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ep.17

『ちょ…!

如月さん!』

「また来週な」


運転手さんが気を効かせて助手席の窓を開けてくれた。


それ越しに如月さんは別れを告げてくる。


「お客さん、出ますよ」

『あ…はい。

世田谷の三軒茶屋までお願いします』


タクシー運転手に急かされ、私は行先を告げる。


エンジン音を鳴らせて車は発進してしまった。


結局、如月さんに奢られたことになる。


渡した五千円札は数分後にまた手元に戻ってきたのだから。


こうなればもう諦めるしかない。


私は身体を背もたれに預けて自宅に着くまでの数十分、窓の外の景色を眺めた。



—————

—————


pipipi...


自宅に帰宅し、リビングのソファーでまったり過ごしてた頃。


スマホから着信音が鳴った。


画面に表示されているのは〝椎名 菜乃〟


高校の頃の同級生で親友。


三年間連絡はとっていなかった。


苦情の電話だろうか。


《も…もしもし?》

〈美愛!!

一宮くんから聞いたけど、帰ってきてるって本当!?〉

《あー…うん。

ついこの間》

〈なんで連絡よこさないのよー!

友達でしょ!〉

《ごめん…

色々忙しくて…》


彗くん、早速バラしてんじゃん。


なにが『別に俺は蒼に告げ口みたいなこするつもりはないよ』よ。


菜乃には言ってんじゃないの。


〈明日休み?〉

《え、うん》

〈家行っていい?〉

《は?》

〈聞きたいこと山ほどあるし、いいでしょ?〉

《別に家じゃなくても…》

〈外じゃゆっくり話せないじゃん。住所は?〉


私はスマホをテーブルに置いてスピーカーにしながら、菜乃と通話した。


彼女の強引な話し方に少し懐かしさを感じる。


菜乃はいつもこうだ。


底なしに元気な彼女に私は圧倒さてしまう。


住処を聞かれ、仕方なしにマンションの住所を伝えた。


〈近いね〉

《菜乃は変わってない?》

〈うん。目黒。

明日お昼頃行くから。起きててよね〉

《はいはい。

強引なんだから》

〈じゃあね〉


そこで通話は切れた。


一方的に言うことだけ言って騒がしい声は聞こえなくなった。


こうやって菜乃はいつも人を振り回す。


強引で勝手なのだが、何故だか憎めない。


『……しょうがない。

お菓子でも作ろうかな』


私は重い腰を上げて立ち上がる。


人を招くのだから何か用意しないわけにはいかない。


幸い、冷蔵庫には無塩バターがある。


クッキーくらいなら作れそうだ。


気分ではあるが、私はよく休日にお菓子作りに勤しむ時がある。


だから急遽人を招くことになっても大抵の材料は常備してあるのだ。


焼くのは明日にして生地だけ作ろう。


それだけなら三十分くらいできる。


その夜、私はクッキー生地を作ってからベッドに潜り込んだ。

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