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彼と彼女の儀式  作者: 葉月スピカ


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雪乃①

彼女と初めて会ったのは大学の文芸部の部室だった。


当時、わたしは三年で彼女は新入生。

お決まりのサークル見学の喧騒の中、覗きに来た冷やかしの一人だろうくらいの感覚でいたのだけど、彼女のことは印象に残った。うちの部に来る子はだいたい二パターンに別れていて、オタク気質が強く対人コミュニケーションに癖がある子と、それ以外。後者はわりと少ないから気になったのかもしれない。個性的な顔立ちだけど黒目がちの大きな瞳でまっすぐに人を見るので、人を惹きつける雰囲気のある子だなと思った。少し会話して、この子がうちに入ったらトラブルになるかもなと思ったのも覚えてる。結果的にそうはならなかったけれど。


なぜ急に彼女のことを思い出したかというと、病院の待合でなんとなく眺めていたテレビのワイドショーで有名タレントの不倫スキャンダルを取り上げていて、週刊誌の記事で不倫相手とされていた一般女性が、彼女に見えたからだ。顔にはモザイクがかけてあったし画像は粗かったのでどこがどうとはうまく言えないけれど妙に似てるなと思って、デジタル記事で写真をチェックしてみて間違いないと思った。背景はぼかされていたけど彼女が肩からかけているバッグ、あれは彼女のハンドメイドのバッグだ。最後に会った時も持っていたもの。ターコイズのネックレスもピアスも彼女がよくつけていたお気に入りのもので、あれも確か彼女のハンドメイド。販売サイトも持っているしそれ用のインスタもやっている。たまに見に行っているからすぐわかった。


最後に会ったのはあの奇妙な依頼をされた春かな。

「雪乃先輩にしか頼めない」とかなんとか調子良いことを言ってきて、でもいつになく切実な目をしていたから断れず引き受けたのだった。あれは、なんだったんだろう。難しいことじゃない。ただ手打ち原稿を打ち直すだけの作業。なぜ自分でしないのかと、喉元まででかかった。でも、聞けなかった。彼女が、何も聞いてくれるなオーラを出していたから。


それにしても、あれから彼女に何があったのだろう。

なぜ、20歳も年上の既婚者との不倫騒ぎになんて巻き込まれているんだろう。


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