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魔法が使えないエルフと最強魔法使いの冒険譚  作者: タライ
トント王国編
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鑑定士さんおねしゃす!

 貧民街の防具屋。

 冒険者ギルドのすぐそばに併設されているギルド管轄の施設で、冒険者はここで防具の発注や購入ができる。

 ある一定の素地を渡せば特注の装備を作ってもらうことも可能だ。

 そんなお店の中で一体何をしているのかというと……。


「ねぇ、カイト」

「なんだ?」

「これいつまでかかるの?」

「知らない黙って検査を受けな」

「もう動きたいんですけど」


 アリのクエストが完了した報告をギルド側にしたのちに、ジャージから発せられた謎の光の現況を調べるためにこうして防具屋に立ち寄ったのだ。

 防具屋のおじさんは鑑定の魔法を使っているが、鑑定するものによって鑑定時間が伸びるらしい。

 そしてここにきてから実に……3時間が経過していた。

 鑑定の魔法を使っている間はセレスは身動き一つとれないため、非常に窮屈そうに座っている。

 そしてアリはというと、防具屋の中に陳列されている高そうな防具をちらっとみて、そして俺をちらっと見やるというあからさまなおごってムーブをかましてきていたので、握りこぶしでも叩き込んでやろうと思ったが……生憎俺らは条件ありの仲間となった。

 そしてこの条件はアリ断れば簡単に終わる内容のものだ。

 アリに仲間でいてもらうためにも、できる限りご機嫌でいてもらいたい。

 

「はぁ、好きなもの買うから適当に見ててくれ」

「やったニャ!」


 俺の許可が出た瞬間からアリは陳列されている防具の中でもかなり高価なものが置かれている棚のほうに行きやがる。

 あの猫……後で覚えてろよ。

 俺が調子乗った愚猫に後でどんな制裁をくれてやろうかと考えいたとき。


「あんちゃん、鑑定終わったぞ」


 鑑定のほうが終了して、そして防具屋のおっちゃんの顔つきがかなり興奮しているようだった。

 なんだろう、やっぱりかなりレアな装備だったとかか?

 まぁ、仮にも神の作ったダンジョンの最奥にあったものだ。

 神器級の装備だったのだろう、まぁ見た目はただのジャージだけど。


「にしてもこのお姉ちゃんエロイなぁ!もうこのたぷんたぷんの乳房とかたまらんのおお!!」


 違ったセレスに対して興奮しているだけだった。

 自分の容姿を誉められたセレスは俺の顔を見てどや顔を決めてくる。


「セレスうるさい」

「私はなにも言ってないじゃない!」

「顔がうるさい」

「失礼しちゃうわ!っていうかそれよりもこのエロじじーに怒りなさいよ!今のは完全にセクハラでしょう!」

「おいおい、男がお前の体つきをみてエロイと思うのは普通のことだ、おじさんを責めるなこの他責エルフめ」

「なんでよ!!」


 喚き散らすセレスのことを隅に置いて俺はおっちゃんのほうを向く。


「そんでおっちゃん、これどうなんだ?」

「おう、そうだな……なんというか、すごい代物ではあるんだが、いかんせん使い道がかなり限られてくる代物でな」

「使い道?」

「まぁ、そうだなあんちゃん、不壊装備ってしってるかい?」

「絶対に壊れることのない装備のことだろ」

「それじゃ、そんでその子の来てる装備はな、その不壊装備に加えて……」


 そこでおっちゃんが言いよどむ、何かよほど言いにくいことでもあるのだろうか。


「いいよおっちゃん気にしないで言ってくれ」

「うむ、そうじゃの、まぁ端的に言って」


 そこでおっちゃんが一息おいて、俺の目をまっすぐと見据えて話す。


「魔力を吸うじゃこの装備、鑑定の魔法も何度か吸われておってのう」

「魔力を吸う装備」

「ふむ、この世界では魔族を除いて、他に自信の魔力を分け与えられる者はおらんのじゃよ」


 まぁ、俺は普通に魔力を分け与えていたけどな……。

 その魔力を分け与えるという部分にも何か条件があったりするのかな?

