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異世界放浪記  作者: まほろば
アラキからアブサンまで
32/43

襲撃と冒険者パーティー



「断る」

「たった2人のパーティーじゃ魔物も狩れないぞ。こっちは親切で言ってやってるんだ」

「俺たちもパーティーに入っていてな、勧誘は必要ない。それに、誘っているがお前のパーティーは満員で6人居るだろうが」

「そんなもの、アブサンに着いたら用無しの2人は切り捨てる。それで文句は無いな」

リーダーは強引に言ってきてメンバーもその強引さに苦笑してました。

「俺たちはパーティーに入っている」

「入ってるなら証拠を見せてみろ」

メンバーの空気がガラリと変わりました。

「誘うならギルドカードを見せてみろ」

「お前も出すんだな」

「良いだろう」

メンバーがギルドカードを出すとリーダーは出す振りをしてメンバーのカードを奪いに来ました。

思わず『あっ』と声が出て慌てて両手で口を押さえました。

メンバーは予想していたのかリーダーの手をあっさり避けてカードをしまいました。

「古い手を使うな。今見なくてもギルドに言えばお前の事は直ぐ分かる。馬車の持ち主から誰を警護に頼んだか書類が来てるはずだからな」

リーダーは顔を歪めて身構えました。

「Bランクに喧嘩を売るか、買ってやるから掛かって来い」



メンバーは楽しそうに剣を抜きました。

固まったのはリーダーの方でどう見ても二十歳を少し超したくらいのメンバーが『B』とは信じてない顔でした。

それでも斬り掛かってくる感じは消えてます。

「来ないのか?」

挑発されてもリーダーはメンバーを睨んだまま動かなくて、多分半信半疑?

剣を抜いてからのメンバーの殺気は私にも伝わって来るのでリーダーはもっと感じてるかも。

「見せてやるよ」

メンバーはリーダーから距離を取ってギルドカードを見せていました。

後から見せて貰ったらメンバーはBランク冒険者でした。

「分かったら戻れ」

後退りながら離れていくリーダーが御者の隣に乗るまでメンバーは見ていました。

馬車に戻ってきたメンバーからギルドカードを見たいと言われて2枚とも出しました。

カードを交換したら『B』と目立たない感じで書いてありました。

「商業ギルドと冒険者ギルドの両方に登録してるのか?」

どこまで話そうか迷いながらも登録した理由を話したら納得されました。

互いのギルドカードを戻してから、メンバーなら答えて貰える気がして聞いてみます。

「伯爵が仕事の時はギルドから手紙を書くとか届くとか言ったんですけど…本当?」

「ああ、俺たちも使ってる」

他の4人が王都の何処に宿を取って待ってるとかギルドの通信網を使って連絡し合うらしい。



「…そうなんですか」

ならどんなに遠くに居ても呼ばれたら戻るしかない。

「困るのはギルドに行かないと書けないし受け取れない事だな」

「…え?」

予想してない話にそれなら受け取らなきゃ旅を続けられる?

「行って受け取らなかったら手紙の方から追い掛けて来るとか…は…」

メンバーは一瞬ポカンとして次に大きな声で笑い出した。

ツボにはまったのか泣きながら笑い続けていて、変な聞き方をした自覚はあるけどそんな爆笑されるほど変だったつもりは無かった。

「腹が痛い」

メンバーは腹部を抱えて笑いを堪えていて、堪えながら聞いてきた。

「伯爵の元へ戻りたくないのか?」

「違う。治るまで居られなかったら…って思ったから聞いたの」

苦しい言い訳にメンバーは頷いてくれた。

「確かにな。しかし、今考えても無駄だろ」

「え?」

「治ったら今悩むのが無駄になる」

「あ…」

期待は薄いけど帰れなかった時の事を考えて動いてたら本当に帰れなくなる気がしてきた。

「子供のくせに悲観的だな」

『…28ですから』

メンバーは肩を揺らして笑ってから『改めて』と自己紹介してきた。

「俺は『シン』やっと最近Bランクになった」

「ユキです」

「ギルドカードを渡しても俺の名前を見てなかったよな」

そうだったか記憶に無かった。

行きずりの人の名前を知っても…と無意識に思っていたと思う。

「何か困ったらギルド経由で手紙を寄越せ。ギルドは大陸のどの国にもあるからな」

「国が違っても着くの?」

「そうなってる。実際隣国の友人には届く」

シンはヘベロフカの方角を見て言った。

それならきっと大陸中だ。

みんなが朝食の支度で馬車から降りたタイミングで、毛布にくるまって着替えをした。

血溜まりを歩いた靴を見下ろしてたら…突然閃いた。

何で重い靴を履いているんだろう。

スカート用の靴を買った時冒険者の服用の軽い靴も買えたのに。

まるで誰かから『忘れろ』と記憶を消された感じに思えた。



「今日も食べないのか?」

お茶に硬いパンを浸して少し噛る私にシンが言ってきて思わずぎょっとしました。

「携帯食苦手なんだろ」

今まで馬車に酔って、で誤魔化かせて来れたのに何で?

