その拾伍―復活―
残る敵は数える程だが、どれも一筋縄ではいかない猛者ばかりである。
流石にこれを一人一人相手にするのは、中々骨が折れるだろう。
「ここは俺に任せろ――」
そう言って、迫り来る敵陣の前に躍り出たのは――直樹である。
「直樹っ!? 大丈夫なのか!? 」
綾人の心配をよそに直樹は右手で大刀、車駐を振りかぶる。
重量にして人一人分程もあるそれを持った右腕は、右肩から二の腕にかけて筋肉が赤土のように盛り上がり、はち切れんばかりであった。
――ズン!!!!
巨大なそれを、敵の眼の前で突き立てた――
その衝撃で地がグラグラと傾き、釣り合いを失った敵が地に転がった。
その瞬間――
地に突き立てた部分から、僅かに罅が刻まれたかと思うと、
――ゴオオオオオォォォォ!!!!
凄まじい轟音を立てながら、地面が一町(※百メートル)程にも渡って真っ二つに裂けたのである。
それによって殆どの敵陣は、奈落の底へと堕ちていった――
「よし。これでだいぶ減ったな――」
直樹は地に刺した車駐を引き抜くと、ブンと振り右肩にかける。
「すげぇ……」
直樹の圧倒的な力に、思わず声が零れる一同。
「ほら、余所見している暇はないぞ」
一人冷静な直樹の声に、はっと我に返るのだった。
直樹の言葉通り、残った敵が迫って来ている――
「よしっ! それじゃあ俺達も、いっちょ暴れますか――」
意味深な笑みを浮かべながら、綾人が言った。
皆も頷くと、眼の前の敵を見据え、一斉に走り出したのだった――
***
――カキン!!カキン!!
軽快な金属音を立て、まるで一角獣の如く地を駆け、獲物を仕留めるように両手の二刀を振るうのは――英莉衣だ。
筋骨の逞しい小麦色の体の割には俊敏で、尚且つ予測出来ない動きをみせる英莉衣に、敵は忽ちに東錦と綾錦の餌食となるのだった――
その隣で同じく飛ぶ燕を落とす勢いで、刀を振るうのは――綾人。
「やああぁぁぁっ!!」
小柄だが肉の締まった体つきに、甲高い気合声を発して愛刀、雨情枝垂を匠に操り、一人たりとも逃すことなく打ち据えていく――
一方の健二郎も負けてはいない。
ずっと恭徳を背負ったままにも関わらず、疲れの色一つ見せずに、右手の愛刀、梔子を振り回している――
健二郎が激しく動く度に、がら空きになった厚い胸板が見え隠れするのだった。
その時だった――
「やあああっ!!」
いつの間にか回り込んでいた敵が、健二郎の背後を襲う――
「なにっ――!?」
健二郎が身を翻し刀を受けようとするが間に合わない――
(――あかん! 避けきれん!!)
その瞬間――
――ずっと眠っていた恭徳が、突然カッと目を見開き、瞬時に愛刀、暁を抜きざしに猛刃を受け払ったのだ。
「おおっ!? おおおおおぉぉ」
あまりにも一瞬の出来事だった為、状況を理解するのに時間がかかっている様子の健二郎。
「恭徳! お前起きとったんか!?」
「ええ、今しがた。野生の勘ってやつですね。ですが――」
そう言っている間にも斬りこんでくる敵を払いながら、
「身体の方はまだ十分には――」
「ほな、そのまま乗っときや!」
「すいません。まだ暫くお世話になります」
「お前、なんか急に素直になったな。気持ち悪いで」
そう言う健二郎だが、恭徳が目覚めたことに嬉しさを隠しきれず、僅かに口端を上げた。
何れにせよ恭徳も目覚め、これで三代目侍、七人全員勢揃いしたのだった――
***
「それにしても、皆さん。何故、上半身裸なんですか?」
ふと恭徳が、健二郎に向かって聞いた。
「ん? これはまあ、所謂気合ってやつや!」
「気合ですか――分かりました。では、ちょっと失礼――」
そう言って恭徳も上衣を脱ぎ捨てた。
矮躯ながらも、張りつめたような筋肉で覆われている肉体が露になる。
「おいおい。これ画的に大丈夫か?」
確かに上半身裸体の男二人、おんぶしている姿は、傍から見れば色々な想像を掻き立てられなくもないが、
「大丈夫です。この状況の中、そんなことを気にしている人はいません!」
そんな心配をばっさりと切り捨てる恭徳。
「おっ、おう! じゃあ背後は任せたぞ!」
「はい!」
健二郎と恭徳――恭健
ある意味、一心同体の最強の二人が誕生したのだった――
そんな二人の様子を、敵と向かい撃ちながらも確認した一同は、
(良かった――恭徳も大丈夫みたいだな)
ほっと胸をなでおろした。
恭徳も復活し、三代目侍は益々、その勢いを増していくのであった――
遂に恭徳復活――!!
七人全員揃った三代目侍の勢いは留まることを知らない。
次回、遂に武士櫻の闘い大詰め!!




