表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/17

魔人の復活

 十三夜月の冴え冴えとした明かりに照らされた小さな祠は、背後に聳える切り立った絶壁からたったいま彫り出されたかのように、切妻屋根の輪郭をくっきりと壁面に浮かび上がらせていた。一メートルほどの高さの祠の中には、杉板で造られた厨子が設えてあり、観音開きの扉に付いている錆の浮いた小さな錠は、鉄梃の一撃で無残に壊されて地面に転がっている。

 和歌山県熊野山中にある大鷲山の中腹にある祠は、標高が千五百メートルを超えている。そのためか六月中旬とはいえ、深夜の空気は肌寒い。初夏の木々の青葉が発するムッとするような生気に満ちた空気が、祠の周囲をみっしりと取り巻いている。チリチリという虫の鳴き声が、木々の葉に落ちる雨粒の音のように天上から降っている。

 厨子の中に頭を埋めるようにして何かを物色していた男が、ゆっくりと身体を起こした。男の手には高さが三十センチほどの木製の神像が握られていた。

 男の名は春山幸吉。東京都中野区で春山庵という古美術商を営んでいる。本業は古美術品や仏像・神像などを古民家や神社仏閣から盗み出して、秘かに好事家に売り捌く、窃盗・盗品売買である。

 春山は月明かりの下で神像を捧げ持つようにして頭上に掲げ、しげしげと眺めた。

 異形の神だ。頭頂部には鶏冠のようなものが突き出ていて、飛び出したような大きなふたつ目と獅子鼻に、耳まで裂けた口からダラリと舌が下がり、大きな牙が突き出している。裸の上半身に腹の前で組んだ腕、両足は胡坐をかいている。この祠に鎮座する前は、永い年月風雨に晒されていたのだろう。神像の素材の木は飴色に変色していて、神像の表面に施されていたはずの細かな造作はすっかり摩耗している。

 何とも不思議な神像だと春山は思った。仏像・神像などは単なる商品としか思っていない春山だが、この神像を見た途端、神像の発する霊気を感得したのか、背筋にゾクリと悪寒が走った。日本の神像の様式を備えていないため、作製年代は分かりかねるが・・・相当に古いものであることには間違いない。こりゃあ、高く売れると、春山は確信した。

 和歌山くんだりまできたかいがあったと、春山は満足そうにほくそ笑んだ。

 春山は神像を絹の布で丁寧に包み、緩衝材を詰めたリュックサックに入れた。春山はリュックサックを背負い、鉄梃やドライバーや金槌などの窃盗工具の入った鞄を手に持つと、祠の前から足早に立ち去った。


 熊野那智大社から熊野の山中に分け入った先にある大鷲山の懐に位置する牛鬼集落の集会所に、十人ほどの男が集まっていた。時刻はそろそろ夜の十時を過ぎようとしている。十畳の畳敷きの部屋にコの字型に座卓が並べられていて、胡坐をかいて座っている男たちの前には湯呑が置かれている。湯呑の中の茶はすっかり冷めていた。

 集落の長の榎本幹雄は、日に焼けた黒い顔を歪めて、腕を組んだまま目を瞑っていた。その他の男たちも、押し黙ったまま身じろぎひとつしないで座っている。

 ザアッと一陣の風が吹き抜けて、集会所の裏山の大きな柏の木の枝を揺らしたかと思うと、集会所の入口のアルミ戸がカラリと開いて、ひとりの修験者が姿を現した。

 坊主頭に頭巾を乗せ、身に袈裟と篠懸を纏い、括袴をはいて、白手甲・脚絆をつけ、足元は草鞋を履いている。身長は百六十五センチと小柄ながら、山々の修行で鍛えた身体は針金を捩り合わせたように引き締まっている。

 修験者は畳敷きの部屋には上がろうとせず、上がり框に腰を下ろすと、身体を捩るようにして榎本の顔を見た。手に持ったままの錫杖がジャラリと音を立てた。

 榎本は眼を開いて修験者の姿を認めると、小さくオオと声を上げてから立ち上がり、修験者の前で正座した。そして、修験者に向かって深々と頭を下げた。

「大巌坊様、ご修行の最中にお呼び立てして申し訳ありません。何しろことは重大で、大巌坊様のお力を借りなければ、私どもでは何ともならないものですから」

 榎本が言い終わるのを待っていたかのように、ひとりの男が温かな茶を淹れた湯呑を大巌坊と呼ばれた修験者の前に差し出した。大巌坊は小さく礼をすると、湯呑を取り上げてガブリと茶を飲み、修行で鍛えた太く張りのある声を出した。腹の底に響くような声だ。

「榎本さん、いったい何があったのです。儂の力が必要とは、穏やかではありませんな。ましてや、烏口の秘法を使って儂を呼び出すとは、それほどまでに火急の用件なのですか」

 烏口の秘法とは、山々に伏している修験者に火急の用件を知らせるために用いる秘儀で、烏を放って修験者を見つけ出し、烏の口から用件を伝えるものである。

 榎本は頷くと身体を乗り出した。額にはうっすらと脂汗が滲んでいる。

「祠が・・・封魔の祠が壊されて、祀ってあった異形の神像が何者かに盗まれてしまったのです」

「何!」

 ザクリザクリと鑿で削り出したような彫りの深い大巌坊の顔に驚愕の色が浮かんだ。

「盗まれたのは昨夜です。今朝、私がお供え物を持って祠にいって、厨子の扉が壊されているのを発見しました。足跡から察するに、犯人はひとりのようです」

 大巌坊はグウウと小さく唸り声を上げながら榎本の話を聞いている。

「牛鬼集落に代々伝わる言い伝えによれば、建仁元年(西暦千二百一年)、後鳥羽上皇が熊野に御行幸された年に、那智勝浦の浜辺に神像が流れ着いたそうです。鷲龍坊という名の行者が神像の中に封じ込まれている魔を感得して、その魔が世に出ないように、大鷲山に封魔祠を設けて神像を安置したといわれています。鷲龍坊からの命を受けて、牛鬼集落はそれ以降脈々と封魔祠を守ってきました。あの祠の中に神像が安置されていることは、牛鬼集落の者しか知らないはずです。それが、こんなことになってしまって・・・ご先祖様に顔向けできません」

 そこまで言うと、榎本は畳に両手を突いて、額を畳に擦りつけた。榎本の背後の男たちも、榎本に併せて頭を下げた。

「大巌坊様、どうか・・・役小角の再来と称される大巌坊様の験力をもって盗人に神罰を下し、神像を取り戻して頂きたい。なにとぞ、牛鬼集落一同の願いをお聞き届け下さいますよう、お願い申し上げます」

 大巌坊は湯呑を上がり框の上に置くと、スウッと顔を上げた。

「儂はあの神像を以前に一度だけ見たことがある。神像の発する邪気に気圧されて、暫く口が利けなかったことを覚えている。あの神像に封じ込まれている魔は人の世に厄災を招くだろう。知らぬ者が迂闊に触れてはならんものだ。何としてでも取り戻さなければなるまい。榎本さん、分かった、引き受けよう」

