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クロエの…おともだち?

 

 隼人達の一行にすっかりと馴染んだクロエは、エレナの隣を自分の居場所と定めて先頭を歩いている。

 森に住む様々な鳥たちが、一行の行脚(あんぎゃ)を出迎える様にさえずり耳を楽しませている。

 クロエの肩にとまった(あお)いカケスが、時々その美しい音色を台無しにするかのように耳障りな声をあげた。

 その周りには、その肩の上を次は自分だと言わんばかりに数匹のカケスが枝の上を伝いついてくる。


 隼人、

「クロエ、なんであんなに鳥に(まと)わりつかれているんだ? それにまたギャーギャーうるさい鳥だし」


 森の鳥に詳しいのかジャッファが答える。


「あれは、小鳥や小動物を手懐ける生まれながらの一つのスキルという術を持っているそうだ。此の辺りでは、あのカケスに特に好かれたようだな。もう少し、美しい音色の小鳥ならよかっただろうに」


 見た目には美しい羽色のカケスが競い合うようにクロエの肩にとまりに来る。

 歩くクロエもその事をいっこうに気にしてはいない様だ。

 時々手を伸ばしては、やさしく撫でつけている。


「あの鳥使いの上級者にでもなれば、(ふみ)を持たせて街から街へと運んでくれる者もいるそうだ。なかなか(あなど)れない術の一つさ。いい飯のタネになる」




 旅は進み、とうとう目的のエルフの住まう最も大きな郷へとやってきた。

 (にぎ)やかだった鳥たちもいつの間にかいなくなり、カケスたちも一羽減りまた一羽とどこかへと飛び去って(しま)っていた。


 周囲には郷を囲む冊はないモノの、人の気配もなく静かなものだ。


 隼人、

(静かなもんだな)

 イージー、

(そうでもないようです。いまお迎えが来ます)


 隠れていたのか、近くの茂みを揺らすと一人の男が立ち上がる。更に木の上からも男達が飛び降りてきた。

 一行が近づくと弓と剣で武装したエルフの男達が、近づくのを気取(けど)らせもせずに次々と現れた。

 一瞬の内に隼人達は取り囲まれる。


 ジャッファ、

「ほう! さすが森の精霊と言われるエルフだな。隠匿(いんとく)()けて、近づくのを気取らせなかった。音はおろかその気配さえ消している。」


 隼人、

(いや、今そこ感心している場合じゃないだろ! どう見ても歓迎されていないんだよ)


 エルが、武装した集団に()おされることなく、大声で取次を申し出た。


「私は、大森林に接する人族の街の族長! エルモ.コートジオールという者。大森林を束ねるエルフの大族長ハイデルエス殿にお目通り願いたい。どうかお取次ぎをねがいたい!」


 更にエレナが、集団のリーダーと思しき男に向かって、


「族長ハイデルエスの孫娘エレナ。あなた方、この私、よもや顔を忘れているわけではないでしょう。此の者たちは、私の客人。いわば族長の客人でもあるのですよ。その武器は何事です!? 武器を下ろし下がりなさい! このような態度許しませんよ」


 おっとりとしたエレナが怒っている。

 いつもののんびりとした言葉使いと違い、上位者の(りん)とした態度で男達を見回す。


 男の一人が、剣を下ろすと口を開く。


「もちろん、エレナ様を知らぬ者などこの郷にはおりませぬ。しかしハイデルエス様の第二王子グリーンディア様は、人族との交流には意義を唱える者たちの筆頭にて、我らもその一派でありますれば、此処を通すわけには参らぬのです」


「ローデン王国の現王ゲオルクとの交流を目指し進めるエレナ様の連れてきた人族をこの郷に入れる訳にはいかないのです」


 隼人、

(おろっ! 雲行きがおかしくないか? 大森林のエルフは、温厚で友好的な種族と聞いていたのに)


 イージー、

(そうですね。情報不足です。何処の国でもトップとの考えに異を唱える者はいます。此処も必ずしも一枚岩とはならなかったようです。残念ながら最初に遭遇した者たちが、人族との交流反対派だったとは、ツイていないようです。今度、此方の神様にでもお(はら)いでも受けてみますか。予約するO~K~ィ?)