警戒しながらシンを見ました。

「俺も結婚するまで食えなかった」

でも、そう言うシンは携帯食を食べていて…。

「これか?これはかみさんの手作りだ」

シンは『違うだろ』とお椀の中身を見せてくれたけど、見た目では区別出来なくて返事が出来なかったけど湯気からフワリと香る匂いは全然違った。

「尽きる前に補充に戻る。かみさんと子供に会いたいからな」

「若いお父さんだね」

シンは嫌そうに『今年28何だけどな』とぼそりと言いました。

思わずまじまじと見返してしまいます。

どう見ても二十歳から22くらいに見え…。

「あ、…」

同じ年だと思ったら複雑でした。

「話題を変えようか」

そう言っても話題が思い付かないのかシンの言葉は続かなくて、重い沈黙に焦りながら私から思い付いた話題を振りました。

「大陸でBランク冒険者は50人も居ないんでしょ?」

「…何で知ってる」

シンの声がビックリするほど低くなりました。

逃げ腰になりながらマリアから聞いた話をすると凄く嫌な顔をされました。

「ボスの所のあの女か」

シンの態度からマリアを知っている感じがします。

「それもあるからガロの親父呼び戻したがるのか」

「ガロさん?」

ウサギを買ってくれたおじいさんと同じ名前です。

ウサギでボラれた記憶まで甦って宙を睨んでしまいました。

「ギルドの親父も知っているのか」

「頼まれてウサギを売りに行って…」

どう誤魔化そうか必死に考えましたが何も浮かびませんでした。

「生意気なガキが居ただろ」

言い訳しなくて済んでホッとします。

「うん、あ…もしかしたらガロさんが言ってたパーティーってシンさんの所?」



冒険者ギルドで見た事をシンに話しました。

「それはタイミング良かったな。ガロの親父は王都のギルドマスターだ。この国の冒険者ギルドの総括でもある」

「ギルドマスター…」

聞いた気もするけど1番上の人って感じは無かったような…。

記憶がおぼろなので相づちだけしました。

それからは聞かれるままにアランとベルに会った時の話やボスの話、またマリアの話になって、できるだけ感情を込めないようにベルとマリアのあの話しました。

一瞬驚いた顔をしたシンでしたが直ぐに納得した顔で何度か頷きました。

「なるほどな。それでアランはマリアを置いて逃げたのか」

「…治ってくれてると良いけど…」

嫌いなタイプの人でもやはり死んでしまうのは嫌でした。

朝食の後片付けをしていたら冒険者パーティーが内輪揉めを始めて険悪なムードになりました。

みんな急いで片して馬車に戻ります。

シンと私も急ぎました。

それでも嫌でも話は聞こえてきました。

原因はやはり昨夜の夜襲の事でした。

パーティーだけで討伐出来なかったから今回の給料は無いとリーダーが言った事が始まりでリーダー対メンバーで睨み合いです。

1対5でも勝ち目はリーダーに有りました。

力の差は歴然で話になりませんでした。

このままだと給料を貰えず解雇される雰囲気ですが私は口をつぐんで黙っていました。

パーティー内の事には口出し無用。

ボスの教訓が私に教えてくれた事でした。

詰り合う声もリーダーの方が強くて、メンバーは言いたい事も言えずに終わりそうでした。

リーダーに味方したのは御者の出発の掛け声でした。

リーダーはさっさと御者の隣に陣取りメンバーをこの場に置いて行こうとまでします。

御者が迷っているのを見てメンバーは悔しそうに各々の御者台に乗りました。

馬車が動き出してからシンが言いました。

「良く黙って居たな」

「ボスさんに教えられたから…」

マリアの事だと察したのか、シンもそれ以上言いませんでした。

疲れた気分で背凭れに寄り掛かります。

生活が苦しいからまず自分の事で、他人に意地悪じゃなくて自分だけで一杯一杯なだけ。

頭では分かっていても怒る気持ちを消せない私。

顔に出てるのかシンが困った顔をして私を見ていました。

「大人びた事を言うのに子供みたいな事で鬱ぐ。ユキは不思議な子だな」

『子供じゃないから』

心の中で突っ込みます。

この世界に来て、言葉にしない声がそれまでより増えた気がします。

上司に理不尽な事をされて内心怒るのとは違ってこの世界の怒りは救いの無い怒りで、解決する術がない自分の無力を感じさせる物でした。





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