表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅き軍靴は少女に微笑む  作者: フローレンス
1章 大戦のはじまり
3/51

産廃に宿った意志

――生まれて初めて名前を呼ばれたのは、十歳のときだった。


 


「お前、名前は?」


「……ない」


「じゃあ、今日から“リシア”だ」


 


 粗末な服、空っぽの孤児院。

 使い捨ての命に名を与えることなど、誰にとっても意味のないことだった。


 でもそのとき、自分は確かに“人間”になれた気がした。


 そう思った。そう――思っていた。


 


 でも、それは違った。


 


 リシア・ヴェルン。

 この身体には、生まれた瞬間から“役割”が決まっていた。


 名もなく捨てられた孤児じゃない。

 軍の裏で生み出された、戦闘用の強化素体。


 魔導科学と禁術の産物。廃棄対象。

 殺す手間も惜しまれて、孤児院という“ゴミ箱”に放り込まれた存在。


 


 知らなかった。誰も教えてくれなかった。

 そして――この身体に、異世界から転生してきた男の意識が宿ったのは偶然だった。


 


 死んだはずの俺は、気づけばこの世界にいた。

 異様な身体能力、冷たい眼差し、美しい少女の姿。

 すべてが、“俺”とはかけ離れていた。


 


 だが、それでいい。


 


 感情は邪魔だ。信頼も、愛情も。

 すべてが“効率”に勝るとは限らない。


 


 俺は生きる。使われる前に、使う側に回る。

 この身体、この才能、この異質さ。すべてを武器に――


 


 戦場で、成り上がってやる。


 


 “リシア・ヴェルン”として。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