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アリアの青春(前)

名前が色々出てきていますがご容赦くださいませ。オリジナル以外の元々のゲームキャラ名も多数あります。

「まあアリアさん、上手く変装したわね」


「レアさんのお蔭です。色々アドバイスありがとうございます」


剣術や武者修行で強くなったのはいいけれど、街を歩く度に辻試合を申し込まれるのには、ほとほと困ってしまっている。断れば戦闘評価が下がってしまうし、反対に勝てば上がってしまう。正直もう数値の変動は要らないのだ。


そのことをふとしたきっかけで仕立屋のレアさんにこぼしたら、変装すればいいと助言を貰った。


仕立屋のマールさんの親戚だというレアさんは、すごく才覚のある人だと思う。レアさんがお店に来てからとても立ち寄り易くなった。庶民でも手軽に買えるシンプルな服をどんどん出して人気だ。帽子、スカーフやストール、リボンなど小物も扱ってくれるようになったので、服が地味でも色々着こなしが出来るようになったのが嬉しい。


今日は髪をおさげにして帽子を被り、ワンピースにカーディガンとお淑やかなお嬢さん風でまとめている。


「レアさん、頼んでいた物ありますか?」


「ええ、これがそうよ。お役に立てて嬉しいわ」


そう言うと、仕立てる時に余った端切れ布を大量に出してきてくれた。

これは教会のシスターに頼まれた、バザーに出すクッキーを包む為の布だ。リボンも作って結ぶと可愛いかもしれない。


布が入った袋を抱え、お礼を言って店を出た。重いけど筋力ならあるから大丈夫(汗)



「あら、アリアちゃん。小説の新刊出たわよ」


「アリア殿、面白い武器が入ったから見ていかないか?」


「アリア、今日のラッキーカラーは紫じゃ。おお、ラベンダー色の服を着ておったか、よいよい」


「アリアさん、教会へは明日行くわ」


ひゃ~、いっぺんに喋らないで~(汗)

小物屋の前でお掃除をしてたアルバイトのハーシェルさんに、武器屋の店前で煙草を燻らユピテルさん。あ、この人店主ゼノさんの師匠だって。そしてニューフェイスな占い師のルナさん、料理屋の店員のメルさん。勢揃いね。

みんな仲良くしてもらってる街店の人達だ。


「ハーシェルさん、後で買います。取り置きお願い。ユピテルさん、私トゲトゲのメイスなんて買いませんからね。ルナさん、タダで教えちゃダメですよ~! メルさん、教会の方達にクッキー作りの指導、宜しく頼みますね」


手を振って別れると、みんなも振り返してくれた。みんな笑顔だ、ほっこりする。


これから教会に行く。私は今、教会でボランティアをしたり、詩文を習ったり、舞踏を習ったりしている。それから時々武者修行に出たり、お父さんと旅行に行ったり、結構忙しい。でも毎日が充実していて遣り甲斐があるわ。


鼻歌まじりで歩いていたら、不意に声をかけられた。


「おい、お前。顔をよく見せろ」


振り返ると、脳筋の代表みたいなドン・レオ・ジョナサンがいた。やだ!この人昔からよく辻試合申し込んでくるのよね。困ったな、気付かれたのかしら。

対応にあぐねてたら、そっと肩を叩かれる。ふわっと良い香りがして、さらりとした緩やかな巻き髪が横をすり抜け、庇う様に私の前に立った。


「貴方、何処の破落戸ですの。淑女に向かって顔をよく見せろなどと。警備隊の方々を呼びますわよ」


凛とした声に問い質され、流石の脳筋戦士もたじろいだ。


「く・・・くそっ、人間違いだ」


捨て台詞と共に去って行く後ろ姿に安堵する。


「イナンナ先生、ありがとうございます」


「いいのよ、辻試合だなんて本当にこの街の悪癖だわ。カロンに言って見回り強化させなきゃ。アリア、余裕があったら、また講習にいらっしゃいね」


にこりと微笑むと先生は先を行った。イナンナ先生は新しく詩文と舞踏を兼任されている先生だ。まさに淑女の鑑。素敵だなぁ、私もあんな風になりたいって思ってしまう。気を取り直して、私も教会へ向かった。そうそう、カロンさんは先生の遠縁にあたる人でこの街の警備隊長だ。ちょっとマイペースな感じの人で、先生はいつもお小言を言っている。


それにしても筋力で重たいのは平気だけど、嵩張って視界が見辛いのがちょっと・・(汗)苦労しいしいなんとか教会まで辿り着いた。ふう、輸送完了。 


「アリア、ご苦労だった。作業の前に一息つくがよい」


「ありがとうございます、シスターパラス」


自らお茶を入れてくださるこの方は、元貴族のやんごとなき方だと、シスターリィは仰っていた。新人だけど高貴な出ということもあり、教会の方々からはちょっと煙たがられている。


