17話 俺の噂話?
17話 俺の噂話?
「そんな物がおるはずはないではないか。 バカバカしい」
村に戻って早々にサムリクに報告したのだが、まともに聞いてくれようとしない。
サムリクは村長として、そのような理解不能な危機が迫っていることを認めたくないのだろう。
「しかしサムリク様、ドニクたちの傷をご覧になったでしょう? 巨大ズブグクがいると考えると、納得できます。 確かにズブグクの足跡でした」
「足跡だけで何が分かるというのだ! もっと確実な証拠を持ってこい!」
それ以上は効く耳を持たず、ダムダを残して奥に入って行ってしまった。
◇◇◇◇
結局、ズブグクの化け物が本当に居るのか、どれくらいの大きさなのかを知る必要があると言う事で、探しに行く事になった。
次の日、サムトが何人か集めて来てくれ、俺とガルヤとアスト、ツーラとサムト、キムルとダムダの三組に両方の村から何人か加わり、八人ずつのチームで捜索する事になった。
捜索場所は俺とガルヤ達が二人の遺体のあった東の森を中心に、ツーラ達がターンナックへ帰る道ある南の森、キルム達がその反対側の北の森を捜索し、ズブグクが出た場所の村を挟んだ反対側にある西の森には、いないだろうと言う事で外された。
出発前にガルヤが全員に念を押す。
「くれぐれも見るだけで手を出すな! あれが本当にズブグクの足跡なら、今は奴を倒す術は多分ない。 見つかったら逃げろ! いいな。 本当にそんな化け物がいるのかを確認するだけだ!」
「おうっ!」
全員が声を出し、出発した。
◇
俺達は東の森をゆっくり見回しながら進んでいた。
「10タールもあれば、低木の上から頭が出ているはずだ。よく見ろ」
しかし以前の襲撃場所を過ぎても何の手がかりもなく、時間だけが過ぎていった。
俺がアンを連れて少し先を探している間、俺の知らないところでガルヤとアストが話しをしていた。
「ガルヤさん、ケントさんってどんな人なのですか?」
「ん? ケントか? あいつは凄い奴だ。 足はアミより早い。 力も俺より強い。 何と言っても、この俺を一発で倒すんだからな」
「ガ···ガルヤさんを?」
ガルヤは頭を掻きながら頷く。
「だけどケントの本当の強さは、力なんかじゃない。 責任感の強さだ」
「責任感?」
「ああそうだ。 腕を失くした神だのケント様だのと、周りからいくら崇められても少しも偉ぶる事もなく、いつも自分に何が出来るかを考えている。 自分はみんなを守る責任があると思っているのかもな。 危険など顧みずに、他人の為に突っ走る。 だからちょっと危なっかしいけどな。」
「そうなんですか」
「ケントは自分の事などこれっぽっちも考えちゃいない。 絶対にターンナックの人全員を守るんだ!と思っているようだ。 いや、ターンナックの人だけじゃなくて、全てのボルナック族を守らないといけないと思っているんだ。 そんな奴なんだケントは」
「そうですか。 もっとよくケントさんの事を知りたいですね。 私でも友達になってくれるでしょうか」
「あたりまえだ。 知れば知るほどアストもケントが好きになるぞ」
「はい、そうですね」
そんな会話があったとは知らない俺の近くに、アストはタムを走らせてきた。
◇
同じような会話がキムルとダムダの間でも交わされていた。
「キムルさん、ハクの襲撃の時の話は本当なのですか」
「ケントさんの事を言っているのか?」
「はい。 いいですね、ターンナックには凄い守り神がいて」
「ケントさんは神じゃない。 人並み外れた力を持ち、頭脳も明晰だが、唯の人なんだ」
キムルの予想外の反応に、ダムダは戸惑いを感じた。
「ケントさんは他人の痛みを自分の事のように感じる人なんだ。
まだケントさんがターンナックに来て間もない頃の事だ。 一人の子供がいなくなった。
森で血が見つかったからもう生きてはいないと判断した。 当然のことだがその子供の母親がとても悲しんでいた。 俺達にはよくある事だった。 しかしその母親を見つめる彼は自分の不甲斐なさを悔やんで泣いていたよ。
彼のいないところで襲われたのに······顔も知らない子供なのに······」
ダムダは黙って、聞いていた。
「ケントは何もかも自分一人で背負い込もうとする。 だから俺達が側にいて彼を助けてあげないといけないんだ。 放っておくと落ち込んだり突っ走ったり、本当に忙しい奴だからな」
キムルが何を言おうとしているのかが分かり、ダムダはニッコリと笑った。
「いい仲間なのですね」
キムルははっとしてダムダを見た。 それからキムルもニッコリと笑った。
「ああ、本当にいい仲間だ」
◇
ツーラもサムトから同じ質問を受けた。
「ケントは、どんな人なのですか?」
サムトが聞くと、ツーラがいきなりサムトの胸倉を掴んだ。
普段、笑いもしないが滅多に怒る事のないツーラが怒りを露わにしたのを見て、他の者もビックリして二人を見つめる。
「ケントを呼び捨てにしていいのは、俺達と家族だけだ!」
「す······すみません」
サムトが大人しく謝ったので、ツーラは手を離す。
「ケント殿は、どんな人なのですか?」
サムトは改めて聞いた。
「一言でいうと、俺達の守り神だな」
「知っています。 腕を失くした神でしょ?」
「違う! あんな伝説じゃない! ケントはケントだ」
サムトも周りの者も首を捻る。
「俺は腕を失くした神の伝説など信じていない。 ガルヤとキムルもだ。 まあ、ガルヤは少し意味合いが違うが······」
「どういう事ですか?」
「いや······何でもない。 俺達は昔から腕を失くした神とやらの伝説を認めなかった。 ケントが村に来た時も俺達は反発した。 しかし一緒にいるようになって分かった」
ツーラには珍しく、よくしゃべった。
「確かにケントは人並み外れた知力と体力を持っているが、俺達とは着目点が違うんだ」
「着目点?」
「ああ。 そのおかげで俺達は何度も助けられた」
「でも、ターンナックで一番頭が切れるのは、ツーラさんだと聞きました」
後ろから、ツーラたちの話を聞いていたナムルトが話に入って来た。
「ははは、俺なんてたいした事はない。 ケントは自分では自覚していないが、確かに彼は俺達の守り神なんだ。 他人を助ける為なら何だってする。 必死で考え、解決策を考え出してくる。 ケントにとっては、自分より他の人の方が大切なんだ」
「凄い人というよりも、本当に優しい人なんですね」
「当り前だ。 とにかく、今はズブグクの化け物を探すのが先決だ。 みんな、注意を怠るな」
「「「はい!」」」
しかし、その日も次の日も、収穫は無かった。
ガルヤ達は、ケントを本当に信頼しているのですね。( =^ω^)




