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エルフの里

 深い森を進む。

 途中で道が途絶え、激流が行く先を塞ぐ。

 ソルが、どうするのだろうとエレナを見ていると。

 川岸に立つ、枯れかけた大木に話しかけた。


「お願い!トレント。私たちを向こう岸に渡してちょうだい」


 エレナが木の幹に手を添えると僅かに緑が戻り木の枝先に緑の新芽を付けだした。

 太い木の根が土を割って盛り上がる。

 全ての木の根が地表へ出ると、ゆっくりと川縁へと近づいて行く。

 大きな枝が対岸へと伸びていく。

 見る間に、アーチ状の木の枝の橋が出来上がった。


「ありがとう。私の可愛い精霊たちよ」


 エレナが被っていた帽子を脱ぐとそこには栗色の髪の間から長い耳が現れた。


「「エルフ!」」


「おぬし! エルフだったのか?」


「そうヨ、仲よくしてね。ドワーフさん!」


 小春は、始めて見るエルフにドキドキする。


「今の魔法は、精霊魔法? すごい、すごいよ。森の木がお友達なの?」


「トレントの精霊を此の枯れ木に呼び寄せたわ。魔物になってしまったけれど又、新しい命で生き返ることが出来た」


「川を渡る森の生き物を渡してあげてね。トレント」


 エレナが、声を掛けると古い枯葉が答える様に辺り一面に舞い上がった。

 道すがら、話を聞くと大森林のエルフの大部族から分かれて、若いエルフ20人ほどで人間族の王都にほど近い森に交易を持とうと移り住んだという事だった。


 部族から、持ち出した果物の種が実を結びやっと木の実がなりだした。

 村で豊作に実った果物を王都で売って換金してみようとの話が持ち上がり、その先兵としてエレナがその果物を売りに来たというのだった。


 しかし、只でさえ遠い日にちの掛かる王都、気を抜いたエレナによって物は傷んでしまい、皆の期待を台無しにしてしまい村への足取りも重い。


 三日ほどの森の道を辿り着いてみると、村に入る前から異様な空気に包まれていた。

 村へと続く道の両脇に広がる果樹園は食い散らされて、果物の欠片や小さな足跡で踏み荒らされている。

 村人たちが、片付けに追われている。


「エリオン! どうしたの。ひどい荒らされよう」


「エレナ、早かったじゃないか。ああ、夜にゴブリンの群れに果樹園がやられたんだ。人への被害はなかったんだが、収穫の桃を少しやられた。味を占めて又来るかもしれない」


「エレナ,其の人たちは?」


 ガルフが、応える。


「エリオン殿と申されるか、儂らは、此処の果物にほれ込み、エレナ殿の申し出もあったものだから、王都までの運搬を引き受けることになったのだが、何やら面倒が起こっている様子」


「ああ、この農園にゴブリン共が目を付けたらしいんだ。まだ被害は少ないが、俺たちエルフは同じ森の種族、ゴブリンと言えども戦いたくないと言う者ばかりだ。黙って見ている訳にもいかず、どうしたモノか」


 今までは,山一つ越えた川の上流の森に棲んでいたゴブリンがなぜか最近エルフの里の近くに現れるようになったというのだ。


「ガルちゃん!ここは乗りかかった船というんだよ。その果樹園を荒らすゴブリンも討伐して果物いっぱい貰おうよ」


(うむ。此処は酒作りの地縁になるやもしれぬ。この里に恩を売っておいても良い機会)


「わかり申した。そのゴブリン討伐儂らに任せていただこう」


 小春たちは、話の成り行きでゴブリンの討伐を請け負うこととなった。


 その夜、畑に近い小屋に泊まり込んで交代で見張る。

 もちろん、小春はエレナのベッドに潜り込んで鼾をたてて寝ているので三人で交代の見張りとなる。


 ウルとソルは、夜も更けきった頃に奇妙な鳴き声を聴いた。


「チン」


 ウルが鎧を身に付ける。


「ソル、見回りに行ってくるよ。何かあったら、信号弾と魔法陣のライトボールを打ち上げるから」


 ウルは、マーマリアの作った信号弾を腰に付けると行ってしまった。

 僅かな物音がして以来、静かな夜が更けていく。

 見回りに出たウルも、なかなか帰ってこない。

 そのうちに、ガルフが起きだしてきた。


「ウル殿は、どうしたのか?」


「奇妙な鳴き声がしたのでウルが、見に行っています」


「うーむ、見回りは一人ではまずいの~。ソル殿一緒に探しにいこうかの」



 其の頃、ウルは村はずれの果樹園で桃ノ木に登り食い散らかしているゴブリン三匹を見つけた。


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