 ここもいずれ調べてみるか。

 もしかしたらそこにセレスの病気を治す鍵があるかもしれないし。


「だけれども、この装備を身に着けた場合本来なら魔力を再現なく吸われるから常人が着ようものなら、即座に魔力欠乏症になってぶっ倒れるはずなんだのう」


 ……おっと。

 そこで俺とセレスの顔に一筋の冷や汗が流れる。

 もしやこの装備を着れるのって、魔力が無限の俺か……魔力のないセレスくらいなんじゃ。


「でも見たところ、お仲間のエルフさんは無事なようだし……もしや」

「ぁあああ!セレス!俺用事!そう用事を思い出したから!」

「まってカイト!逃がさないわよ!落ちていくときは二人で一緒に落ちようって約束したじゃない!」

「そんな約束はしてない!知らない!放せこらー!!」


 醜い姿をさらす俺とセレスに対しておっちゃんは淡々と話す。


「もしかして、お仲間のエルフさん、とんでもない魔力量なのでは?まるでトント王国の懐刀ともいわれる、マーヒャード家のようだのう」


 なんだそのいかにも名家ですよ的な名前の奴ら。

 俺はてっきりセレスに魔力がないことがバレたんじゃないかと思ってひやひやしたぞ。

 冷や汗をふき取って、おっちゃんの方を向く。


「まったくおっちゃんも冗談がきちぃって、さっきまで俺と言い合いしてたこのおバカなエルフがそんな名家っぽそうな家の出なわけないでしょうよ」

「なんですって!」

「それもそうですね」

「あんたも失礼ね!」


 俺はおっちゃんに鑑定料を払って、時間がかかった分気持ち多めに料金を手渡す。

 それじゃ帰るかと言おうとした瞬間。

 会計の机にドサッと防具が入った箱を置くアリの姿が目に移る。


「カイト~これがいいにゃ~」


 おっちゃんはすぐさまアリが持ってきた防具の料金の計算を始める。

 

「ふむ、合計で20万ゼニーだのう」

「たかっ!?」

「うふふ」


 ご機嫌よさそうな顔で俺のことを見てくるアリ、そんなアリの顔を見てセレスがはっとしたように立ち上がると、店の中をそそくさと見始める。

 嫌な予感がした俺はおっちゃんにすぐさまお会計!っと言ってアリの防具を買おうとするが……。

 おっちゃんが渡したお金を数えている内に……。


「これも!」


 絶対に扱えないであろう剣をレジに置くバカエルフ。


「ふむ……合計で40万だのう」

「おいおっちゃんあんたわざとお金を遅く数えてただろ」

「はてなんのことだかのう」


 白々しい顔をするおっちゃんに俺は思わずグーを入れたくなったがぎりぎりの所で踏みとどまる。

 

「セレス、そんな剣使わないだろ!返して来なさい!」

「えー!何でよー!私鑑定のために3時間も身動き取れなかったのよ!これくらいのご褒美があってもいいじゃん!」

「だったら酒とかにしとけよ!」

「奥の休憩室にわしの秘蔵の酒コレクションがあるんだがのう、一つ100万からじゃ」

「ありがとうおっちゃん!20万ゼニーちゃんとあっただろう!ほらアリ自分の防具は自分で持て!セレス剣は返して来なさい!さぁ帰るぞ!」


 おっちゃんがこれ以上余計なことをいう前に俺は半ば強引にセレスとアリを連れてその場を後にした。



「100万の酒がよかった!!」


 宿屋についてそうそう30万ゼニーほどの酒瓶を抱えてわがままな事を言うセレス。

 俺はそんなわがままな事をいうセレスの酒瓶を魔法で取り上げて窓の外に投げる素振り見せると、セレスが泣きながら「いい子にするから捨てないで!!」と懇願してきたので、仕方なく酒瓶を与える。


「ほら、隅っこのほうで飲んでなさい」

「ううん、下に行って宿屋のおばちゃんと一緒に飲んでくる」

「好きにしな」


 こいつはなんでお酒が手元にあると幼児退行するんだ?

