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隼人…森の民に出会う (挿絵)

       挿絵(By みてみん)




隼人達は、道なき道を進む。

しかし、エルフのエレナにとってはあるべき道を進んでいる。


人間たちには、見分けのつかない精霊の宿る木々が雑然として、道など(かん)(ぼく)に閉ざされているとしか見えなかった所が、エレナが近づいて行くと左右に動き出し道を作っていく。樹海が割れる様に、歩くスピードに合わせる様に開けていく。その不思議で延々と続く光景もさすがに隼人も慣れてきた所だった。


「えーと……エル…あんたも、結局ついてきたんだな?」


「ああ 呼び捨てで構わないぞ、隼人。嫁に貰うためには、里長に挨拶しておかないとな」


コートジオール辺境伯ことエルモが、本気とも冗談ともつかない事を真顔で返した。隼人もしげしげとエルを見る。


(本当に、この軽い男がコートジオール辺境伯なのか、貴族のイメージが丸つぶれだな)



「ピュッ!」話をする二人の間を矢が通り抜けた。


「ピュッ ピュッ!」前を歩くエレナを避け、風の精霊たちが守る、通り抜けてきた矢は三人を襲う。エルが、手刀で叩き落とし、更に、一つを掴み取る。


「敵襲だ!前の藪からだぞ! 気を付けろ」


(やぶ)が開くと、五人ほどの男たちが姿を現した。隼人が、毛皮を着ていると思ったのは全くの間違いで、全身は短い毛でおおわれ、手は弓や山鉈を持ち、人と変わらず、二本の足で立って居る。しかし、顔はまるっきりの犬のようだった。口先は、喋るたびにとがった歯を覗かせる。


「エルフ、なぜ人間どもを大森林の奥へと導く? 我らコボルトにとっては厄災。通すわけにはいかない」


エレナが答える。「この者たちは、我らの客人。お前たち獣族に従う義理ではない。道を開けなさい」


獣族の男達が、弓を構える。隼人がグロッグを出現させ、ジャッファが剣を抜き答える。


「邪魔をするなら、押しとおるまで、命を捨ててかかってこい!」


戦闘へと誘う緊張感が辺りを支配する。睨みあう双方の間へとエルが両手をあげて分け入ってきた。


「まあ、待て待て! 待ってくれ。俺たちは、戦いにやってきた訳ではない。双方、剣と弓を引いてくれ! 頼むよ。話をさせてくれ。利のある話をしようじゃないか? 俺には、それが出来る。俺は人族の街を守る族長だ。」


コボルトの山鉈を構える男が声をあげる。「ほう、人族の族長ともある男が、守りの者も連れずにこの大森林へとやってきたというのか? 先ずはお前を殺して人間に殺された者たちの恨みを晴らしてもいいのだぞ。」


山鉈を突き付けるそれに、怯みもせずにエルは無手で歩み寄る。


「それもいいかもしれんが、俺を殺しても沢山の兵たちが押し寄せてお前たち部族を根絶やしにしかねない。お互いに、言葉の通じない食い違いがあったことは確かだ。言葉が通じなければ、お互いを恐れ自分の身を守るために先に手を出しあい、殺しあう。」


「今は、精霊が言葉を通じ合わせてくれているのか?」


男がウムと首を振る。


「こうやって、話をすれば理性のある亜人だということが分かる。我ら人族に、ふれを出そう。此れからは。お前たちコボルト族を狩りの対象にするようなことはしない。今後此方から戦いを望むことはないとしよう。」


「今まで、大森林に分け入った冒険者たちが、悪さをしていたなら、改めさせよう。お互いに無駄な戦いは避けようではないか。」


「俺たちを通し、街へと戻し。この話を進めるならば、今までの様な争い事は、なくなるかもしれぬ。此処で、俺たちと争うなら今までどおり、数に勝る人族に追い立てられ、お前たちに安住の地は無くなるのだぞ。お前たちの子供、子孫の安心して住めるようにしようと思わないか? どうだ」


