表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/105

月光に浮かぶジャッファ (挿絵)

  挿絵(By みてみん)




 貧民街を襲った大火事、あれだけの大火にも関わらず捨て置かれて、たくさんのスラムの住人が命を落とし、バラックとはいえ住処を失った。

 明らかに、今度の代官の企みが見えて取れる。


「リタ、お前を攫った奴らの顔を覚えているか?」


 ジャッファは、新任の代官が子飼いにしている子悪党どもから叩いていくことにした。リタが思い返すように話し始めた。


「ここらじゃ、見ない顔の奴らが、留守にしているバラックを壊して火を放った所を見つけてしまったんだ。あたいが大声で騒いだものだから、すぐに掴まっちまって、昏睡させられて気が付いたら、あの部屋に押し込められちまってたよ」


「一人は、大男の大剣を担いだ禿頭、小刀を二本脇に指していた痩せた男もいた。そしてあたいが、逃げた時に魔法を使ってロープを投げて足に絡めて捕まえた魔法使いが一人いたよ。小男でぽっちゃりと太っていた。後そいつらの手下みたいな特徴のない奴らが二人ほど」


「あたいを攫った奴らと前々からスラムで悪さしていた奴らの人相。聞いた処じゃ、同じ奴らで間違いないよ」


 ジャッファも、ギルド組合に出入りしている冒険者の顔は、ほとんど覚えがあるため、普段見かけないようなそんな五人組ならすぐに判るだろうと思った。


「ミランヌさん、プラディアの街へ行ってくる。ミランヌさんの母上にも会って、少しばかりの間の辛抱だから心配ないと伝えてくる」


「このあたりには、危ない獣は捕りつくしていないはずだけど、もしもの時は洞窟でリタの土壁で籠城して隠れていてくれ。六日ほどで戻るから、収納袋も渡しておくよ」


「わかったわ。無理はしないでね。リタちゃんと此の周りでキノコや山菜でも探して探検してみるわ。私もリタちゃんも、少しは魔法が使えるから大丈夫よ。

 安心して出かけてきて」


 ジャッファは、二人を残して心配ではあったがミランヌの笑顔に後押しされるように出発した。


 滝の側まで見送ってくれて別れ際に二人が手を振る。

 ジャッファは、気休めに繋がれたロバの頭をなでる。


(二人を守っていてくれよ)


 小さく話しかけると、軽く二人に手を上げると走り出した。

 今までは、傷ついた時つらい時、あの死にそうになった時も森の中でいつも一人きりだった。

 今は、愛する人が笑顔で手を振ってくれる。無事に帰って来る事を待っていてくれる。

 ジャッファは、どんなにか心強い気持ちで居られることかとミランヌに心の中で感謝の言葉を叫んだ!


 道なき道、獣みちを矢のように走る。力が満ち満ちている。溢れるばかりの魔力の充実を感じる。

 デカい倒木を飛び越え小川は、下がった蔦を掴み、振り子のように勢いをつけて飛び越す。高い崖の上からダイブすると崖下に真っすぐに生えている竹の様な木の天辺を掴む。

 しなりを利用し、地面に近づく瞬間に手を離した。木のしなりで衝撃を抑えて一回転して崖下へ着地する。着地と同時にまた走りだした。


 今のジャッファは、やるべきことに向かって突っ走っている。

 それを、支えてくれる人がいる。心の支えだ。気持ちが、昂り充実していた。



 ジャッファは、数日前脱出した代官の屋敷の西の木戸口を監視出来る所で、身を潜めていた。

 子飼いの悪党どもが、出入りするならここからだろうと当たりを付けて身を潜める。夜もだいぶ更けてから、木戸口が開いて三人が出てきた。だいぶ遠い所から見張っていたため人相は解らない。一人は、背中に剣を背負った大男だ。

 一人が、よろめいた。酒を飲んで出てきたらしい。


 三人の跡を、暗闇に身を潜めながらつける。

 人気のない一本道に出たところで、先回りして道添いの木に登り待ち伏せをする。三人がやってくる。


「ういっく おい先に行っててくれ。用足しだ」


「きったねえ、ちびるなよ」


 ジャッファの潜む木の下で、大男を一人残して二人が去っていく。

 大男は、鼻歌を歌いながら木に向かい用を足しだした。

 用を足しながら、木の上の周りを照らす月を眺める。

 柔らかい木の先端につま先で立つように、人影が月を後ろに従え光の中に浮かんでいる。


「うん~なんだ~? ハッ!」


 ジャッファが、月の光を背に受けて木から飛び降りてくる。

 飛び降りながら、クナイを二本投げつけた。


「キンッ」


 一瞬で酔いを醒ました男が、大剣を抜き去ると一本を弾いた。

 一本は避けきれず肩口に突き刺さる。

 ジャッファは、着地と共に地面を転がりながら大剣で、男の足を払う。

 片足がはじけ飛んだ。


「ウオオオ———!」


 ジャッファの気合が月夜に響き渡る!

