第49話 お仕事開始
「…アンタ、昨夜は大変だったらしいじゃない」
翌日の早朝、キュートの部屋にゴールド・ラッシャー幹部とクウコが集まった。
「うーん。確かに大変だったね~。けどそのおかげで敵の事が分かったからね~」
キュートはパソコンのエンターキーを押すと、ホログラムの文字列が部屋中に浮かぶ。
「これは敵幹部たちの大まかな特徴だよ~。これと一致した子を見つけたらその子を真っ先に殺してね~」
キュートがホログラムの文字を消すと、幹部の面々が頷く。そこからはキュートの雑談に近い話が数十分ほど続いた。
◇◇◇
「はぁー、かったり」
キュートの会話から解放されたクウコが廊下を歩きながらぼやく。
(適当に敵を蹴散らして、勝手に信頼を得てもらう。そーいう予定だったんだけれどねぇ…随分と事が大きくなってしまった。アタシらにも被害が出ているようだし…)
クウコは医務室の扉を開け、一番奥のベッドで寝ている女性のもとまで歩み寄る。
「…おーいベティ、起きな。アンタに寝てもらってたら困るんだよ」
クウコは寝たままのベティのおでこをペチペチと叩きながら耳元で話しかける。
「んー、起きないね…。ウチのトラブルメーカーちゃんなんだからしっかりと働いてもらわないと」
クウコは寝ているベティの鼻をつまんだり、ほっぺを引っ張たりするが、ベティはぐっすりのままだ。
「まぁ、下手に連れ出して戦力にならないほうが困るし、今は寝ててもらうか。だから起きたら速攻で来てもらわないとね」
クウコがベティから離れようとすると、医務室の扉が開く。
「おぉ、ここに居やがったか。マザー・キュートにさっき出会ってよ、今日は島の外周の調査だってな」
医務室に入って来たのはビリーで、ビリーの言葉に頷きながら説明をする。
「そうだね。私たちの役目は敵の隠れ家を探すことらしい。ゴールド・ラッシャーの人間は宮殿でボスの護衛だってさ」
「へっ、危険な仕事はオレらに任せてくれるとはお優しいことだな」
「そうだね、結局アタシらは部外者に過ぎないってことさ」
クウコはビリーの横を通り過ぎながら笑う。
「アティアとミースもとっとと連れてくよ。今後のためにも、今は従順な犬になってやろうじゃないの」
クウコは胸を張って堂々とそんなことを宣言して見せた。
「おいおい、その話を聞かれちまったらおじゃんだってのに、よく大声で」
苦笑いをしながら外へと向かっていくクウコの背中を追いかける。
「…しかし、キラードライブの幹部にゴドのヤツが含まれているとはな。アイツの随分デカくなったみたいだね」
キュートが標的とした幹部の中にはクウコの面識がある人間…ゴド・カリメの名も挙がっていた。
「良かったじゃねぇか。おめぇとあいつの間に何があったかは知んねぇけど…情に負けて逃がす、だなんて勘弁だぜ?」
「安心しな。絶対にぶっ殺すから」
軽口のつもりだったがビリーは想像以上に強い言葉で返ってきて驚きを見せたが、すぐさま笑顔を見せながら言う。
「…ん~、いいね。安心だぜ、それなら」
二人が話しながら宮殿の廊下を歩いていると、前方から二人の女性が向かってくるのが見えた。
「アティア、ミース。丁度よかった。アンタらもついてきな、仕事だよ」
クウコは並んで歩く二人の間を割って通り過ぎながら両者の肩をトントンと叩く。
「おー。いいね~…ってベティは?」
「アイツはおやすみ中だよ」
「マジか、叩き起こせよ」
二人は体をくるりと振り返らせて、クウコに後ろをついて歩く。
「島の端まで行ってそこで敵の拠点を探せとのことさ」
「うぇ~、面倒くさそうなこと言ってくるじゃーん」
「おうおう、そーだよ。オレらの仕事は敵を蹴散らすことなんだよ。捜索だなんてな…」
アティアとミースは文句を言いながらクウコに詰め寄るが、そんなことに耳を傾けるつもりはないようでツカツカ廊下を進んでいく。
「ぐたぐた言わないでくれよ。どうせ最終的には皆殺しなんだからさ。少しは我慢しな」
宮殿の外に出た当たりでクウコの脳内にある人物からの電話が鳴る。
『ハロハロ~、クウコちゃーん。わたしの言われた通り~、島の調査に行ってくれているのね~。感心感心~』
「…アンタどうやってアタシの脳内にかけてきたんだい?」
『さっき来てもらった時に~、教えてもらったよ~。覚えてるでしょ~?」
「あー?いや、あー、どうだろうか。言われ、たら?」
どういう経緯でキュートを頭内通信に登録したかは分からないが、言われたらそんな気がしてきたクウコは腑に落ちないながらも納得した。
「てかどこから見て…おぉ…」
クウコが辺りを見回していると、宮殿のバルコニーで手を振るキュートの姿があった。
『ここだよ~』
「そ、ならアンタはそこでアタシたちの素晴らしい報告を待っていな」
クウコは一方的に通話を切ると、手を振るキュートに背を向ける。
(…狙われてる身で、よくあんな余裕を見せれるな)
クウコは足早に現場へと向かうのだった。