 榎本は一度顔を上げて大巌坊を見ると、もう一度額を畳に擦りつけた。大巌坊はジャラリと錫杖の音を響かせながら立ち上がると、集会所の外に出た。

 ザアッと一陣の風が吹き抜けて、集会所の裏山の大きな柏の木の枝が揺れると、風に乗って飛び去ったかのように大巌坊の姿は消えていた。


 矢沢瞭の運転する黒のSUVは、青梅街道を新宿に向かって走っていた。青梅街道を走る車の数は少なく、SUVは前を走る車のテールランプを追って流れるように進んでいく。それもそのはずで、時刻はそろそろ日付が変わろうとしていた。

 助手席に座っている明日香早苗は、瞭に気を遣うこともなく、ぐっすりと眠り込んでいた。後部シートには大学生らしき女性が座り、こちらも高いびきで眠っている。 

 矢沢瞭はフリーのジャーナリストである。百八十センチの長身に筋肉質のすらりとした体形で、年齢は三十二歳になる。涼やかな目元には笑うと目尻に笑いじわが浮かび、出会った相手に人懐っこい印象を与える。高い鼻梁とほっそりとした顎のラインが端正な顔立ちを引き立てている。

 明日香早苗は特殊潜在能力研究所所長という仰々しい肩書を持っている。身長は百六十センチほどで、華奢な身体つきをしている。年齢は二十五歳になる。大きな鳶色の瞳に透明感のある色白の肌と、すっきりと通った鼻筋に少し受け口のぷっくりとした唇があどけなさを残している。

 特殊潜在能力研究所は、人類が持つ特殊潜在能力すなわち『超能力』を科学的に研究する民間の組織である。

 テレパシー(精神感応)、クレアボヤンス(透視)、プレコグニション(未来予知)、サイコメトリー(残留思念感応)などの『超感覚的知覚(ESP)』と、サイコキネシス(念動)やパイロキネシス(発火能力)などの『念動力(PK)』を合わせた、PSIサイ能力が、脳のどのような働きで発現するのかを研究すると共に、PSI能力の発芽が認められる人を集めて、その能力を高めるための訓練を行っている。

 今日は、西東京市にある東都大学で、学生が立ち上げた超能力サークルの活動視察と、同大学の教授で脳科学の権威である山上博士との意見交換をした帰りである。後部座席で眠っている大学生は、超能力サークルのメンバーのひとりで、意見交換後の懇親会で酔い潰れてしまい、自宅のある新宿まで送り届けているのだ。瞭は早苗から呼び出されて、酒も飲まずに、運転手としてこき使われていた。

 瞭は襲ってきた睡魔を振り払うかのように頭を振ると、大きくひとつ欠伸をした。SUVは中野区に入った。新宿はもう目と鼻の先だ。

 突然、瞭の頭の中を強い衝撃が走り抜けた。

 同時に、眠っていたはずの早苗も頭を上げた。衝撃を感得した早苗の大きな鳶色の瞳が揺れている。

「瞭、いまの念動波を感じた?」

「ああ、感じた。誰かが近くでサイコキネシスを使ったんだ、間違いない」

 瞭は慌ただしくSUVを路肩に止めると、ハザードランプを付けて車から降りた。助手席から早苗が降りてきて瞭に並んだ。

 ふたりのすぐ先に、JR中野駅に通じる中野通りがある。JRも地下鉄もそろそろ終電の時刻で、平日のこの時間に商業ビルや賃貸マンションが立ち並ぶこの一角を歩いている人影はなかった。

 早苗は眼を閉じて、しばらく意識を集中してから、何かを感得したように目を開けた。

「瞭、こっちだわ。急いで」

 早苗は中野通りに向かって駆け出した。瞭が慌てて後を追う。

 瞭と早苗は中野通りを五十メートルほど進み、そこから右手の細い路地に入った。小さな個人商店が軒を連ねるその路地は、街灯の明かりも届かず、ひっそりと闇に沈んでいる。路地に突然走り込んできたふたりに驚いたのか、暗闇の先で野良猫がニャアと鳴いた。

 早苗は一軒の店の前で立ち止まった。二階建ての住宅の一階部分を店舗として改装している。店舗のシャッターは下りていて、二階の住宅部分にも明かりが見えない。シャッターの前の置き看板には、『古美術骨董 春山庵』と店の名前が書かれている。

「瞭、ここで間違いないと思うわ」

「早苗ちゃん、明かりが見えない・・・住人はもう寝ているんじゃないかな。それとも不在か。それにしても、あんなに強い念動波を発するとは、いったい何があったんだろう」

 瞭は春山庵と隣の店舗の建物との間を覗き込みながら、首を捻っている。犬か猫しか入り込めそうにない細い隙間を覗き込んでいる瞭を見て、早苗はダメだとばかりに首を振った。

「私が思念波を送って探ってみるわ」

 早苗は目を閉じた。早苗が意識を集中すると、脳の前頭葉がポッと温かくなった。脳内のネオニューロンが活性化して、水面に落ちた水滴の波紋が同心円状に広がっていくように、早苗の発した思念波が周囲に広がっていく。

 早苗はテレパシーを操り、予知能力も備えた優秀な超能力者テレパスである。

「あっ!」

 早苗は小さな叫び声を上げると、両手で両耳を塞ぐようにして地面にうずくまった。

「早苗ちゃん、どうした!」

 早苗の横にしゃがんだ瞭が、早苗の肩を抱いた。早苗は弓型の美しい眉をひそめて唇を噛んでいる。

「私の思念波が強い力で打ち返されたの。激しい拒絶、まるで鞭で打たれたみたいだわ」

「早苗ちゃんの思念波を感得したのか。ということは、相手はテレパスか・・・」

 瞭と早苗の頭上から、ジャラリと錫杖の音が響いてきた。

 瞭と早苗は頭上を振り仰いだ。二階建ての春山庵の瓦屋根の上に黒い影が立っている。その影は瞭と早苗をジッと見つめていた。瞭の視線と黒い影の視線が絡み合った。

 身に袈裟と篠懸を纏い、括袴をはいている。闇の中に白手甲が浮かび上がる。左手には背丈を超えるほど長い錫杖を持っている。瞭は咄嗟に天狗を連想した。

 黒い影は身体の前で小さく印を結び、ウンウンと何やら呪文のような言葉を唱えると、パッと宙に飛び上がった。ザアッと旋風が舞い、黒い影は旋風と共に消えた。

「飛んだ!」

 瞭が思わず声を上げた。早苗は両目をこれでもかと見開いている。信じられないという顔だ。

「ねえ瞭、いまのは、まさか天狗・・・じゃないわよね?」

 早苗の声が震えている。

「狐狸妖怪の類じゃない、あれは確かに人間だよ。念動波を感じた・・・サイコキネシスだ。サイコキネシスで自らの身体を宙に浮かせたんだ。凄い能力だ」

 瞭はサイコキネシスを操る超能力者である。その瞭にしても、宙に浮かんだことはなかった、いや、試したことがないのだ。

「何者か分からないが、とにかくあいつは行ってしまった。ここにいても仕方がない。とにかく帰ろうか」

 瞭は早苗の肩を抱くと、春山庵に背を向けて歩きだした。

 あいつは春山庵で何をしていたのだろう。ふとそう思った瞭は後ろを振り返った。春山庵は既に路地の闇の中に沈んで見えなかった。


 瞭と早苗が空を飛翔する怪人を目撃した翌日。

 警視庁刑事部捜査三課の小野啓助巡査部長は、春山庵の入口前で立番をしている巡査に警察手帳をチラリと見せて、小さく敬礼をしてから春山庵の中に入った。春山庵の前の細い路地は、十メートルほどの範囲で規制線が張られていて、規制線の外では鈴なりになった野次馬が、口々に何かを喋りながら伸び上がるようにして春山庵を見ている。