 まぁいい、それはともかくとして……。


「んで、アリ」

「なんだにゃ?」

「これからのこと何だがよ」


 俺が買った防具をニヤニヤしながら眺めるアリ。

 そんなアリが尻尾を揺らしながらこちらをちらっと見てくる。


「カイトは一体何をしたいのかニャ?」

「そうだな……とりあえずはセレスの防具の性能とかを調べたいというのが俺のやりたい事かな?」


 俺は天井に視線を向けて顎をさすりながらこれからの考えをアリに話す。

 まぁ、セレスの装備は確実に神器級だし……なによりあのバカ神の作ったダンジョンの中にあった代物だ。

 それに鑑定の結果、魔力を吸っていると言っていたが、あれはそもそもセレスから吸う魔力がないからセレスに害がないだけなのか……。

 もしも近くにいるだけで魔力が吸われているのなら俺にもその感覚は分かる。

 ふむ……やっぱり適当なクエストに行って、セレスの装備で何が出来るかを調べる必要があるな。


「カイト?」

「あぁ、ごめん、今度さ少し難易度の難しいクエストを受けてきてくれないか?」

「それは別にいいけどニャ、私が受けれるクエストにも一応上限があるわよ?」

「上限というと?」

「そうにゃね~、これを話すためにはまずは冒険者のランク制度について話す必要があるニャ」

「ほほう」

「まず、冒険者にはD、C、B、A、Sと5段階に分かれているニャ、この5段階のランクはクエストにも適応されているニャ、ただクエストはそのランクごとにもそれぞれ危険度が割り振られているニャ、危険度は1から10までで私が受けれるのは危険度7までだニャ、どうだニャ!私すごいニャ」

「ほ~……すまん仕組みはよく分かったが、果たして危険度7まで行けるのがすごい事なのかはちょっとしっくり来ない」

「ふん、これだから知識のないヤツはだめだニャ!いいかニャ!ソロの限界と呼ばれているのがDの危険度8までだニャ!そこは私は大幅に超えている時点で……ってあんた達に言ってもしょうがにゃいニャ……」


 捲し立てるように色々言っていたアリだったが、徐々にその勢いも失くなって消沈する。

 俺はそんなアリを見てふと考えた後……。


「なぁアリ」

「何だニャ?」

「俺らがアリのパーティーに加入したってなったらどこまでいけるか分かる?」


 俺がそう質問した後、アリの猫耳がへにゃっと垂れてアリ自身も目をつむって考え込む、そしてピーンっと猫耳を立てながら目をあけたかと思うと……。


「うへへ~、毎日超豪華なご飯だけを食べられる毎日が待ってるニャ、この人達からお財布を盗んでよかったニャ~」


 目がお金の形にでもなったかと錯覚するほどにお金のことしか考えていないアリ。

 盗んでよかったなどと舐め腐った事をいうアリの尻尾をマリオネットで引っ張る。


「ひにゃ~ん!?」

「なにが盗んでよかっただ、警察に突き出されたくなければしっかり仕事をしなさい」


 まぁ、アリのこの反応をみるからに、かなり高難易度かつ高収入が見込めると見た。

 兎にも角にも……俺らはその後これからの事や連携についての作戦を立てながら、夜も更けて寝ていた所に、一体どれだけ飲んだのか明らかに酒瓶一本ではできない泥酔を身にまとったエルフが俺のベットでそそくさと寝始めて……あまつさえ毛布を取られたものだから、取られた毛布ごとマリオネットで縛って、そのまま窓の外からコウモリさながらの逆さ寝で朝まで放置したのである。


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