれ以上は1人で生きていけなかったので、奴隷落ちという形で村長にお金を払って拾ってきたんですけどね。気になりますか?」


 ミラに視線を向けると。『連れて行く』と、目で返事をしてくる。


「そうですね、この子にします」


「はい!それでは早速奴隷契約致しますね。いやぁ、お礼させて貰えなかったらどうしようかと思ってましたよ」


 黒髪猫耳の幼女が見上げてくる。

 なんだか、ぼんやりした雰囲気の子だ。


「.......おにいちゃん........私を買うの..........?」


「ああ、これから宜しくな」


 メッケは馬車の外に彼女を出すと。首に刻まれている奴隷紋に指を当てた。


「旅人さん、お名前を宜しいでしょうか?」


「タツキ。タツキ・ヒュウガだ」


「ではタツキさんお手をお出し下さい」


 メッケが奴隷紋から指を離すと、光の糸が指に繋がって出てくる。

 そしてそれを俺の手の平に乗せると。


 一瞬、青く光り、糸はタツキと少女に吸い込まれるようにして消えていった。


「ええ、これで契約は完了ですね。以後貴方にこの子は反発できなくなり、貴方を害そうとすればとてつもない苦しみに襲われます。そうならないためにもより良い主従ライフを!!!」


 奴隷商なんて殺伐とした職業だが、ずいぶん明るい人だ。さっきの様子から見ても奴隷は大切に扱っているようだしこういう人間は嫌いじゃない。


「ご主人様............私、クロエ......」


「タツキだ。宜しくなクロエ」


「ボクはミラって言うんだ。宜しくね」


「私はブランシュです。これから宜しくお願いしますね」


 皆で挨拶する。

 旅が始まって半日もたたずに新しい同行者が増えることになったのだった。







「ところで、タツキさん達はどちらへ?私たちは『ヤナギ』へと向かっていた所だったのですが。もし良ければ護衛を任されては頂けませんかな?タツキさん程の強さなら金貨20枚でどうでしょうか?」


「良いですよ、俺たちも『ヤナギ』に向かってる途中だったんで」


「ふふふふふ。それならば心強いですな!これで『ヤナギ』までの道は安全ですなぁ!!!」


「宜しく、メッケさん」


 タツキとメッケは軽く握手をすると、倒した盗賊団を縛り上げて荷台に乗せて、再び『ヤナギ』への街道を走り始めるのだった。

いつも読んで下さり有り難う御座います。


異世界転移、転生モノのお約束だいすきです。

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