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殲滅…ジョニアスの罠 (挿絵)

 

 ジョニアスは思案する。


「一度に20人の兵を相手にするのはリスクが大きすぎる。幸いに幾つかのグーループに分かれて行動をしているようだ。まず行動範囲を調べて、巡回ごとのグループを罠に嵌める。奴らのグループ事の行動パターンをまず調べよう」


「アーニャ!」


 ジョニアスは、森に詳しいアーニャにまず村から出発していく4人グループの追跡を任せた。

 (しばら)くすると、別の5人グループが帰ってくると、それとは別のグループが代わりに見回りへと出かける様だ。


「隼人、行け。見つかるなよ」


 隼人が手で合図をすると森に溶け込むように消えていく。

 一時間ほどすると先ほどのグループとアーニャが帰ってきた。


 更に、イノシシを担いだ5人組の男達も現れた。


「なるほど、約20人ほどの所帯の行動がだいたい(つか)めてきたな」


「5人一組のグループが常に二組巡回に周っているようだ。一組は食料調達の狩に出かけて、最後の一組はこの村で休息をとる。それを交互にローテーションを組んでいるようだ」


 隼人も帰ってくる。


「ジョニーさん、かなり大掛かりな転移陣です。一周約一時間は掛かりました。獣に荒らされたり、雨で流れた後で消えかかっている魔法陣を魔石で修復しながら歩いているようです。ただ、地球側の排出の魔法陣が壊れているせいか動いているようには見えませんでした」


「一つのグループが出発したら、それに付いて行って、村から最も離れた場所に罠を張り、次に回ってくる奴らを叩く。罠を設置する時間は、長くても10分だ。明日の第一陣から作戦開始だ」


 その日は、村から離れたところに焚火も炊かずに野宿した。リタが、摘んでいた水草の新芽をポリポリとかじる。アーニャも新芽をポリポリとかじる。

 ジョニアスは、何処から出したのか隼人とビーフジャーキーを噛みちぎっていた。


「!!」

「にゃむにゃむにゃ」

(ネコかよ)


 ジョニアスが、大きめのジャーキーをアーニャに分けると言葉にならない声を発しながらしゃぶりだした。リタも横目で睨みながら手を差し出してきたので、隼人も其れを黙って手渡した。




 開けて翌日、狩りの集団を見送る。村から巡回の兵士たちが出発すると、隼人たちも間を置いて見つからないように後に続いた。

 しばらく行くとアーニャがジョニアスの袖を引っ張る。


「此の辺りが村から遠いの」


 周りは鬱蒼とした藪に囲まれ、隠れて待ち伏せるにはもってこいの場所に見える。木々に挟まれた小道も2メートルほどの幅でしかない。

 リタがジョニアスに問いかける。


「あたい、土魔法が得意なんだ。道の真ん中に落とし穴なんてどうだい?」


「落とし穴か…………時間はないぞ。出来るか?」


 リタが永い呪文を唱え始めた。

 重機でもなければ、持ち上がらないほどの大量の土の塊。

 道の中ほどから土くれが渦を巻いて浮かび上がってくると、その周りに山となって盛り上がった。あっという間に3メートルほどの縦穴が深みを覗かせる。


「ほうっ 魔法か? すごいもんだな」


 ジョニアスも、実践的な魔法を事もなく使う少女に驚いた様だ。


「隼人!」


 隼人は、左目に浮かび上がった土塊を赤い線でマークするとイージーに命令する。穴から掘り起こした土塊が跡形もなく消え失せる。


「!!」


「隼人! あんたもすごいじゃない。土の塊どこ行っちゃったの」

 リタが目を見張った。


「魔法使いです」(ちがうけどね。イージーさんのおかげです)


「アーニャは急いでたくさんの枯葉を集めるんだ。隼人が盾で蓋をするからその上に偽装でばらまいてくれ」


 ジョニアスの指示が飛ぶ。

 ジョニアスは、落とし穴が失敗した時の為に,指向性のある爆薬クレイモアM18を2個仕掛ける。音のする爆弾は使いたくはないが保険は掛けておく。


「時間だ!枯葉の偽装をいそげよ」


 伸びるコードも丁寧に隠して潜む藪へと伸ばしていく。隼人たちは、息をひそめて近くの茂みに身を潜めた。隼人は、グロッグを手に。

 ジョニアスは左手に起爆スイッチ、そしてコルトバイソンのホルダーの留め具を外す。

 息をのむ時間。


「ポトリ」


 目の前に、木の上に上ったアーニャが「来たよ」と合図の小枝を落とす。

 男達がやってきた。

 5人組が、二人先頭に続いて二人、最後を見守るように一人の順で歩いてくる。

 二人が、盾の上に乗った。

 その時、僅かな風が吹き偽装の枯葉が散らばる。太陽の光がわずかに反射した。


「待て! 動くな」


 僅かな異変に気が付いたのか、最後の男が剣の鞘で枯葉をとばした。

(ちっ 気づかれたか?)


