第26話 帝都に行こう!②
父さんいわく『帝都をしっかり見てきなさい』との事だ。
ダラダラしていたいけど、言われたからにはちょっと散策して、早く戻って寝よう。
「しっかし、本当にデカい都市だなぁ」
歩けど歩けど、全く終わりが見えない。帰り道もわからなくなってきそうだ。
市場に着くと、さらに賑やかで騒がしいと思うほどだ。
う、うまそうな匂いが充満してやがる...! 家の飯は確かに美味しかったが、外食はまだした事がない。
帝都なんだ、美味しいに決まってるよな! これは、食べるしかないよな!
今の持ち金は、金貨3枚に銀貨8枚、そして小銀貨7枚と大銅貨4枚だ。
村にいたからあんまり通貨制度については詳しく知らなかったけど、今はこんな感じらしい。
価値が上から順に、
白金貨
大金貨
金貨
大銀貨
銀貨
大銅貨
銅貨
各貨幣は4枚で次の貨幣に交換できる。
まあ、千年前とあんまり変わらん。でも、それぞれがどれくらいの価値を持つのかはわからない。
ここで使って確かめなければ!
カインは、後ろからの肉のいい匂いにつられて手を伸ばす。
「すみません、これ一つもらえますか?」
「はい、大銅貨2枚ね」
さすが帝都だ。見た目も素晴らしい。これ絶対うまいやつだわ。分かりますよ、わたくし。
カインはちゃっちゃと金を支払い、肉を頬張る。
うわ、これうま過ぎっ!
帝都のものは、やはり想像を超えてくるなぁ、いや本当に素晴らしい。
特に味付けが、ガツンとくる胡椒が効いててすごく美味しい。
他にも美味しいものがたくさんありそうだなぁ。
そう思いつつも、周りの美味しい匂いに釣られて、なんだかんだ食べまくってしまった。
そうやって、帝都をフラフラと歩き回っていると、ふと横を見て、変な看板がある事に気づいた。
“〈魔法専門塾〉一緒に学院合格を勝ち取ろう!!”
いや、なんじゃこりゃ。
専門塾? 塾って、一体何をするところなんだ? てか、魔法に塾なんて必要なんだろうか?
まったく意味わからん。こんなの、千年前じゃ見たことねぇ。
それに、街道も綺麗に整っている。見たことないタイルだ。
ファッションも変わっている。全然貴族っぽくない人が貴族だったりした。
こんな感じで千年の移り変わりに驚いてばかりだったが、時間は過ぎて日が沈み始めた。
そろそろ帰ろうかなと思った矢先、大変な事に気づいた。
そう、帰り道が全くわからないんだ。見事、心配的中!
行き場を失い、裏路地を通ってみる。大まかな方向だけは、なんとなく覚えているからな。
裏路地の先からは、なんだかおいしい匂いがする。まだ少し騒がしいのを聞くと、昼に行った市場だろう。
知ってるところに来れて、とりあえずよかった。
「......やっ..........てっ......く...」
あれ、なんか変な声が聞こえるぞ...
こっち、からか?
うわっ、こんなところに通路があるのか。
少し歩いて、奥まで行く。
静かに近づき、様子を見てみる。
「ーーちょっ、やめて下さい!!」
「えぇ〜いいじゃん。君、可愛いし、ちょっと遊んでほしいだけだってぇ」
「ここなら誰にも見えねぇよ、ほら、俺ら男2人じゃつまんないんだよぉ、な? 一緒に来るだけだって」
「本当に、迷惑なので!やめてください!」
「おっと、怖い怖い。そんなんじゃ、俺らも手ぇ、出しちゃうぜ」
なんか女の子が襲われてる...こういうのって本当にあるものなんだな。
まあ、今暇だし男のやつらはムカつく顔してるし、手の動きキモいし...助けてやるか。
「ちょっとほんとにーーーー
「何してるんですか、みなさん」
「あ?」
男は鋭い視線を向けてくる。
てか、この子確かにめっちゃかわいいな、おい。
服は普通だけど、整った顔立ちにきれいな赤髪。
これは襲いたくなるのも分かる...いや、それはダメだよな。
「そういう事は、あんましやらない方が賢明だと思いますよ」
「はっ、なんだと思ったらただのガキじゃねぇか、正義の騎士様気分ですか? 笑わせやがるぜぇ」
男二人は笑いながらこちらへ向かってくる。
「見られたんじゃしょうがねぇな。死んでも文句言うなよ」
「それはこっちのセリフですよ。すぐに終わったら面白くないんでね」
「ぷっ、はははっっ! なんだよお前、かっこいいでちゅねぇ、こんなところで意地張ってても、後で後悔するだけでちゅよぉ」
うわっ、やっぱ手の動きキモっ。
「本当に死んじゃうよ? お前じゃ勝てないってぇ。ホラホラ、今なら見逃してやるからさぁ」
なんかムカついてきたわぁ、これ。
「いやいや、だからあなた達みたいな雑魚に負けるはずないでしょ? アホなんですか? まあこんな事してるんだから、脳みそ詰まってないカラッポ男達なんでしょうけどね」
必殺、'超絶煽りっ'!
