八、目的
奏多の後を追って部屋を出た鳴瀬は頭を悩ませていた。
あの年代の沙琶の少女とはああいうものなのか。
玖穩では生年月日を知っているのは当然のことだし、自分はそれが普通だと思っていた。
あの少女の他にも捕虜がいたことがあったが、皆ためらいもなく名は名乗ったし、階級も生年月日も答えていた。
見たところ十代、一人と同じような年頃だという印象をうけた。
今までの戦の状況から考えると、この国でめっぽう強いと言われる一人が太刀打ちできるかは怪しい。その上官の自分でさえも正直怪しい。
それほど能力があるのに、少女は不当な扱いをうけていたのではないか。
「鳴瀬?」
少し前を歩いていた一人が呼びかけてきた。
その前を歩いていた奏多もこちらを見ている。
「奏多、お前はあいつをどうするんだ?
戦力にでもするつもりか?」
呆れたような顔をして奏多は鳴瀬のもとへと近づく。
「鳴瀬はそれしか考えられないの?口を開けば仕事のことしか話さないんだからさ…」
一人はそれを聞いた瞬間に大声で笑い始める。それを見た鳴瀬は今にも抜刀しそうな勢いだ。
穏やかな笑みを浮かべつつ奏多は話を続ける。
「戦力になんてするつもりは毛頭ないよ」
戦力にするつもりがない、鳴瀬は一瞬己の主の言葉が理解できず困惑した表情だ。
沙芭で一番の腕を持つ少女だというのにどうするのか
容姿が整っているとはいえ、まさか嫁に…などということは有り得ないはずだ。
「どうするの?」
一人が無邪気に問う
「あんまり考えていなかったなー…強いて言うなら嫁?」
嫁、と確かにこの若き王は言ったのか。敵国の女を嫁にするなどとは殺してくれと言っているようなものだ。
いつからこの王は馬鹿になったのか。
隣で嬉しそうにしている一人も一人だ。普通は驚くなりいさめるなりするだろうに。
ストレスだ。胃が痛い。仕事を変えないと胃に穴があきそうだ。
鳴瀬の様子に見向きもしない奏多と一人は、玖穏の少女の話題で持ちきりなのだった。