 隼人の軽い舌打ち。盾の魔法をすかさず解除。


「うわっ」


 足元を無くした二人が枯葉と共に深い穴へと落ちていく。


「罠だ! 気を付けろ」


           挿絵(By みてみん)


 その時、「ヤアアア————ッ」


 高い木から伸びる蔦にぶら下がったアーニャが落とし穴の淵に立つ男たちにまるでターザンのように向っていく。一人を蹴り飛ばすと蔦を放して落とし穴を飛び越える。


「オワッ」


 バランスを崩した三人はもつれる様に穴へと落ちていった。ジョニアス達は急いで穴の淵に集まってくる。穴の底から、男たちが怒り心頭喚(わめ)く。


「貴様ら! 何者だ! 只では…ウッ……ズモモモモモ」


 隼人は、兵士たちが何か言いきらない内に収納に入れた大量の土をその上から被せてしまった。落とし穴は綺麗に塞がり、少しこんもりとした盛り上がりを見せる。リタがわずかな詠唱をすると又元の小道が出来上がった。


「…………」


 アーニャは、黙って集めてきた枯葉をパラパラとその上に撒いた。


「よし! 次」


 アーニャが盛り上がった土を固める様に手で叩く。

 罠というには、あまりにも原始的な単純な落とし穴の罠。

 毎回、同じように通る小道に何の疑いもない。

 巡回というルーチンワークの中で警備をしていた兵士たちにとっては、この単純すぎる罠こそが最も効果的な罠になったのかもしれない。第二陣のグループは、何の迷いもなく隼人の魔法の盾の上に乗り、素直に土に埋まってくれた。


「さて、村にいる連中をどうやっておびき出すか?」


「あたいが、おとりになって引き離そうか?」


 ジョニアスが、リタを頭の上から足元まで眺める。


「なっなんだよっ。あたいじゃダメだって言うのかよ」


 リタが少し顔を赤らめる。


「いいや、その逆だ。みんな釣られて出てくるんじゃないか。ふっふふ」


「やってみよう。隼人とアーニャは、リタを追ってきた奴を始末しろ。俺は残った奴らをやる」


 アーニャは、武器を取ってくると言うと隠れる様に村へと姿を消した。


 リタは、裾を巻くって縛るとミニスカートのようにたくし上げる。

 隼人も思わず目が釘付けになる。


「どうだい。これなら男どもの目を引くだろ」


 そう言って、クルリと見せびらかす様に一回りする。


「おっおう…」


「隼人、男どもにあたいの体指一本触れさせるなよ」


 リタは、すこし顔を赤らめて隼人に命令する。


「ああ、任せろ。絶対お前は俺が守る。安心しろ」


(はっ! しまった何俺言ってんだ)


 アーニャが、吹き矢を携えて帰ってきた。木の上から隠れて毒矢で狙うという。

 隼人も近くの茂みに陣取った。


 リタが、数件並んだテントの一つに石を投げる。


「…………」


 続けて、どんどん投げつけた。


「だれだ!」


 男が顔を覗かせると、ミニスカートのリタと眼が合った。

 わざとらしく「キャッ」と大声を発すると隼人たちの潜む小道へと駆けだした。


「おい! 女だ! 飛び切りの上玉が居やがったぞ。捕まえるぞ」


 薄手の服で寝ていたのか、上着だけ引っ掛けて下のズボンも履かずに男が飛び出していく。続いてもう一人男が続く。


「こらあー! まちやがれ」


 男達は、リタの尻を追うように無我夢中で追いかけて行く。その姿には欲情に目がかすみ罠との思いは一片も浮かんでいないらしい。小道の木の下を二人が走り過ぎる。二人目が通り過ぎる瞬間、アーニャは両足をくるりと枝に引っ掛けて逆さまになると、後ろから男の首筋へと毒矢を噴きつけた。


「うっ! くそ! 毒虫に刺された」


 只の吹き矢ではない,矢毒ガエルの猛毒を天日に干して毒性を高めた猛毒だ。

 男の視界がぐるりと回転する、そして白目をむいてつまずく様に転がる。

 男の目、口,鼻と血が噴き出すとひきつった様に痙攣を繰り返す。

 後ろの男の惨状など気づきもしないで、男はリタに追い縋ろうとすると隼人がその間に立ち塞がる様に割って入った。


「俺の女に何の用だ!」


 隼人は大声で怒鳴る。一瞬の恫喝は、相手を委縮させ判断を狂わせる。

 しかし突然現れた隼人に驚いたものの、相手が若造と知ると兵士の顔に余裕が戻った。


「フン!ガキが脅かしやがって。おいその女を置いて消え失せろ。命は助けてやる」


 腰のナイフを取り出した。

 リタは、不安そうに隼人の後ろに隠れる。


「大丈夫だ! 俺を信じろ!」

(此処は、男の頑張りどころだよ。ビビった所は見せられないさ)