「...何だとゴラァ」
「上等じゃ、ぶち殺してやるよ」
うわぁ、目つきが怖いの何の。それは子供に向けていい視線じゃないと思うわけですが。
男達は、二人で挟みうちで殴りかかってくる。
(『速度強化』『身体強化)
ここで攻撃魔法を使う訳にはいかないからな。
「・・・・・・・・・」
ていうか、こいつら弱っ。
ちょっと『速度強化』と『身体強化』つけただけなのに、こいつら遅すぎだろ。
・・・もしかして、何も魔法を使ってないのか? 舐められたもんだな全く。
こうなったら、痛い目見てもらわなくちゃ。
大きい方の男の、ただ力ずくで振りかざす拳を受け止めて腹に一発喰らわせる。
横からさらに殴りかかってくるもう一人の男は、軽く避けて顔面パンチを喰らわせてやった。
やはり感覚が戻ってきているのだろう。無詠唱でもなかなかの効果だな。
普通は無詠唱で魔法を撃つと、威力が激減して使いものにならない。
でも、イメージがとてつもなく繊細ならば、その減る量は下がる。
それでも威力や効果はめっちゃ下がるけど、それ以上の利点がある。それは、相手に魔法を使った事がバレない事だ。
そうすれば、必然的に相手は防御ができない。これはとても大きい。
特に対人戦では、相手に悟られない事がどれだけ重要かがよく分かる。
まあ、ほとんど人とは戦ってなかったから、無詠唱とかほぼしてなかったけどね。対魔獣では、悟られなくてもしょうがない。
とにかく、イメージをちゃんと鍛えればできるって事だ。イメージをサボってた奴らにはできない。
そして、こいつらは詠唱をしていなかった。無詠唱で使っている気配もない。
なんて奴らだ、そんなの自分からやられに行ってるも同然じゃないか。
「クッ、クソがぁ...!」
おお、まだ立ち上がるのか。
「おい、やるぞ」
「わかってるよ! 炎よ、我が求めに応...」
...はっ?!
「おい、まてっ! ここで攻撃魔法はダメだろ!」
「うっせぇ! 嫌だったら止めてみろよ!」
「ーー応え、その槍をもって滅殺せよ 『ーーーー
「ああ、もう! ーー『水神の庭園』!ーー」
ーーーー『火槍』っ!!」
多分、ほとんど攻撃力は無いとは思うが...
「なっ、何が起こった?!」
あれっ、魔法陣が途切れた?
『水神の庭園』は、味方への超絶強化だけではない。敵だとイメージした相手の身体能力、魔法威力、魔力量など、全てが超低下する。
でも、威力低下じゃなくて、魔法が発動しなかったとか、どんだけ弱い魔法使おうとしてたんだよ。
「これ...何をしやがった、てめぇ!」
「お前らに言う筋合いはないよ」
この魔法、路地の形に合わせてイメージして作るの、すごい大変だな。曲がってるし。
さて、もう一発!
ーー男達は地面にうずくまった後、さっそうと路地を離れて行った。
「わたしの、おうじ、さまっ!」
「大丈夫だった?」
「えっ?! あっ......」
すると、女の子は急に立ち上がった。
「あ、ありがとうございましたっ! そっ、それではっ」
「あ、うん」
そのまま女の子も飛び出して行ってしまった。
ホントなんだったんだよ...やべっ、俺も帰らなきゃっ
夜6時で、外は暗く、道もわからない。そんなカインは、都中を駆け回りながらも、何とか家に帰る事ができたのだった。