でも、とても良い人なのだ。

教会でボランティア活動が大々的に始まったのも、孤児院との連携が密になったのも、この方の提案だ。

シスターリィはその手腕にとても好意的だ。二人は協力していろいろ改革をしているみたい。シスターパラスも出自の力を遠慮なく使い動いている。すごい人なのだ。


紅茶の良い香りに口が緩む。シスター達のお試しクッキーもまあまあ美味しい(汗)大丈夫、明日メルさんの指導が入ったらもっと美味しいはず。


まあまあと言いつつ、お腹が空いてたらしく、手が止まらない。ああ、ジャムも欲しいわ、mgmg・・


「なんだ全部食べてしまったのか?」


「んg、ごほっ、ごほっ、!! 」


後ろからいきなり顔の横から覗き込まれて、盛大にむせてしまった。シスターパラスが溜息混じりに背中をさすってくれた。


「大丈夫かえ? ほれ、紅茶を飲みなさい。やれやれファーモス殿、乙女の顔を覗き込むなど不埒じゃぞ」


「はは、すまない。アリアが小さい頃からうちに通ってたから、つい」


「もう、ついじゃないです、ファーモス先生。私もう16歳ですよ。後半月で17歳なんですからね!」


「ごめん、ごめん。そうかアリアも17歳か。あっと言う間だな」


悪びれず、にこやかに笑うこの人は、この街のお医者さんである。前任のロンバルディーニ先生の評判があまりにも残念というか藪なので、町民の意思で御退去頂いた後来たのがファーモス先生だ。来た時、20歳そこそこだったので、みんなまた藪か、と警戒したけれど、先生の腕は確かだった。


おまけに、薬草を自ら採取したりして治療費を抑えるなど、今では街の恩師みたいになっている。先生は、希望者には定期健診といって、格安で軽く健診してくれる。私は洋子さんの勧めもあり、年に何回か行っているし、武者修行で時々薬草採取してる先生に遭遇する時がある。


そう、小さい頃からお世話になっているのだ。


先生は多分、孤児院で子供たちの健診を終え教会に報告に来たのだと思う。シスターパラスが先生にもお茶を入れて、3人でのんびりお茶を飲んだ。ぽつりぽつり話す先生の言葉が止まった?と思ったら、


(え、寝てる?)


シスターが口に指を立てて手招くので、そっと腰を浮かし作業に勤しむべく立ち上がった。ふと寝てる先生の横顔を眺めたら、あらら、まつ毛長~い、意外、あ でも、先生って地味に見えるけど顔立ちは整ってるのよね。あれ、目の下うっすら隈がある。顔色もあまり良くない?・・・


心配だけど、グズグズしてる場合じゃないので、席を立ち、みんなの作業してる場に向かう。


夕方まで、端切れ布の端を縫い形を揃える作業をこなした。作業をしながら、シスターがファーモス先生の事を話してくれた。先生は若いから大丈夫と、着任した当時から無理に無理を重ねていたのだという。お金の無い人にも治療をというのは、そんなに簡単なことではないのだという。


本当は、貧乏な医師には、財力のある王侯貴族が資金を提供するのが務めだとシスターは苦い顔で語った。つまり王侯貴族の殆どは知らん顔なのね。シスターは元公爵家の御令嬢で、若い頃から慈善活動に熱心で、結婚をせず出家したのだという。親はカンカンだというが、幸い兄妹もおり、ついでにシスターに釣り合う年齢の御令息もいなかったので勘当はされなかったそうだ。


ん、勘当に拘る人だっけ? そう思ったら、人の悪い笑顔で囁いた。親は金づる、せいぜい公共福祉に金を吐かせるのだと。成程・・・良い笑顔だわ。最近はファーモス先生の体調を見かねて、お金の行き先を先生の方にも回すようにしたそうなのだ。


(先生ったら、そんな無理してたなんて知らなかった。よし、私もひと肌脱ぐわ。薬草採取に行くわよ!)


帰り支度をしていたら、先生も欠伸がてら立ち上がった。


「アリア、もう暗いから送っていくよ」


「先生、お目覚めですね。お疲れ様です。私、協力しますから、大船に乗ったつもりで待っていてください!」


「え? え? え? 何言ってんのかな。ちょっとよく分からないんだけど、シスター、笑ってないで何とか言ってww」


(私、みんなの事が大好き、この街が好き、だから私もみんなの為にいっぱい協力するからね♪)




私の中の洋子さんが、生暖かく見守っていた事を私は知らない(汗)


色々解放されて明るくなったら、熱血娘になってしまったのかな?(汗)

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