 店内は八畳の広さで、中央に応接セットがあり、壁際に置かれたガラスの陳列ケースの中に、刀剣類や壺・皿や仏像・神像などが並べられている。ひと目見て安物ばかりだ。高価な商品は奥の部屋の金庫にしまってあるのだろう。

 店内は所轄の西中野警察署の捜査員で溢れかえっていた。鑑識の作業はひと段落着いたのだろう、シートを被せた担架が運び出されようとしている。

 小野巡査部長の姿を認めて、旧知の山口巡査部長が声を掛けてきた。小野も山口も、窃盗事件を担当する部署に勤務している刑事で、過去に何度も捜査協力をしたことがある。年齢も、小野が四十三歳、山口がふたつ下の四十一歳と近く、何かと馬が合うのだ。

「本庁の小野さんじゃないですか。どうしたんです?」

「ああ、山口さん、お久しぶり。いや、何ね、春山幸吉が殺されたって聞いたものだから、慌てて飛んできたんですよ」

 山口はホウという顔をした。

「小野さんは春山幸吉を追っていたんですか」

「全国の神社仏閣で仏像神像の盗難被害が相次いでいてね、警視庁にも照会が寄せられていたんだ。狙う物や手口から、犯人は春山幸吉らしいと目星をつけて、春山の顧客に、古い仏像神像を集める金持ちの好事家がいるところまで突き止めたんだが・・・あと一歩というところで春山が殺された。捜査の糸が切れちまったよ・・・」

 愚痴を口にする小野を見る山口は、何ともいえない表情をしている。小野はその表情に気付いた。

「うん? 山口さん、どうした。春山の死因に、何かおかしな点でもあるのか」

「おかしな点があるというより、おかしな点だらけなんですよ。おい、ちょっと待て、春山の遺体を本庁の小野巡査部長に見てもらおう」

 春山の遺体を運び出そうとしていた係員に声を掛けて呼び止めると、山口は小野を担架の傍まで引っ張っていった。そして山口は担架に被せられているシートをめくり上げた。

 苦悶を浮かべた表情で固まっている春山幸吉の顔は、全体が焼け爛れていた。開襟シャツの襟元から覗いている胸や、袖口の先の両手も、顔と同様に焼け爛れている。しかし、春山が身に着けている開襟シャツやズボンには焼けた跡がなかった。全身が焼け爛れた焼死体に、後から開襟シャツを着せてズボンをはかせたようにも見える。

「何だこりゃあ! 春山は焼死したのか・・・しかし着衣は燃えていない・・・。焼き殺してから服を着せた? なぜ、そんな手間の掛かることを?・・・」

「小野さん、それだけじゃないんだよ。春山の遺体を発見したのは、春山庵の従業員の近藤康夫。近藤が午前八時半すぎにシャッターを開けて店の中に入って、応接セットのソファーで座ったまま死んでいる春山を発見したんだ。見てのとおり、春山が座っていたソファーも床も、いや、店舗内のどこにも焼けた跡がないんだ。ということは、犯人は春山をどこか外で焼き殺した後、わざわざ開襟シャツを着せてズボンをはかせた上で、死体を店の中まで運び込んでソファーに座らせたことになる。こんなことをする意味があるか?」

 小野は顎を指でつまんで首を傾げている。小野がぽつりと言った。

「犯行現場の特定から始めなきゃならんということか。外傷は? 遺体に外傷の痕はあったのかい」

「これから司法解剖をして本格的に死因を調べるんですが、ザッと見た限りでは外傷らしき痕は見当たらなかったですね。死亡推定時刻の特定もこれからだ」

「なるほど、場合によっちゃあ、他殺ではなく春山は焼身自殺した可能性もある訳か。焼身自殺した春山の死体に、誰かが服を着せて、店内に運び込む。なぜそんなことを・・・ダメだ、さっぱり分からん」

 小野は額というには広すぎる禿げ上がった頭をペタペタと叩いた。山口は遺体にシートを被せると、担架を持っている係員に、もう運び出していいと顎をしゃくった。

 小野はふと何かに気づいたように、視線を山口に向けた。

「山口さん、さっき、春山の遺体を発見した従業員は、店の入口のシャッターを開けて店の中に入ったと言ったね。シャッターも店の入口のドアも、いずれも鍵が掛かっていたということかね。裏口のドアも?」

「ええ、近藤はシャッターも店の入口のドアも鍵が掛かっていたと供述しています。一階の店舗も二階の住居部分も、裏口のドアや窓には全て鍵が掛かっていました。鍵の束は春山のズボンにぶら下がっていました。まあ、シャッターも店の入口のドアも、予備の鍵は従業員の近藤が預かっていて、店舗への出入りに使っていますから、密室殺人という訳じゃありませんがね」

「それじゃあ、第一発見者である従業員の近藤が容疑者になるのか」

「鍵を複製すれば誰でも入れるんでしょうが、まあ、鍵を持っている近藤が第一に疑われるでしょうな。遺体を運び込んで鍵を掛けて、翌朝、知らん顔をして鍵を開けて、通報する・・・。うーん、どうもまどろっこしいな。鍵を掛ける必要はないのか。まあ、カギが掛かっていたというのは近藤の供述だけで、近藤が鍵を開けるところを第三者が見ている訳じゃないからなぁ」

「近藤が犯人だとすると、何のためにそんなことを」

 小野は釈然としない顔でそう言った。山口がガクリと項垂れた。

「そこなんですよ、そこ。何のためにそんなことを・・・すべてそこに行き着くんだよなぁ。とにかく、近藤は任意同行ということで署に引っ張っていかれましたよ。今頃、強行犯係の連中に締め上げられているんじゃないかな。そうそう、そういえばもうひとつ、鑑識が変なことを言っていたな」

「まだ何かあるのかい」

 さすがの小野もあきれ顔だ。山口は顔の前でパタパタと右手を振った。

「いや、こっちは大したことじゃないんです。店舗や住居部分の床に微量の藁屑が落ちていたそうです。藁なんて東京都内じゃ見かけないでしょう。風で飛んできたのかな」

「仏像や神像を運ぶときの緩衝材じゃないのか」

「いまどき藁なんて使いますかね。ひょっとして、犯人は草鞋を履いていたりして・・・ハハハ、馬鹿らしい」

 山口は自分の頭の中に浮かんだ考えを笑い飛ばした。

 ザワザワと人が動く気配がして小野が振り返ると、作業を終えた鑑識課員たちが引き上げるところだった。店舗の中には小野と山口しか残っていない。先程までの喧騒が嘘のように、店舗の中はシンと静まり返っている。