獣族の男が山鉈を腰に戻す。「口先だけでは、信用成らぬ。人族と交流して我らに利のある事を証明せよ」


「ならば、今お前たちの困っている事を言ってみてくれ。力になれるかもしれん」


ジャッファが、何を言い出すんだと目を向ける。隼人も、この軽口の伯爵の話の進め方が自分たちに災いの様な気がして落ち着かない。


「我らの村は、沼地の畔にある。魚や、貝、水鳥、水草と食量には事欠かない豊かな場所なんだが、矢毒ガエルが増えすぎている。水辺に近づく女や子供が何人も飲み込まれている。…………それを…………退治してみせろ。話は其れからだ。」


エルが、ジャッファを見る、


「どうだ? 矢毒ガエルとは? なんとか成りそうか?」


「ああ 矢毒ガエルは、人ほどのデカい蛙だ。舌を伸ばし巻き付けて絡めとって動くものなら何でも食べる。内臓に毒の袋を持っている。弓矢に塗り付けて毒矢の材料にもなる。」


「その肉は、意外とうまくてプラディアの街でも売られているぞ」


「エル! その仕事引き受けてもいいぞ。 肉も毒袋も、そいつらにクレてやれ。ただ…………その胃袋は、すべて俺が(もら)う。それだけが条件だ。悪くないだろう」


「どうだ?」エルが獣族の男に問う。


「そうか! やってくれるか。その上に肉もいらぬと言うのか。人族よ、その腕前を見せて貰おうか。」


男達のそれまでの剣呑としていた空気が、がらりと変わった。よほど、そのカエルの事が村での困り事になっていたのだろう。こうして、エルの口八寸に乗せられて、カエル退治という変わった厄介事をする羽目になってしまった。





空は青く澄み渡り、沼地を渡ってくる風は汗を掻いた体に心地よい。

しかし、牛でも飼っているのかと思うような声が辺り一面に響いている。

隼人達は、コボルト族の男達に連れられて問題の沼に来ていた。


「ゲコッ ゲコッ ブオーオ ブオーオ ブオーオ」


「おーい!」


「ゲコッ ゲコッ ゲコッ ブオーオ」


「おーい! 隼人助けてくれ!」


隼人が呼びかけに振り返ると、エルがカエルの口から顔だけ出して、飲み込まれている。沼地に着いた途端に、はやるエルモが剣を抜くと、


「よし! 俺に付いて来い!」


そう言うないなや、岸辺に並ぶ大型のカエル目掛けて駆けだしていた。飛び出す舌を掻い潜り、見事に一匹を切り殺したまでは良かった。一匹に集中したために、後ろからの攻撃が(おろそ)かになり、絡めとられてしまっていた。

エルモを飲み込んでいるカエル。

隼人は、動きの遅くなったカエルに飛びつくと其の頭にナイフを突き立てた。


「いや、すまんな。気が付いたらあの長い舌に絡み取られていた」唾液塗れでその口から這い出して来る。


「うわ、ひりひりする」そう言いながら沼に飛び込んだ。



土気色の体に赤い腹。カエルの動きは、その緞帳(どんちょう)そうな見た目に合わずにすばしこい。なにより、その長い舌は一瞬で長く伸びて獲物に吸い付くと絡めとって口へと運んでしまう。獰猛な食性なのか、小さいカエルさえ餌食にされてしまい大型のカエルと離れて水の中にと潜んでいる。大型のモノは、より大きな餌を求めて、水辺へと集まってくる動物や獣人を食おうと岸辺へと集まっていた。


