俺らの名は。(前編)
今日(投稿日)はエイプリルフール!
ということで――それに合わせて、もしも話ですw
内容はタイトルより、お察し下さいm(_ _)m
※一部キャラ崩壊しています。
苦手な方はUターンを、覚悟を決めた方はそのままお楽しみ下さいw
その違和感を感じたのは目覚めた時からだ。
まず何故に一糸纏わぬ姿なのだ?
たまの猛暑日なんかは、そういう姿で眠る時もあるが、昨日は確かに寝巻きを羽織って床についたはず。
おかしい。と頭を掻く。
次に違和感を覚えたのは、その時だった。
あれ? 俺の髪、こんなに長かったか?
それは腰辺りまで長く、しかも烏の如く黒い。
は?
まだ寝ぼけているのだろうか。
立ち上がろうとするが、その長髪を自分の手で押さえ、倒れてしまう。
――ああっ! もうなんだってんだ!
今度こそ起き上がると、とりあえずその辺に脱ぎ散らかしてあった着物を羽織る。
そういえば、よく見たらこの着物も俺の物ではない。
が、何処かで目にしたような……
まあいい。今はそんな事よりも、しっかりと目を覚まさなければ。
寝ぼけ眼で目を擦りながら、表に出て井戸の水を汲み上げる。そして掌で水をすくい上げ、思いっきりそれを顔にかけた。
冷たい水の感覚が、顔全体に広がっていく。
しかし、この奇妙な違和感は何故か消える気配はない。
もう一度、掌で水をすくい上げると、今度はゴシゴシと力いっぱい擦った。
(――痛っ!!)
と、やたら伸びた口髭が当たる。
おかしい。こんなにも早く伸びるとは。
なんだ? これは夢ではないのか?
そう思い、水面に映るそれを見た――
――!?
「はああああぁぁぁぁ??」
俺の絶叫が、朝の閑静な街中に響き渡った――
***
まだ朝日も昇っていない真っ白な空の下、俺は息を切らしながら、走っている――
とりあえず、確かめなければ。
もしそれがそうなら、あれは、ああなっているはずだ。
閑静な街中を駆け回り、着いた先は、とある家。
――もう既にこの時点で、ほぼ俺の予感は確定しているのだが。
しかし、確かめなければ。この目で、それを見ないことには。
恐る恐る扉を開けてみると、そこには――
「うわぁぁぁぁぁぁ〜!! あぁぁ〜」
と、半狂乱状態に陥りながら、部屋中を駆け回っている"俺"。
いや、正しくは俺の姿をしてる、あいつだ。
(はぁ〜、やはりそういうことか……)
俺は頭を抱え込んだ。
と、俺に気づいた様子の、"俺"が駆け寄ってきて言った。
「あ、 俺! ってことは――"臣"?」
抱えていた頭から手を離すと、俺も力なく答えた。
「ああ、そうだよ……"龍二"」
それは最悪な一日の始まりだった。
***
つまり状況を整理すると――
俺――鞍馬武臣は、現在、俺の所属する「三代目侍」の仲間であり、相棒でもある、この男――衣笠龍二と"心と身体"が入れ替わってしまったのである。
そして、その原因は全くの不明だ。
俺も非常に困惑しているが、今は自分でも驚く程、冷静だ。
それは恐らく、目の前の男がこういう状態だからだろうが――
「わぁぁ〜、臣! 臣! 臣! 臣! どうする? どうする? どうする? どうする――」
「――お前、少し落ち着け」
大体、俺の姿でそんなに取り乱すな。気持ち悪い。
龍二は基本、無口で冷静な性格なのだが、時たまに、おかしな雰囲気になる時がある。
そして、それは俺と一緒に居る時限定なのだが――
どうせ入れ替わるのなら、せめてこいつ以外にして欲しかった。
が、兎に角、今はそんな事を言っている場合ではなかった。
「とりあえず、皆には話す?」
ようやく落ち着きを取り戻した隆二(見た目は俺)が、俺の顔色を伺いながら聞いてきた。
「いや、黙っていた方が無難だろう。騒ぎになるだろうし、下手すれば"うつけ"と思われて、任務を解任されるかも知れない」
「――それは、困るな……俺、この頃、懐具合が厳しいんだよ……」
俺達三代目侍は、この街「市原虎の尾」の総長である鴛鴦丈芳、通称丈さんより任務を受け、それによって報酬を貰っているのだ。
生活していく為には、三代目侍も任務も外される訳にはいかない。
「兎に角、戻る方法を考えるぞ」
俺は腕を組むと、龍二を見据えて言った。
「戻る方法って、どうやって?」
龍二が身を乗り出し聞いてくる。
「ちょっと……いいか?」
俺はそう言って真面目な顔を作ると、龍二の目の前に近付いた。
「えっ……臣……」
「じっとしてろよ……」
覚悟を決めたように、龍二入り俺が静かに目を閉じる。
俺がそっと、その両肩を掴むと、鼓動の音がドクドクと聞こえてきた。
俺はゆっくりと、その顔に自分の顔を近づけていく――
どんどん近くなっていく……
あともう少し……もう少し……お互いその距離、零距離――
――ゴンッッ!!