「そろそろ、私たちも引き上げますか」

 山口に促されて、小野はしぶしぶと頷いた。所轄署が引き上げるのに、合同捜査本部すら発足していない現状で、本庁の小野が残る理由がない。店舗の入口に向かって並んで歩きながら、小野は山口に言った。

「春山から盗品の仏像や神像を買った好事家に関する情報が欲しいんだ。従業員の近藤も盗品売買に一枚噛んでいるに違いないはずだ。山口さん、頼みがある。近藤に対する事情聴取の合間を見て、好事家に関する情報を近藤から聞き出してくれないかな」

 山口は横目でチラリと小野を見た。小野の顔には、無理は承知の上だと書いてある。食らいついたら放さない、すっぽんという小野のあだ名を思い出した山口は、苦笑を浮かべながら了解した。

「分かりました。強行犯係の事情聴取の合間に聞いてみますよ。私が嫌だと言ったら、小野さんは署の取調室に乗り込んでくるつもりでしょ。そうなったらひと悶着だ」

「すまん、恩に着る」

 わざとらしく両手を合わせた小野を見て、山口はアハハと笑った。


 まったく不思議な神像だと、御手洗達造は心の中でつぶやいた。古美術商の春山から買い取った神像は、達造の両手の中で磁力にも似た妖気を放っている。

 春山がへちま顔を歪ませて、もったいぶった手付きで取り出した神像に、達造はひと目で虜になった。二千万円だという春山の言い値を、達造は値切りもせず買い取った。言い値で売れるとは思っていなかったのだろう、春山の驚いたような顔が目に浮かぶ。

 御手洗達造は、東京、大阪、名古屋、札幌などの主要都市にホテルや貸しビルを百棟近くも所有し、更に、リゾート開発やゴルフ場経営など幅広い事業を展開していて、不動産王と呼ばれている。七十歳となったいまでは、事業を息子の浩一に任せて第一線からは退き、長野県の軽井沢にある広大な別荘に住んでいた。

 達造は美術品の蒐集家としても有名で、書画刀剣の類から彫刻や仏像神像まで幅広く蒐集している。当然に表のルートだけでなく、春山のような盗品を扱う裏のルートまで使い、金に糸目を付けずに買い漁っていた。

 まったく不思議な神像だと、達造はもう一度心の中でつぶやいた。和歌山県の熊野山中の祠に祀られていた神像だと春山は言ったが、見る限り日本の神ではない。中国や韓国やインドといったアジアの神ではなさそうだ。古代エジプトの神々とも違う。中南米のインカやマヤの神かも知れない。しかも相当に古いものだ。

 舐めるように神像を眺めていた達造の、垂れ下がった瞼に埋もれたような細い目が、神像の胸部に施されている摩耗した紋様に釘付けになった。何か仕掛けが施されているようだ。神像の胎内に何かが埋め込まれているのだろう。木製の神像にしては持ち重りがするし、重心が偏っているように感じられるのはそのためだ。達造の心臓がドクリドクリと早鐘のように鳴り出した。

 海賊の隠した宝の箱を見つけたトレジャーハンターのように、熱に浮かされたような目をして達造は神像の胸の部分を指で擦った。永い年月を経て摩耗した神像の表面に、微かだが色が周囲と異なる部分がある。何かを隠した穴を塞ぐようにして木を埋め込んでいるのだ。

 達造はカミソリの刃を使って、埋め込まれた木の蓋の周囲を慎重になぞった。木の蓋と神像本体の間の目に見えない隙間にカミソリの刃が吸い込まれた。

「おっ!」

 突然、神像がブルリと震えたような気がして、達造は思わず声を上げた。

 神像の胸の中心部分にある、縦横三センチ四方の木の蓋の部分にシワリと亀裂が入ったかと思うと、内部からの圧力に耐えきれずに木の蓋の部分が縦にふたつに割れ、観音開きの扉のように外側に向けてパカリと開いた。

 思わず神像を落としそうになった達造は、慌てて両腕でしっかりと神像を抱えた。神像の中に封じ込められていたものが、外に出たがっているようだと達造は思った。パンドラの箱という言葉がチラリと達造の脳裏をよぎった。いやいや、あれは単なるギリシャ神話に過ぎない。目の前にある神像は現実だ、古代の隠された秘宝が現れるのだ。達造の心の中には畏怖も恐怖心もなく、未知のものを手にした蒐集家の興奮と好奇心が渦巻いている。

 達造は神像の胸に空いた穴を覗き込んだ。四角い穴の中に黄色い布に包まれた小さな物が押し込まれている。達造は手袋を嵌めた指を四角い穴に差し込んで、小さな物を取り出すと、ソファーの前の大理石の大きなテーブルの上に置いた。

 達造はゆっくりと息を吐くと、額にネットリと滲んだ脂汗を拭った。両手の指を二、三度開いたり閉じたりして緊張をほぐすと、黄色い布をゆっくりと開いた。

 直径二センチほどの円形をしたブローチのような物がふたつ、ピッチリと貼り合わされていて、ふたつが離れないように針金のような細い金属で縛られていた。ブローチのような物は深緑の翡翠で造られていて、神像の顔に似た異形の顔が彫り込まれている。ふたつを縛る細い金属は純金のようだ。

「おおお・・・」

 目の前に現れた宝石の美しさに達造は感嘆の息を漏らした。二千万円どころではない、とてつもない掘り出し物だ。腹の底から笑いがこみ上げてきた。それと同時に、ふたつのブローチのような物の間に何が挟まれているのだろうという好奇心が猛然と湧き上がってきた。

 それを確かめるためには、純金の針金を切断しなければならない。どうする? 一瞬迷った後、達造は心を決めた。真に大切なものは翡翠でも純金でもない、この中に挟まれている物こそが、すべてに勝る価値ある物のはずだ。そう、目の前の物は単なる容器に過ぎない。

 達造は工具箱からニッパーを取り出すと、純金の針金をパチリと切断した。

 達造は震える指で翡翠のブローチのような物をふたつに開いた。

 内側には鏡が貼り付けてあった。翡翠のブローチのような物の正体は円形の鏡で、ふたつの鏡が、鏡面を向かい合わせにして縛り付けてあったのだ。魔を封じ込める、合わせ鏡の呪術なのだろう。

 気が抜けたような顔をした達造が、鏡のひとつを手に取って、鏡を覗き込んだ。

 鏡には達造の顔が映っていない。

 鏡の中から、達造とは似ても似つかぬ男が達造を見ていた。頭髪は一本もなく、落ち込んだ眼窩と胡坐をかいたように横に広がった鼻、頬は恐ろしいほどコケていて、鼻から下は髭で覆われている。落ち込んだ眼窩の底から炯炯と光る赤い目が、達造を捕えた。

