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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
第一章 『希代の革命者』
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第43話 爆発の羽音

「追い詰めたわよ!!」

 階段を駆け上がっていた者の正体はベティであり、拳銃を構えながら現れた。チップスも拳銃を構えた状態で待機していた。

 両者数秒間の沈黙の後、ベティの視界の隅に倒れる男が目に入った。

「…あなた、もしかしてデストロイヤーを殺した?」

「あぁ、そうだね。こいつの行動は僕たちにとって不利益になりそうだったし」

 チップスの回答を聞いたベティはゆっくりと拳銃を下げ、顔の緊張を緩める。

「そう…それは助かったわ。こいつ、すぐに逃げ出すから手間取ってたの」

 ベティの言葉にチップスは一瞬ポカンと呆けていたが、即座に状況を理解する。

(へぇ、こいつ僕を味方だと思っているね…)

 チップスもベティと同じように構えを解いて笑顔を見せた。

「君の助けになったのなら良かったよ。ゴールド・ラッシャーの仲間のところに行くんだろ?僕も同行するよ」

「分かったわ。じゃ、行こ」

 ベティは少し背後を気にしながらも、チップスから背を向けて階段を下って行こうとする。

(あの男を取り逃がすようなヤツだし不意打ちせずとも殺せると思うけど…ま、一応ね)

 チップスは拳銃をポケットにしまう動作をしたが、拳銃から手を離さずにベティの後ろを歩く。

(このまま頭をブチ抜いてあげるよ。バーイバイ、名も知らないお嬢ちゃん)

 チップスは手をゆっくりと外に出してベティの後頭部に銃口を向ける。そして静かに引き金を引いた。

「…!」

 銃声が響くとともにベティは勢いよくしゃがみ込んだ。まるで撃たれることが分かってたかのような反応を見せたベティをチップスは首の後ろに手を回し、不思議そうな表情で見つめる。

「…どうして、避けられたのかな?」

「気を張ってたのよ。あなたが仲間に思えなかったからね」

「…なぁんでだよ?君目線、僕はあの野郎を殺した人間だよ?」

 ベティがチップスと出会った時点でデストロイヤーを始末しており、ベティから見れば同じ敵を追っていた仲間にしか映らないはずだ。

「ただの勘、それと小さな違和感があったのよ」

「違和感?」

「まずなんでこんなところに一人でいるんだろうってね。あと言葉の綾かもしれないけどあなたさっき、デストロイヤーが自分の不利益になるから殺したって言ってたでしょう。状況が違えば敵を生かしてた…もし本当に私の仲間ならかなりヤバい発言してるわよ」

 ベティは拳銃を構えるチップスと睨み合っていると、チップスが笑い出した。

「…せーかい。僕は君の敵だよ。ただ何をそんな勝ち誇っているのかな?君は僕の不意打ちを回避しただけ。ただ寿命がちょーっと延びただけ。僕と対峙した時点で君は負けてるんだよ!」

 チップスは大声で笑いながら勢いよくベティを指さした。

「君はもう負けてるんだよ!敗因はただ一つ、ベラベラお喋りしてたこと。君が話している間に爆殺の準備が完了したよ!」

 ベティがその発言の意味を理解するよりも先に、超至近距離から爆発音が鳴る。熱と激痛が背中を駆け巡り、ワケの分からない苦痛がベティを襲った。

「ありゃ、生きてる。はぁ、無駄にしぶといんだから…少しは他人を気遣って死ねないの?」

 チップスはため息を吐きながらうずくまるベティに近づく。

「っう、はぁ、ひ、ヒール…」

 ベティがつぶやく。その言葉はチップスにも聞こえていたが、魔法のことなど知らないチップスからすれば意味の分からないことだった。

「生きてるとはいえその怪我だ。動くこともままならないだろう?今すぐ楽にしてあげるよ」

 チップスは余裕の笑みを浮かべ右手で後ろ髪をかき上げながら、左手をベティに向かって突き出した。

(銃も持たず、手を出してきた…この男は、腕に何か仕込んでいるタイプなのね)

 まだ背中がヒリヒリと痛むが動けないほどではない。ベティは魔法を放つために顔をあげて動き出そうとした。

「…ん?」

 立ち上がろうと地面に手をついた時、ベティの視界を小さな小さな黒い点のようなものが横切る。コバエのような虫だろうか、そう考えながらチップスに集中を向けようとした瞬間。そのコバエがピトッとベティの頬に張り付いた。

(っ、邪魔)

 ベティはそのコバエを人差し指で払いのけた。コバエはベティの頬から離れ、地面に叩きつけられた。

 コバエが地面にぶつかると同時に爆発した。半径が三十センチ程度の小さな爆発だが、コンクリートの床がえぐり取られていた。

「…な!?」

「ッチ。運がいい子だね!」

 チップスは距離を取りながら手を前に出す。その腕を注視していたベティはあることに気が付いた。

(袖の中から虫が出てきている…)

 袖の奥から三匹のコバエを模したドローンが飛び出してくる。コバエはそれぞれ散開し、静かにゆっくりとベティの視界から外れようとする。

「アイスランス!」

 的は小さいが、ゆっくりと動いているため氷の刃をコバエに当てるのは容易だった。氷の刃がコバエを貫き、コバエはそれぞれ小規模な爆発を起こした。

「…な、る、ほどねぇ。君が噂のベティ・ジャッタリーか」

 アイスランスを見たチップスは一瞬驚きの表情を見せたが、ニヤリと笑みを浮かべながら自分の髪をかき上げた。

「いいねぇ。僕と対等に戦える、歯ごたえのある奴が来たようだね」

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