私にとってのエピローグ
あれから、大学生活に入り、特に苦労する事も無く日々を過ごしていた。
8月下旬のある日。
私は知念社長にTrulyOwnsビルへ呼ばれる事になった。
着いた先は同社ビルの3階。フロア自体は透明な壁となっており、双冶と目が合った為、私は手を振って答えた。
数分後、9階から知念社長がエレベーターで降りてくる。
「久しぶりだな」
「お久しぶりです」
私と知念社長は各々の挨拶をする。
「実は君に話がある。場所を変えたいのだが、いいだろうか?」
折り入った話らしい。
私は断る理由も無い為、了承し、ビルを出てから左隣の駐車場に移動して、社用車に乗り込んだ。
車が出てから、20分ほどで目的地に着いた。
施設に入るとプライベートシアターだった。
黒の合成皮革のリクライニングチェアが2つ配置されていて、前方には100インチのスクリーンが存在感を示していた。
「えっと、普通はデート用ですよね。ここって」
関係者に秘密裏に話をしたいとは分かっていたが、さすがに顔を引きつらせる。
彼女は特に気にする様子も無く、
「雅玖にも伏せたい話だったのでな」
傍からどう見られようが、どうでもいいように答える。
私はスクリーンの右にある冷蔵庫から飲み物を2人分出して、適当な映画を流す事にした。
2人で横並びに椅子に深く腰をかけた状態で、用件を聞く事にした。
「来月下旬に雅玖が入学する」
「話題になってました。成績はギリギリだったみたいですが、面接でかなり評価されたと」
「徹底的に対策をしたからな、当然だ」
私は苦笑してしまう。
「こうやって映画を……いえ、社長と彼は見て無かったですね。そう言えば」
高校の時、あの子に連れてこられたガックが呆れていた事を思い出した。
「雅玖にはまだまだ、教えないといけない事が沢山あるが、まずは大学が丁度いいだろう」
そして、ふと、あの子の今が気になる。
「そう言えば、良辺さん。今はどうなっていますか?」
私の質問になぜか、ため息をついて、
「あの子なら必太と今も付き合っている」
事前情報のまったく無い返答が聞けた。
「もしかして、高校の時には付き合っていた。と言う事ですか?」
「あの2人は元々、幼なじみだ。その事を隠して、今まで思わせぶりな態度を取っていた。と言えば分かるな?」
私は思わず、呆れてしまう。
「やっぱり、あばずれ女だったか」
思った事が口に出てしまった。
「そうだな。あの時、家に送る最中は常に説教をしていた」
もう一度、ため息をついた。
「まったく、君達を見習って欲しい物だ」
双冶が両手に花な状態でも、一定の評価をしてくれている。
「しかし、あの子に人の事を言えた権利は無いのだがな」
私に顔を向けてから、自嘲した。
「まあ、それは気にしないでください。私達も、彼も、今こうして生きていると言うのが幸せなんですから」
ガックが知念社長に言わなければ、未だに命を狙われ続けている事を考えると、平和そのもの。
「でも、そうですね。わがままを聞いてくれると言うなら、1つ、お願いしてもいいですか?」
「無茶な要求で無い限りは飲もう」
私はささやかな願いを社長に言う。
「お2人はもう、結婚してるじゃないですか。それで、その内に子供を出来ると思いますが、子供が産まれたら、私にも抱かせてください」
私の要求に彼女は驚いた顔をして、
「妙な要求だな。私の後に抱かせるのは構わないが、狙いは何だ?」
当然の質問をする。
私は社長に顔を近づけてから、
「大学の人達から聞いた事なんですが、子供の時、美少女だったらしいじゃないですか」
右側の口角を上げて、悪戯っぽい表情をしてみる。
彼女を少し顔が赤くなりつつ、
「出来れば、両親に無理やりテレビに出されていた時代の事を忘れて頂けるとありがたい」
ここで初めて、いつもとは違う表情を見せた。
私はからかうのをやめて、本音を話す事にした。
「本当は子供も欲しいとは思ってます。でも、彼の子供で、相手が嫌いな女性でなければ、私は満足して終わりにしていいと思ってるんですよ」
社長はまた、ため息をつく。
「そうだな、私達は大人だものな。ただ、仕事上での付き合いは非常に長い物となる。君達が卒業したら、働いてもらう事になる。その時は改めてよろしくしてくれるとありがたい」
これが彼女の答えなのだろう。
私もガックと仲良くしてもらいたいので、今の発言で十分だと思った。
「でも、まずはガックとの協力プレイが先になりそうですね」
在学中に課題を共同でやるついでに、TrulyOwnsの事業を手伝う流れになる予感がした。
「そうだな、在学中も私を助けてくれるとありがたい」
彼女は少しだけ笑みがこぼれ、大事な話と言うのは終わりを告げる。
ここから、特徴の無い映画を見終えてから、知念社長の社用車で、住居へと送ってもらった。
(ガックの安全も確保した事だし、私は私達が幸せになる道を歩めばいいか)
奇妙な関係は今後も続くけど、決して後ろ向きな物ではなく、長い関わりの中で培う未来が広がって行くけど、それはまだ先の話。
今日の話を双冶と雫には、誤解が起きない程度に説明して、今日の件は終わりとなる。
ここからガックが入学してから数日後、私達は久々の再開となり、未来への道を作って行く事になる……。
これで最低限、書きたかった事は終了となります。
色々と設定なり、物語なり進めていましたが、没になったのも多数あります。
住坂雅玖の最終戦の前哨戦に参加し、前日計量で水抜きとなる話がありました。
そこで、ガクが公開ミット打ちする案もありましたが、付き合ってる過程で3,4kg落ちる未来しか見えない為、無しにしたと言う物もあります。