 達造の魂は、鏡の中の魔人に取り込まれた。


 ザアッと一陣の風が吹き抜けて、御手洗達造の住む別荘の広大な庭に植えられているミズナラの木々の枝を揺らした。

 深夜の空には立待月が昇っていた。満月を二日過ぎて、月の光は徐々に力を失い始めている。月明かりの中に大巌坊がのっそりと立っていた。

 大巌坊は別荘の母屋に続く砂利道をゆっくりと歩き始めた。ジャラリと錫杖の音が響いたが、砂利を踏む大巌坊の足音は聞こえない。

 母屋の入口のドアが見えたとき、微かな獣の臭いが大巌坊の鼻に届いた。グヴヴヴと押し殺したような唸り声が、大巌坊の周囲から聞こえてきた。ガサリと音がして砂利道の脇の植え込みの中から三頭のドーベルマンが姿を現した。警備用に放し飼いにされているのだろう、体高八十センチ、体重五十キロはあろうかという巨大なドーベルマンだった。

 三頭のドーベルマンは大巌坊の周囲をグルグルと回りながら、鋭い牙を剝き出して、威嚇するように唸っている。これ以上先に進めば容赦なく飛びかかってくるだろう。

 大巌坊は少しも恐れる様子を見せず、身体の前で小さく印を結び、「ノウマクサンマンダ バサラダン センダンマカロンシャダソハタヤ ウンタラタカンマン」と呪文を唱えると、右手の人差し指と中指を突き出して、ヤッヤッヤッと三頭のドーベルマンに向かって気を発した。唸り声を上げていた三頭のドーベルマンは、キュウと小さく声を上げると、地面に身体を伏せて動かなくなった。

 母屋の入口のドアの前に立った大巌坊は、左手に持った錫杖の石突をドアに向けて、ヤッと気を発した。金属製の自動ドアが音もなく開いた。大巌坊はジャラリと錫杖の音を響かせると、母屋の中に入った。

 二十畳の居間の中央に大きな一枚板の大理石のテーブルが置かれていて、その周囲をコの字に取り囲むように革張りのソファーが並べられている。北側の壁には人の背丈ほどもある大きな暖炉が設えてあって、六月だというのに暖炉の中では薪がチラチラと炎を上げている。東側の壁にはバーカウンターがあり、西側の壁には天井まであるガラスケースの中に、壺や皿や刀剣類が並べられている。南側は天井まであるガラス戸で、閉められたカーテンを開けると、その先には手入れされた中庭の風景が広がっているのだろう。床には、くるぶしまで埋まりそうな分厚い絨毯が敷き詰められている。

 御手洗達造は革張りのソファーに身体を預けて、考え事でもしているかのように、身じろぎもせずに前を向いていた。いや、達造は手に持った円形の鏡をジッと見つめているのだ。達造の前の大理石のテーブルの上には、胸部にポカリと穴が空いた異形の神像が置かれている。その横に、もうひとつの円形の鏡が伏せられた状態で置かれている。

 ジャラリと錫杖の音が響いた。

 大理石のテーブルを挟んで、達造の正面に大巌坊が立っていた。

 大巌坊が目の前に立っても、達造は身動きひとつせず、手に持った円形の鏡をジッと見つめている。

 大巌坊は口を開こうとして、達造が発する禍々しい妖気に気付いた。大巌坊は一度丹田にグッと気を込めてから、言葉を吐いた。修行で鍛えた太く張りのある声が居間の中に響いた。

「御手洗達造。那智勝浦の牛鬼集落にある封魔の祠より春山幸吉が盗み出した神像を返してもらう。春山幸吉には神罰が下り、身体より炎を発して焼け死んだ。御手洗達造、お前にも同様の神罰が下される。覚悟せよ」

 大巌坊はおもむろに大理石のテーブルの上に置かれている神像を手に取った。そして、神像の胸に空いた穴を見て息を呑んだ。

「お前は神像に封じられていた魔を解き放ったのか! 何ということをしたのだ」

 ソファーに身体を預けたまま、手に持った円形の鏡をジッと見つめていた達造は、毒蛇が鎌首を持ち上げるようにグウッと顔を上げると、大巌坊を見た。達造の両目から瞳が消えていて、ぽっかりと空いた空洞のような両目の穴は、一面が血塗られたように真っ赤に染まっている。そして、その真っ赤な両目から邪悪な思念波がほとばしるように流れ出た。その思念波は、二匹の絡み合う毒蛇のように大巌坊に飛び掛かった。

「ヌッ!」

 大巌坊は咄嗟に三メートルほど後方に跳び下がると、身体を囲むように、錫杖の石突で素早く床に円を描き、防御のための結界を張った。そして錫杖を前に突き出すようにして構えた。

 絡み合う毒蛇のような思念波は、結界の周りをグルグルと回っている。大巌坊はヤッと気合いを掛けて、毒蛇のような思念波に向けて錫杖を振り下ろした。ジャラリという錫杖の音が響いた。毒蛇のような思念波は真っ二つに引き裂かれて、スウッと消えた。

 大巌坊は胸の前で小さく印を結び、「ノウマクサンマンダ バサラダン センダンマカロンシャダソハタヤ ウンタラタカンマン」と呪文を唱えると、右手の人差し指と中指を突き出した。

「ヤァーッ!」

 大巌坊は雷鳴のような声と共に気を発した。

 ソファーに身体を預けたままの達造の身体が小刻みに震え始めたかと思うと、達造の頭部がメラリと炎に包まれた。はだけたガウンから覗く胸も、袖から伸びる両腕も炎に包まれている。しかし、達造の身に着けているガウンやパジャマは燃えていない。足元のスリッパも、その下の絨毯も燃えていない。達造の身体だけが炎を発していた。

 大巌坊の会得した験力のひとつ、火焔の術である。

 この場に、もし瞭か早苗がいれば、念動力(PK)の一種であるパイロキネシス(発火能力)だと指摘するだろう。大巌坊は厳しい修行により念動力を発現した超能力者なのだ。

 全身を炎で焼かれた達造は、しばらく痙攣するように身を捩っていたが、直ぐにソファーに座ったまま動かなくなった。達造は悲鳴どころか呻き声すら上げなかった。真っ赤だった両目も炎で焼かれて、黒いふたつの穴が空いているだけだ。

 大巌坊は床に描いた結界から出ると、達造の死体に慎重に近づいた。不思議なことに、先程達造が発していた禍々しい妖気は消えている。神像に封じられていた魔も火焔の術によって浄化されたのだろうと、大巌坊は安堵した。

 達造の死体が何かを握っている。大巌坊の目が吸い寄せられた。大巌坊は達造の手から円形の鏡を取り上げると、何気なく鏡を覗き込んだ。

 鏡には大巌坊の顔が映っていない。

 鏡の中から、魔人が大巌坊を見ていた。大巌坊は咄嗟に鏡から目を逸らそうとした。しかし、大巌坊の両目は鏡から離れない。魔人の落ち込んだ眼窩の底から炯炯と光る赤い目が、大巌坊を捕えた。

 鏡の中から、魔人の痩せさらばえた腕がヌウッと伸びてきて大巌坊の首を掴むと、大巌坊を鏡の中に引きずり込んだ。

 大巌坊の魂は、鏡の中の魔人に取り込まれた。


 西中野警察署の山口巡査部長が北陸新幹線の軽井沢駅の改札を出ると、制服姿の警察官が近寄ってきて、山口に声を掛けた。西中野警察署から軽井沢警察署に、山口の到着時刻と顔写真があらかじめ連絡されていたのだろう。