(…いや…そう言うの、もういいからイージー…………一応、OK…)


 男は、再度剣を抜くと控える者たちに声をかける


「エレナ様はグリーンディア様への真意をお伝えさせるべく御連れしろ」


「その人族は、グリーンディア様の沙汰(さた)があるまで拘束する。捕らえよ!」


(やはり、こうなるんだね。)

 やはりかと、ジャッファが剣を抜き、隼人はその手にグロッグを出現させた。


「やめなさい!」


 叫ぶエレナの声も(むな)しくエレナは掴まり連れ去られていく。

 エルがジャッファの前へと立ち(ふさ)がると、手で制した。


「待て! 此処で事を荒立てるな。 我らは、エルフ族と交流を目的にここまできたんだ。剣を治めろ。エレナさんの叔父上(おじうえ)というグリーンディアと言う男と話をしよう。様子を見るのだ」


 隼人も魔法の力を得ようと此処まで、はるばる大森林の奥地までやってきたのだ、事を荒立てるのは真意ではない。


 しかし、相手の言いなりに束縛されてしまうのはいい気がしない。


 イージー、

(隼人への手枷(てかせ)足枷(あしかせ)はまるで意味がありません。わたしの収納で瞬時に(かせ)を収納して自由にすることが出来ます。ジャッファにしても、抜けだす手立てなどいくらでもあるでしょう。エルモの言う通り様子を見ることが上策と判断します。 族長ハイデルエスの真意を確かめるのです)


 隼人達男三人に、木でできた(かせ)がはめられた。


 いつの間にか、舞い戻ってきたのか近くの木に停まっていたカケスがギャーと鳴く。隼人たちの行く末を案じるかのように。


「お前たちを、グリーンディア様に引き合わせてやる。お忙しい方だ。明日になろう。それまでは我らの官舎で待ってもらう」


「付いて来い」


 隼人は、やっと一人足りない事に気が付いた。

(ありょ!? クロエ、どこ行った。あいついつの間にかフケやがった)


 イージー、

(クロエは、エルフ族が近づくのを察して先に我らから離れて、此のやり取りを観察しているようです)

 隼人、

(カーッ あいつ要領いいな~。見習いたいもんだ。ちくしょ~)




 其の頃、エルフたちの感知も届かない離れた(やぶ)の中にクロエは潜んでいた。


 隠匿(いんとく)の特異なエルフたちと言えど、森の鳥たちの気配察知には捕らえられていた。

 いち早く気が付いたカケスが、大好きなクロエへと忠告の声をあげた。

 カケスの不穏な気配を感じ取り、いち早く様子を見るために一行を離れたクロエであった。

 意識を集中し、隼人たちの近くにとまるカケスと意思を繋ぐ。


(…………鳥さん…私におまえの眼を貸しておくれ……お前の耳を貸しておくれ…………)


 気持ちを集中すると木の枝にとまるカケスから見た隼人達が見えてきた。

 連れ去る男の声も聞こえてくる。

 その場所に、クロエ自身が(たたず)んでいるかのように映像が音が伝わってくる。


(たいへん! 伯爵様が掴まってしまう。エルフは友好的な民でなかったの?)


(エルモ様は、しばらく様子を見るようね。話がこじれる様ならば、私の助けを当てにしていなさるに違いない。此処は、わたしが頑張るところ。中の様子も探らなくては)


「キキッ!」


 クロエの懐から、可愛らしい小さな頭が覗いた。

 イタチの喉の辺りをくすぐると目を細めてもっと撫でろと催促する。


(ふふふっ 可愛い奴、ご褒美が欲しいなら少し手伝ってちょうだい)


 バサバサと近くの小枝にカケスが舞い戻ってくる。

「ギャー」 「キッ!」


「こらっ! おまえたち、けんかをしない」


 クロエは、小さな紙切れをカケスの足に結ぶと空に解き放った。

 その仲間のカケスの群れも其の一羽に附いて飛び去っていく。


(イザークお館様に、その文届けておくれ)


(さあ、おまえもお行き。エルモ様の近くで見守っておくれ)


 小さく声をかけると、喜々としてイタチは木の葉に隠れるように姿を消した。


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