獣人族の男が声をあげる。「あのデカい奴が厄介なんだ。人間でも獣人でも絡めとって喰いたがる」

「ぴゅっ!」 そう言いながら弓を引く。

「パシッ!」そのカエルを狙った矢は、刺さるかと思われた瞬間に、鞭のように飛び出した舌によって弾き落とされた。


「ごらんの通りよ。弓矢も使えねえ。うかつに近づいて槍で突こうと思ってもあの長い舌で絡み取られてしまう」


それを聞いたジャッファが剣を抜く。猛然とダッシュする。目にもとまらぬ長い舌が飛んで来る。


「パシュッ!」一瞬、早くそれを切り飛ばした。


「バッシャーン!」(かな)わぬと思ったのか、素早く沼へと飛び込んで逃げていってしまった。


「くそっ!」水の中を悠然と逃げるカエルには、ジヤッファも手が出せない様だ。


「ウン、こういう時こそ、グロッグの出番だな」


またしばらくするとカエルたちが岸へと這い上がってきた。水辺までは、約50メートルほどと距離がある。難しい遠距離もイージーの補正に任せる。


「パンッ! パンッ!」見事にカエルの頭に二発の穴が開きその脳症をまき散らした。しかし、銃声に驚いたのか他のカエルたちは、一斉に沼に飛び込む。

隼人も、後を追い岸辺から水中へと銃弾をまき散らすが、全く水中では弾丸は届かない。


辺りに静寂が戻ってきた。目だけを水面に覗かせて此方を伺っているのが見える。

「魔物のくせに、逃げるのか。向かってこないと中々厄介だな」


ジャッファは、岸に立ち沼を眺めた。隼人が手を上げる。


「さっきのは、良かったんじゃないか? 伯爵様が飲み込まれ、動きの止まった所を退治する」


「これで、イインジャネ?」


エルモが顔をしかめる。「イヤイヤ、私は領民十万の領地の主、私にもしもの事があれば困るのだ」


「コートジオール辺境伯として命令しよう! 隼人くん、君行きなさい……」


「…イヤイヤ、俺…領民じゃないし。あんたの家臣じゃ無いから遠慮します」


ジャッファ、「此れだから、貴族様は……俺も領民辞めてるから」


「………………」


三人の間に気まずい沈黙が流れる。

気安く魔物の討伐を受けたはいいが、策がなかなか見つからないでいた。


ジャッファ、「やはり、おびき寄せるには、餌が必要だな……」


隼人、「…………ダナッ!…ダナッ!」


ジャッファが、一瞬でアラクネの糸を出すとエルに巻き付けた。


「ななな……何をする!」


「いや、討伐の言い出しっぺだし、役に立とうよ伯爵さま」


「いずれ、領民となるかもしれぬ獣族の為だし……」


グルグル巻きにすると二人でエルを担いだ。

丁度岸沿いに突き出す様に高い木が立って居る


「皆の衆、手伝ってくれ!」


木の上に吊るされるエル。其の端のアラクネの糸を皆で引く。


「貴様ら! 私が、プラディアの領主という事を忘れてはいまいか?」


「しーっ 静かに! カエルが寄ってくるまでの辛抱だから」


隼人が口に手を添える。エルは、小声でブツブツと言いながらも観念した様だ。



水面にさざ波が立つ。すると、エルに向かって水中から長い舌が伸びてきた。

そして、


「ビタン!」吸い付いて、クルリと絡まる。


「おーし!今だ、皆の衆、引け~」ジャッファが声をかけた。


エルが更に高く吊り上げられる。同時に釣られて、カエルも陸地に吊り上げられてきた。折角、捕らえた獲物とでも思っているのか、絡めた舌を放そうともしない。


ジャッファは飛び出すと剣を振るった。上手くいった。更にその後、もう一匹。しかし、舌に巻きつかれて騒ぐエルと吊り上げられて、頭を割られる仲間の様を見て、寄り付かなくなってしまった。


エルが、木の上から降ろされてくる。


「くそ! 領主をカエルの餌に使うなど何て奴らだ。暑い! 水だ、水をくれ」


隼人は、収納からコップに注いだ水を差し出した。暑い日差しの中、よほど喉が渇いたのかむさぼるようにして口にする。


「ほっ つっ!冷たい。氷が入っているのか?」


イージー、(隼人、サービスしておきました。砕いた氷を入れてあります。春先のプラディアへの山下りの際に隼人が歩くのに邪魔だとして大量の雪が収納にあります。凝縮して氷にしてみました)


エルは、頬に汗を流しながら、旨そうに飲み干す。

コップの氷を見ながら隼人は、カエル退治の一つの策を思いついた。


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