 倒れ込んだ男の胸に大剣を突き立てた。

 男は、剣を掴んだまま白目をむいて痙攣を繰り返す。やがて動かなくなった。


「なに奴!」


 争いに気づいたのか、先を歩いていた双剣使いの痩せた男が走り寄ってきた。

 先ほどまで一緒に酒を飲んでいた男は、片足を飛ばされ屍へと変わり果てていた。その前に立つ黒獅子の面をつけた異様な悪魔の様な姿を、月の光が煌々(こうこう)と照らし出している。


「クッ! バケモノか?」


「………………フンッ!」


「シュィン!」


 男は、黙って双剣を抜くと上下に構えた。

 ジャッファも静かに、正眼に剣を構える。

 静かな夜に月の光が、二人を照らし出す。


 後ろの異変にやっと気が付いたのか、魔法使いの太った男が、遠くからゼイゼイと苦しそうに駆けてくる。魔法使いが加わるとジャッファにも分が悪くなるが動かない。応援が近づいた事で、有利とみたか男が一歩踏み出した。


 と、その時ジャッファが鋭く文証を口ずさむ。

 男の足元に落ちていた紙切れの周りの土くれが踏み込んだ足を包み込んでいく。


「なに! 剣の勝負にこざかしい真似を!」


 男が、足元に目を落とした隙にジャッファは、一瞬で飛び込むと片手で剣を伸ばし、男の喉笛を突いた。


「ヒュー ヒュー 」


 ジャッファが剣を抜くと、空気の漏れる音と共に心臓の動きに合わせて、血潮が飛び散る。男は、自分が負けたことが信じられないように目を限界まで見開いて、歩み寄ろうとした所で倒れ込んだ。


 ジャッファが、倒れ込んだ男を見下ろして語り掛ける。


「剣だけで、お前の双剣と勝負してみたかったな。遊んでいられないんで悪いな」


 男は、倒れ込んだまま口から血の泡で「ゴボッゴボッ」となにかを言いたげだったが、ジャッファは、魔法使いの男にもう意識を向けていた。


「テヤッ!」

 細いロープの先についた分銅が、ジャッファを襲う。

 ぎりぎりで交わすと、後ろの木の幹を大きく削り取ってまた魔法使いへと帰っていく。諸刃の剣も飛んできた。大剣で、叩き落とすがロープの張りとは関係なく、自在にジャッファの周りを飛び回る。二つの武器を使い、ジャッファの接近を許さない構えだ。


 ジャッファは、大剣を背に仕舞うとクナイを投げつけた。

 分銅が空中でクナイを弾く。ジャッファが、右手で戻るようなしぐさをするとクナイが、手元へと帰ってきた。月のわずかな光を受けて手元から蜘蛛の糸の様な細い糸の繋がりが見える。

 二つのクナイを,投げると器用に体の周りで回しながら飛んで来る得物を弾く!ジャッファは、男に向かい小さなカプセルを投げつけた。男の直前で、分銅がカプセルを割る。カプセルの中身の液体が男に降りかかった。


「ムッ!」


 ジャッファが、小さな火球を分散して飛ばす。

 火球を、分銅や剣が振り払うが小さな火の粉となって魔法使いに降り注いだ。


「ギャア——!」


 ロープは焼ききれ、男が火だるまになる。

 一気にジャッファは、大上段に飛び込んでいく。


「アチチッ!」 「ズン!」


 火の勢いが強いが構わずに踏み込んだ。

 燃える男が、真二つに分かれて崩れ去った。


「……fuuッ……」


 安堵の息を吐き剣を背中の鞘に納める、その時だった。最も相手にしたくはない男の声が静かに響き渡る。


「まるで、駄目だな。ちっとも成長しちゃいねえ」


 無粋な声が響いた。

 月の光を遮る林の中から、男がボリボリと頭を掻きながら歩いてくる。

 後ろには、小柄な少年の姿が続く。


「なぜ!? 此処に」


 ジャッファが、目を見開く。

 そこには、ソルを連れたガイアスが現れ、殺した男たちを見回している。


「な~に、代官の屋敷に魔人が押し入って金と女を(さら)って行った、と討伐依頼がギルドに出ているんだよ!」


「組合員の俺が討伐の依頼を受けたまでよ! 黒獅子」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