「――い、痛ったぁぁぁぁ!!」
と、龍二が吹っ飛んでいった。
「ちょっと! 戻る方法って、これかよ?」
龍二がおでこを押さえ、俺の顔を睨みながら言った。
どうやら、相当効いたようだ。俺の頭突きは。
「当たり前だろ。何を期待してたんだよ」
それでも冷静に言葉を返す俺。
「うぐっ……」
それ以上は何も言えなくなった龍二が、顔をほんのり赤らめて口を噤んだ。
いや、ほんと何を考えてたんだ、お前……
***
「くそっ……それにしても、戻らないか……」
俺自身も、じんじんと痛むおでこを擦りながら言った。
衝撃を与えれば戻ると思っていた初歩的な考えは、通じなかったようだ。
「――いや、もしかしたら、"当て所"が違うだけかも知れない。おい、龍二……」
「ええっ! まだやるの? もう嫌だよ〜」
「ああっ! 待てって!」
怯えて逃げる龍二を追いかける俺。
これ、完全にいつもと逆転してるよな――見た目的には、そのままだが。
閑静な街中にドタドタと響く騒音――
そして、しばらく経った時。
「おーい! 鞍馬く〜ん! なんか、不審音がするって、街の人から通報があったんだ……け、ど――」
通報を受け、この国の治安を守る最強の侍一味「朱雀」の一員である滝野鷹寛さんが訪ねてきた。が、
(あ…………)
今の俺らの状態といえば、俺が仰向けになった龍二に馬乗りになっている――つまりは、衣笠龍二が仰向けになった鞍馬武臣に馬乗りになっている。
「あっ! ごめん! お取り込み中の所、失礼しましたぁ〜!!」
見てはいけないものを見た。そんな様子で、そそくさと逃げ帰る鷹寛さん。
(いや、待て! これは紛れもない誤解だ!)
俺は慌ててその後を追うが、外に出ても、もうその姿は何処にもなかった。
よりによって、一番見られたくない奴に見られた。
鷹寛さんは朱雀の中でも一番、口が軽い。一体、何を言われるか分かったものじゃない。
(終わった……)
俺は地面にへたりと跪くと、再び頭を抱え込んだ。
***
俺は再び、自分の家に戻ると、龍二が心配そうな顔で待っていた。
「大丈夫――?」
「まあ、諸々のことは後で考えればいい」
俺は頭を掻きむしりながら言った。
兎に角、鷹寛さんのことは後回しだ。
今はそれよりも――
「そういえば時間、やばいんじゃないか?」
「ああっ! ほんとだ! だけど、この姿で行くのか?」
毎朝、卯の上刻(※午前五時)より、三代目侍全員で集まり、修行をするのだ。
まあ、俺らはいつもの如く、遅刻して行くので、毎度隊長である朝霧綾人さんから説教を食らっているのだが。
「仕方ない。遅刻は毎度だが、流石に欠席する訳にはいかないだろう……この姿でやり過ごすしかない」
「上手く出来るかな……」
「やってもらうしかない。何とか皆に悟られずに過ごそう。いいか、お前は俺だ。今日一日、お前は鞍馬武臣だ」
自信なさげな龍二に、俺は強く忠告したのであった。
こくん。と龍二が頷くと、ふと俺の顔を見て言った。
「とりあえず、お前のその髪、きちんと一つに纏めてくれるかな? まるで落武者みたいで、俺の美顔を損ねる」
龍二が怪訝な顔をする。
確かに龍二はいつも、この馬の尾のように長い髪を、綺麗に一つに纏めている。
俺にはその習慣がないので、気にはしていなかったが、それなら俺にだって言いたい事はある。
「お前こそ、爆発した玉葱みたいになってるじゃないか!」
対する龍二の髪型(つまり俺の髪型)は、いつも後ろに固めている黄金色の髪が、無造作に広がり、正しく爆発した玉葱のようになっているのだった。
「ぶはははっ! 玉葱って……その例え最高!」
俺の例えに、龍二がツボに入ったのか、腹を抱えて笑い出した。
「いや、笑い事じゃねぇよ……」
この状況の中、呑気な奴だ。
「大体、何でお前、寝るとき全裸なんだよ」
ふと、俺は疑問に思っていた事を聞いてみた。
その途端、龍二が笑いを止め、俺を不審者でも見るかのような目つきで見てきた。
「お前――俺の裸見たのか!? 変態っ!!」
「いや、お前に言われたくないわ!」
暫し、くだらない言い合いを繰り広げ、結局、集合時間を大幅に過ぎながらも、俺達は朝の修行に向かったのだった――
こんな感じで番外編、ゆるーく時に真面目に
スタートです!!