「西中野警察署の山口巡査部長ですね。ご苦労さまです。自分は軽井沢駅前派出所の真田巡査です。車を用意していますので、軽井沢警察署までご案内します」

 警察学校を卒業してまだ間もないような初々しい真田巡査の緊張した態度に、山口は好感をもった。山口は真田にニコリと笑い返した。

「やあ、これはどうも、恐縮です。お忙しいのに手間を掛けさせて申し訳ない」

「お気になさらず、さあ、どうぞ。こちらです」

 山口が持っていた小さな鞄をひったくるようにして手にすると、真田は山口を先導するように歩きだした。まだ時期が少し早いのだろう、北陸新幹線としなの鉄道の線路の上を跨ぐように設けられたコンコースには、観光客の姿はまばらにしか見えない。

 七月に入り、季節は初夏をとおり越して既に夏本番を迎えたかのように、連日猛暑日が続いていた。うだるような暑さの東京とは違い、避暑地の軽井沢は涼しく、空気もカラリと乾燥している。駅舎の北口を出ると、山口を出迎えるかのように涼風がサアッと吹き抜けた。

「ああ、いい風だ。東京の蒸し風呂のような暑さに比べると、こっちは天国だね」

 思わず口に出た言葉に、真田が振り返った。

「東京からこられた方は皆さんそうおっしゃいますね。ここに住んでいる者には分かりませんが。まあ、得てしてそういうものなんでしょう。そういえば、先週、東京からこられた警視庁の方も、同じようなことをおっしゃってましたよ」

「先週? それは警視庁の小野巡査部長のことかい」

 聞き返した山口の語気が険しくなったが、真田はそれに気付かずに、のんびりとした口調で答えた。

「あ、ご存じなんですか。そうです、小野巡査部長ですよ。実は、小野巡査部長も自分がお出迎えしたんです。というか、他県からこられる方のお迎えは、駅前派出所の自分の担当なんですけどね、ハハハ」

 駅前のロータリーの脇に設けられている駅前派出所の駐車場に止めてある、軽自動車のパトカーの助手席に座った山口は、鼻歌交じりでパトカーを発進させた真田に尋ねた。

「小野巡査部長は、とある事件の関係者への聞込み調査のために軽井沢にきたはずだが、関係者宅にも真田巡査が案内したのかい」

「最初はその予定だったんですが、間が悪いことに、コンビニ強盗未遂事件とひき逃げ事件が重なりましてね。何せ小さな警察署なもんで人手が足らなくて。自分も交通整理要員に駆り出されて、小野巡査部長のご案内まで手が回らなかったんです。小野巡査部長は、署に迷惑を掛けられないとおっしゃって、確かレンタカーで現地に向かわれたはずですよ」

「レンタカーで・・・」

 山口は眉間にしわを寄せ、腕を組んで考え込んだ。

「小野巡査部長がどうかされたんですか」

 山口は一瞬躊躇してから、秘密を打ち明けるように低い声で言った。

「小野巡査部長は行方不明なんだ。先週、軽井沢の関係者宅への聞込み調査に向かったきり、姿を消した。スマートフォンもバッテリー切れなのか、電波が届かないのか、理由は分からないが繋がらない」

 真田は驚いたように目を見開いた。


 春山幸吉の遺体は司法解剖に付された。司法解剖の結果、遺体に外傷はなく、体内から致死性の薬物等を摂取した痕跡も発見されなかった。肺の中に水はなく溺死は否定され、肺胞の壊死鬱血等の症状もないため、窒息死や致死性のガス吸引による死亡も否定された。

 下された死因は焼死。不思議なことに、通常の焼死の場合に見られる、喉や肺の粘膜の火傷の症状が見られなかった。このため監察医は、何らかの理由により死亡してから遺体が焼かれた可能性も否定できないとしている。

 更に、監察医は人体自然発火現象にも言及している。西暦千九百五十一年アメリカのフロリダ州で起こったメアリー・リーサー事例、西暦千九百八十八年イギリスのサウサンプトンで起こったアルフレッド・アシュトン事例など、人間が自然に発火したと判断される事例は、世界中で古くから発生している。遺体の周囲に火の気のない状況から、春山幸吉も人体自然発火現象である可能性を監察医は指摘している。

 死亡推定時刻は、胃の内容物の状況から、六月〇日午後十時から翌日の午前二時の間とされている。

 このため、殺人事件なのか、自殺なのか、死体損壊事件なのか、死体遺棄事件なのかすら判断がつかないまま(人体自然発火現象であれば、単なる自然現象にすぎず事件性すら失くなってしまう)、西中野警察署に捜査本部が置かれた。

 周囲の聞き込み調査が虱潰しに行われているが、いまのところ有用な目撃情報なし。また、犯行現場あるいは死体損壊現場となる、春山幸吉を焼いた場所も特定できていない。

 このため、唯一の手掛かりであるはずの、遺体の第一発見者・春山庵の従業員の近藤康夫に対する任意の事情聴取が、強行犯係によって連日行われていた。

 山口は強行犯係の係長に一言仁義を切ってから、近藤と面接した。春山の殺害に関しては一貫して否認している近藤だったが、古美術品の窃盗・闇売買に関しては素直に関与を認めた。そして、近藤の口から春山の顧客である金持ちの好事家の名前と住所を聞き出した。その好事家のひとりが、軽井沢の別荘に住む御手洗達造だった。

 山口から春山の顧客の名前と住所の連絡を受けた小野は、古美術品の窃盗・闇売買事件の聞込み調査として、先週、軽井沢の御手洗達造宅を訪ねたはずだ。そして、小野は連絡を絶ち、行方不明となった。

 今回、山口が軽井沢を訪れたのは、春山幸吉の死亡にかかる事件の捜査の一環として、春山の顧客に関する情報収集を兼ねた聞込み調査のためだ。山口が小野の行方不明を知ったのは、軽井沢への出張の直前に、小野の上司である警視庁刑事部捜査三課長の宮間から連絡を受けたからである。


 真田の案内で所轄の軽井沢警察署に顔を出し、署幹部への挨拶と捜査協力の要請を済ませた山口は、再び真田の運転するパトカーで千元谷集落にある御手洗達造の別荘に向かった。

 しなの鉄道中軽井沢駅前から国道百四十六号線に入り、中軽井沢の市街地を抜けて山道に入ると、左手は浅間山の山容が広がっている。山道を一キロメートルほど進み、右手に現れた脇道に入る。脇道はミズナラやカラマツの自然林の中をクネクネと縫うように延びていた。頭上を覆うように茂っている葉のために太陽光が遮られていて脇道は薄暗く、標高が上がっていることも加わって、空気はヒンヤリと冷たい。