 隼人は振り向くと笑顔をつくり、リタの眼を見て言い放った。



「女にいい所を見せたいところだが、死んでしまっては何にもならないぜ.坊主、おめえは此処で死ぬんだな」


 男がナイフを舐めながら挑発してくる。相手の動揺を誘い、少しでも動きを抑えようとしてくる。


(ナイフ使いなのか? ナイフ使いを習得して格闘のレベリングを上げておくか)


 グロッグにチェックを入れそうになったのを取りやめ、腰のサバイバルナイフを引き剝いた。


 思考の高速化と共に、相手の繰り出す攻撃が空気の動き.筋肉の動き.足の運びなどから事前に予測されシュミレーションの動きが先に映像化される。

 其れを追いかける様に実際の攻撃の動きがシュミレーションに追従して動いてくる。


 隼人は、先に予測された動きに合わせて動き出し、実際の攻撃に余裕で、カウ

 ンターを合わせる。


 男は、隼人の前で刃先をクルクルと回し、目標を定めさせないようにする。

 さらに一瞬、左手を上げたかと思うと相手に上へのフェイントをいれて腰を屈めて太腿を突いてきた。


「コン!」


 隼人は、フェイントに惑わされることなく余裕で、片足を上げると脛に取りつけた、ドライカーボンのレッグガードでこれを受ける。

 同時に、目の前にたたらを踏んだ男の後頭部に思いきり、サバイバルナイフのグリップ部を叩き込んだ。

 よろめき、頭を下げる男の顔に曲げた膝から突き出たレッグガードの先端を突きたてる。口元から、血だらけの歯をまき散らしてよろめき乍らも後ろへと間合いを取った。男も軽く見た隼人が、ただ物ではない事に今更ながら気が付いた様だ。


 高速思考と共に、隼人の全身に巡り渡る魔力を取り込んだファージの作用で異世界へ来てからの隼人は、超人的なスピードを身に付けていた。高速の思考に応えるかのように体が動く。


 更に子供の頃から鍛錬してきた武術の動きが無駄なく滑らかな体の動きを助けていた。例え(シュミレーション)の映像が無くてもナイフを突き立てられる寸前から躱して攻撃に転ずることも容易かった。


「くそ! ガキが猫被って居やがったな」


 男は毒づく。


(足りない。まるで剣技の技が足りない。技術の底上げというには、あまりにも足りていないな。勢いだけの男だ)


 隼人も相手の技術の低さに落胆すると気持ちを切り替えた。


(……殺害か……この手で人を殺す。自分に足りない胆力が、迷ったら殺されるこの世界の常識、今俺はこの世界に試されているのか?…………)


 隼人の背後に沸き立つオーラに、対する男は目を見張ったが次の瞬間には

「トン」という胸に衝撃と共に傍らに立つ隼人に気が付いた。


 突き立てたサバイバルナイフをえぐり込むように回すと胸に向けて切り裂く様に引き抜いた。男の顔が信じられない物を見る様に口を開いてパクパクと動く。

 生き埋めにしてやった男達にも殺害という概念は湧いたが、今、目の前の男からはナイフを通じて生きている肉の鼓動が伝わってきた。

 引き抜いた腹からは血液と共に見たくもない人間の一部が溢れ出す。隼人が、初めて殺害を意識した男はゆっくりと仰向けに倒れていった。


 隼人の気持ちが分かったのか、リタが隼人の隣に並ぶと。


「此奴らは、森の住人を何人も殺している極悪人さ。兵隊は、死ぬのも覚悟で兵隊をやっているんだ。死んでいくのも此奴らの仕事なんだろうよ。あんたは約束通りあたいを守ってくれた」


「約束を守る男は……好きだよ」


 リタが、隼人の首に腕を回すと強引にキスをした。

 隼人の心は、いろんな感情が渦を巻く。たった今、敵を殺したばかりだというのに、次の瞬間には美しい少女からキスをされた。


 たった今、殺した名もない兵士は、すぐにでも土に還り、無となり消え失せる。

 対し、生き残った隼人は、女神のごとく美しい少女に祝福とも言えるキスを受けた。

 血なまぐさい現場で熱の籠った接吻に混濁する気持ちを振るい落とす様に首をふる。


「フッ此れが異世界! 異世界の洗礼、受け取った」


 隼人も片手には血の滴るナイフ、空いた片手でリタを抱き寄せると、その頬にキスを返した。


「よし! ジョニーさんを応援に行くぞ。殲滅だ」


 始めて感じる胸の高まりに答えるようにナイフを持つ手を高くつき上げた。



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