 車の窓から流れ込んでくる風は涼しいをとおり越して寒いくらいで、山口はブルリと身体を震わせてから、窓を閉めた。

「何だか、凄い山の中に入ってきたようだけど、こんな所に集落があるのかい」

 真田は林の中の細い道を、山口が心配するようなスピードでパトカーを走らせている。軽自動車の細いタイヤが、カーブを曲がる度に悲鳴のような音を上げて、その度に山口は両足を踏ん張った。山口の両掌はじっとりと汗が滲んでいる。

「任せて下さい、こっちは地元警察ですよ。これで迷っていたら、商売あがったりだ。この道を二キロメートルほど進んだ先が千元谷集落です。まあ、集落といっても、古くからの住民が住む集落ではなく、山中の開けた場所に別荘がかたまって建てられてできた新しい集落ですけどね」

 真田は初対面の緊張がほぐれてきたのか、駅に迎えにきたときに比べて口調が砕けてきた。これが本来の真田なのだろう。

「へえ、別荘だけで構成される集落ってことか。それじゃあ、集落の住人同士の交流なんて少ないのかな」

「避暑地の別荘ということもあって一軒一軒の家の敷地は途方もなく広く、それが集落内にポツリポツリと点在しているんです。広い庭に植えられた木々によって遮られているので、隣の家なんか見えやしませんしね。まあ、資産家や政治家や有名人がお忍びで避暑にくる場所でしょうから、隣の家との交流など不要なんでしょう。隣の家の人に興味なんかないんですよ。ああ、千元谷集落の入口が見えてきた」

 ミズナラやカラマツの自然林が途切れて、明るく平坦な場所に出た。道の脇に道路標識のような看板が立っていて『千元谷』とだけ書かれている。その先に道は真っ直ぐに延びていて、所々で左右の別荘地に入る脇道がある。脇道にも看板が立っているが、個人の名前はなく、住居表示と思われる数字が並んでいるだけである。確かに、これでは隣に誰が住んでいるのかなど分からないだろう。

「えーっと、訪ねるのは御手洗達造さんの別荘ですね。御手洗・・・御手洗・・・あった、七〇三番地か。ああ、あそこだ」

 真田は警察署で管理している居住者名簿で御手洗達造の別荘の地番を確認すると、七〇三という数字が書かれた看板が立っている脇道にパトカーを乗り入れた。

 脇道を二百メートル進むと、道の両脇に一メートルほどの高さの門柱が立っていた。門扉は付いていない。敷地の周囲は林に囲まれていて塀などないため、ここだけ門扉を付ける意味がないのだ。道は緩やかに左にカーブしながら木造平屋建ての大きな母屋の玄関前まで続いていた。

 L字型をした母屋の脇に渡り廊下で繋がったコンクリート造りの頑丈な倉庫が建っている。美術品を保管している倉庫なのだろう。中庭は芝生が植えられていて、所々に島のように奇怪な岩が配置されている。その岩々の間に楓や桜や百日紅が植えられている。

 玄関前の車寄せにパトカーを止めると、山口と真田は玄関の前に並んで立った。

 母屋の入口は金属製の自動ドアで、ドアの横の壁にあるインターホンの脇に大理石の表札が掛かっていて、御手洗という字が彫り込まれていた。御手洗達造の別荘に間違いない。

 山口がインターホンのボタンを押した。しばらく待っても、返答がない。山口は二度三度とインターホンのボタンを押したが、返答はなかった。

「留守なんじゃないですか。そもそもここは避暑地の別荘だから、まだこっちにはきていないとか。東京にいたりして」

 真田の声に山口は首を横に振った。

「息子の御手洗浩一に確認したところ、達造は軽井沢の別荘に引きこもったままで、東京には出てこないそうだ。足が悪いため出歩くこともままならなくて、買い物にも出ない。食事の世話と掃除のために、一日に一度お手伝いさんがくるそうで、必要なものはそのお手伝いさんが買ってくるそうだ。車に乗って外出することは、たまにあるらしいが・・・」

 山口が玄関脇の大きなガレージを覗くと、黒のベンツが止まっていた。

「車はここに止まっている。やはり、達造は中に居るはずなんだが」

「警察官がきたのを見て、居留守を使っているのかな。けしからん。きっと、やましいことがあるんですよ」

 若い真田は正義感に駆られているのだろう、鼻の穴が広がっている。老練な山口はそれを見て苦笑した。俺も若い頃はこうだったと思っているのだ。いまでは、滅多なことでは正義感を振りかざしたりしない。

「やましいことねぇ・・・。よし、中庭の方に回ってみるか。真田巡査は反対側から回って、母屋の裏口を見てくれ」

「了解しました」

 山口と真田は玄関前で左右に分かれると、達造の姿を求めて歩きだした。

 玄関前の車寄せから延びる砂利道の私道は、車を回転させることができるようにロータリーになっていた。そのロータリーの脇に沿ってコンクリートブロックが積まれて、塀のような植え込みになっていた。植え込みには山口の胸の高さほどもある躑躅が隙間なく並び、緑の葉を茂らせている。花の盛りの五月には、辺りは一面毒々しいほどの紫色の躑躅の花に埋め尽くされるのだろう。

 植え込みに沿って二十メートルほど歩くと、竹を組んだ小さな枝折戸があった。

 枝折戸を開けて中に入ると、そこは芝生の植えられた中庭になっていて、濡れたように黒い玄武岩の平たい踏み石が敷かれていた。小山のように大きな奇岩が所々に配置されている。奇岩の間を縫うように踏み石は敷かれていて、その先に母屋が見えた。

 母屋の床は地面から五十センチほど高く、中庭に面した部分はウッドデッキが付いていて、階段で中庭に下りることができるようになっている。踏み石はその階段まで延びていた。中庭に面した母屋の壁は、大きなガラス戸になっていて、いまは天井から床まで垂れている白いカーテンに遮られて室内は見えなかった。

 中庭を見回しても人影はなかった。

 山口は階段を上り、ウッドデッキに立つと、ガラス戸に手を掛けた。カギが掛かっているだろうと思いつつ、試しに手に力を込めると、ガラス戸は音もなくスウッと開いた。風が室内に流れ込み、薄いカーテンがフワリと揺れた。

 不法侵入だと騒がれるかなと、山口は一瞬思ったが、そのときはそのときだと腹を括った。軽井沢まできて、何もなしにノコノコと東京へは帰れない。

 山口は室内に向かって声を掛けた。

「どなたかいらっしゃいませんか。私は東京の西中野警察署の山口巡査部長と申します。御手洗達造さんにお話を伺いたくてお訪ねしました。どなたか・・・」

 山口はそこで言葉を呑んだ。鼻が曲がるような腐臭を嗅いだ気がしたのだ。山口はゴクリと生唾を呑み込んでから、視界を遮っている白いカーテンをかき分けた。

 二十畳の居間の中央に大きな一枚板の大理石のテーブルが置かれていて、その周囲をコの字に取り囲むように革張りのソファーが並べられている。

 正面のソファーの上に、パジャマを着てガウンを羽織った達造が座っていた。達造は背中をソファーに預け、頭をのけ反らせるようにして上を向いたまま微動だにしない。

 山口は土足であることも忘れて、居間の中に駆け込んだ。嘔吐を催すような腐臭が山口を包んだ。山口はポケットからハンカチを取り出して鼻と口を覆い、正面のソファーに近づいた。

 達造の頭部やガウンからはだけて見える胸や両手は焼け爛れて真っ黒に変色していて、しかも、至る所に蛆虫が貼り付いてヌメヌメと動いている。

「ウグッ!」

 山口は大声で叫びそうになった衝動を何とか抑えた。途端に胃が痙攣して、身を捩るような激しい嘔吐感がこみ上げてきた。とても我慢できない。山口は咄嗟に達造に背を向けると、ウッドデッキに走り出そうとした。

 いつの間にか、山口の背後に大巌坊が立っていた。

 走り出そうとした山口を、大巌坊は右手を上げて制した。修行で鍛えた太く張りのある声が居間の中に響いた。

「何用かな。断りもなしに入ってくるなど、ただごとではない。お前の姓名を申せ」

「な・・・な・・・何を言っているんだ、あんた・・・。あれが見えないのか、人が死んでいるんだぞ!」

 気が動転している山口は、現在の異常な状況が理解できていない。頭上に頭巾を乗せ、身に袈裟と篠懸を纏い、括袴をはいている大巌坊の姿にまで思いが至らないのだ。

「ああ、あれか。あの男は神罰を受けたのだ。自業自得よ、気にすることはない」

「神罰? あんた、何を・・・まさか、あんたが殺したのか」

 山口の頭に昇っていた血がスウッと引いた。殺人犯と殺人現場で向かい合っているのだ。警察官の本能がムクリと頭をもたげた。殺人犯であれば逮捕しなければならない。殺人犯? あの遺体は死後少なくとも数日は経過している。殺してから殺害現場に数日間も留まっている殺人犯などいない。何かの事情で殺人現場に舞い戻ってきたのかも知れない。

「私は西中野警察署の山口巡査部長だ。殺人の容疑で現行犯・・・ではないのか。とにかく、重要参考人として、あなたの身柄を確保する。軽井沢警察署の巡査も同行しているんだ、大人しくするように。あなたの氏名は?」

 山口は少し腰を落として、注意深く身構えながら大巌坊を見た。山口は柔道四段の猛者だ。身長百六十五センチの小柄な大巌坊が仮に暴れたとしても、組み伏せる自信があった。

 大巌坊は左手に持った錫杖をドンと床に突いた。ジャラリと錫杖の音が響いた。

 山口がビクリと肩を震わせた。

「な、何だ、抵抗する気か。私は柔道四段、そっちがその気なら、痛い目に・・・」

 大巌坊の右手がスウッと上がり、山口の喉を掴んだ。山口は声を失った。なぜか身体を動かすことができない。大巌坊の両目から瞳が消えて、ぽっかりと空いた空洞のような両目の穴は、一面が血塗られたように真っ赤に染まっている。

「儂の名前は大巌坊。熊野で修行をする修験者だった。そしていまは、鏡の中の魔人ギギアハウ様の僕だ。山口といったな。お前の魂をもらう。お前は鏡の世界を永遠にさまようのだ」

 大巌坊は右手で山口の喉を掴んだまま、床の上を滑るように前へ進んだ。山口の身体は糸の切れた操り人形のように力を失って、後ろを向いたまま、大巌坊に引きずられている。山口の両目は恐怖のために、まなじりが切れそうなほど見開かれている。

 白いカーテンをかき分けるようにして、真田巡査がウッドデッキから居間に飛び込んできた。山口の「抵抗する気か」という言葉を耳にして、非常事態だと察したのだ。

「山口さん! どうしました! あっ・・・おい、動くな、動くと撃つぞ!」

 真田は、山口が喉を掴まれて引きずられている姿を見て、腰の拳銃を抜いた。射撃訓練は受けているのだが、現場で拳銃を構えたのは初めてなのだろう、真田の構えた拳銃の銃口がブルブルと震えている。

 大巌坊は振り返って真田を見ると、左手に持った錫杖の石突を真田に向けて、ヤッと気を発した。真田は拳銃を構えたまま、後方に五メートルも吹き飛ばされ、カーテンを引き千切りながら、ウッドデッキに背中から叩きつけられた。

 大巌坊が進む先の北側の壁には、高さが二メートルはあろうかという、大きな鏡が立て掛けられていた。それだけではない、居間の壁には至る所に大小形の違う鏡がびっしりと掛けられていた。北側の壁の大きな暖炉の上や脇にも鏡が置かれている。東側の壁のバーカウンターの上にも、所狭しと鏡が置かれている。西側の壁のガラスケースの中にあった壺や皿や刀剣類は無造作に床の上に放り出されていて、その代わりに、無数の鏡がガラスケースの中に陳列されている。居間の中だけではない、廊下も食堂も寝室も・・・全ての部屋が鏡で埋め尽くされていた。

 大巌坊は歩みを止めることなく大きな鏡に向かった。大巌坊の身体は水面に沈むかのように、大きな鏡の中に溶け入った。鏡面から山口の首を掴んでいる右手だけが突き出ている。その右手もゆっくりと鏡面の中に沈み、それに続いて山口の身体が背中から鏡面の中に沈んだ。鏡面は一瞬撓んだようにぼやけて波紋が広がり、直ぐに元に戻った。

 再び居間の中に駆け込んできた真田の目の前で、山口の身体が大きな鏡の中に引き込まれた。鏡面に沈む直前の山口の驚愕した顔が真田の脳裏に焼き付いた。

「そんな、そんな馬鹿な・・・山口さんが鏡の中に引き込まれた。そんな、そんな・・・」

 真田はヨロヨロとした足取りで、山口が引きまれた大きな鏡の前に進んだ。真田の目の前にある鏡は、真田の呆然とした顔と、背後の居間の風景を映していた。背後の居間の風景の中にも、そこに置かれている無数の鏡が映っている。

 真田は気付いた。

 目の前の鏡面に映っている真田の背後の鏡の中に、山口がいた。

 山口は何かを叫んでいるのか口をパクパクと開き、ガラス戸を叩くかのように、内側から鏡面を叩いている。山口の両目は瞳を失って真っ赤だった。

「ウアアア!」

 真田は腹の底から絞り出すような悲鳴を上げて、大きな鏡に背を向けて走り去った。

 翌日。浅間山の山中をフラフラとさまよっていた真田が捜索隊により保護された。真田は、何を尋ねられても「鏡が、鏡が」と繰り返すだけで、それ以外は何も答えられなかった。その後、医師の診察を受け、何らかの強い衝撃を受けて、精神に異常をきたしたものと診断された。

 捜索隊は、千元谷集落の御手洗達造の別荘で、達造の焼死体を発見した。司法解剖の結果、達造の遺体の状況は、東京都中野区で発見された春山幸吉の焼死体と同様の特徴があることが判明した。

 食事の世話と掃除のために、一日に一度、達造の別荘に通っていたお手伝いの米山美代子が行方不明となっていて、家族から捜索願が出されていることが判明した。二週間にわたる捜索隊の懸命の捜索によっても、米山美代子の所在は判明しなかった。警視庁の小野巡査部長と西中野警察署の山口巡査部長の行方も依然として不明のままである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