第11話 ダンジョン都市
現在ダンジョン都市は増殖中である、これは俺のダンジョンが広くなっていると言う事では無くて、ダンジョン入口付近に出来た街の事で有る。世界中からダンジョンの調査団や観光客が訪れているので、その人間達の受け入れ施設が増えているのだ。俺に関係なくドンドン発展してゆく都市、もう金は十分有るので欲しくないのだが勝手に増えてゆく資産、そして目立ちたくないのに目立ってしまう立場、俺はドツボに嵌ってしまっていたのだ。世の中って奴は俺に関係なくどんどん変わってゆく、ダンジョンの中心は間違いなく俺なのだが、周りの環境は集まって来た人達が作り上げて行くのだった。
「何だか思っていたのと違う・・・・・・」
「一体何を目指していたんですか? マスター」
「平々凡々な生活をしたかったんだがな~、毎日一杯人が来て面倒だ」
現在ダンジョン都市は国際空港を中心として人口30万人の住む街になっていた。国際空港は3千メートル級滑走路を4本持ち、大型の輸送機も楽々離発着出来る空港だった。勿論各国の戦闘機等も何故か駐機してある。そしてアメリカが最新鋭の機体を駐機していると、他の国も負けじと最新鋭機を持って来て飾るものだからこの空港は世界的に有名な空港になった。俺もサーブの新型やイカなんかを見れて大変嬉しかった、各国の首脳には是非とも航空ショウを開催して頂きたいものだ。
そして最初は色々と言って来た日本政府だが、空港の建設、物資の購入そしてダンジョンに訪れる人達が買い物や観光をしだした上に土地の使用料を各国が日本政府に払いだしたので非常に儲かる様になっていた、その結果九州全体が活性化して税収も増えて来ているために抗議のトーンも徐々に下がってきていたのだ。そして問題のダンジョンと言えば、科学者達が話し合って色々なルールが出来上がっていた。
例えばダンジョン内部は化石燃料の乗り物禁止。内部が汚染されるのを防ぐのだそうだ。そして内部の発電は水力発電やソーラーパネル等のクリーンエネルギーのみ。世界最高の科学者と世界中の資本が投入された結果ダンジョン都市は世界最先端の科学技術都市になろうとしていた。元々各国でもトップクラスの科学者連中が集まって来ているので、彼等の最先端に掛ける意欲は凄まじく、この場所を世界最先端の場所にしようと日夜頑張っていたのだ。そして色々な国が集まってる故に、最先端技術が競争が始まり既に世界各国の威信を掛けた先端競争へと進んでいた。そう、唯の田舎の山の奥だった殆ど無価値な山が、今では世界で最も進んだ最先端都市へと変わろうとしていたのだ。
「マスター、科学者チームの代表のロジャー博士が来てますよ」
「何だろな?」
科学者達は地下2階層で色々な物を調べていた、何が面白いのかは分からないがダンジョン内部に有る物を片っ端から調べているのだ。特に気になるのが薬草や毒消し草等医薬品に使えるものであったり、ダンジョンの絶対に壊れない壁で有ったり色々だ。
「ドクター、何か問題でも有ったのかい?」
「問題と言えば問題です、我々の地下2階層の調査が終わりましたので御報告とお願いが・・・・・・」
結局の話ロジャー博士は地下2階層の調査が終わったので、違うところの調査をさせて欲しいと言うお願いだった。そりゃまああれだけ大勢で調査していたら幾ら広い地下2階層でも草1本に至るまで調査が終わるだろう。そこで俺は今まで地下2階層までしか立ち入りを許可していなかった調査領域を地下3階層まで広げることにした。
「なんだ! 此処は!」
地下3階層は元々獣人や亜人様に用意した階層なのだ。だからエルフ用の森であったり、獣人用の草原だったり、はたまた魚人用の湖が有ったりして地下2階層とはまるで違う階層に成っているのだ。
「何故森がこんな所に有るのだ?」
「地下に湖だと」
「川や橋まで有るぞ」
「気にいってくれた様で何よりだ。但し、これより下の階層に降りる事は禁止する、非常に危険なのだ」
科学者達は喜んで地下3階層の調査を始めた、ここには上よりも多くの物が有るので調査団の人間達は大喜びだった、特に好評なのが林檎の様な木だったり、葡萄の様な果物が有ったことだ。地上の物とは違うのだが人間が普通に食べる事が出来るのだ、勿論地下2階に有った小麦の様な物も普通に人間が食べる事が出来た。しかし、このダンジョン産の植物はダンジョンから持ち出すと枯れてしまうという特性を持っていた為に地上では増やすことも栽培する事も出来ない不思議な植物だった。だがこの謎を解明出来れば、人類の食料難を解決する糸口になるかも知れない為に、各国は必死に研究を進めていたのだった。
そして俺は、遺伝子や植物の研究など全然分からないので、毎日ダンジョンの中をフラフラして色々な屋台で買い食いをして楽しんでいたのだった。周りの人間からは能天気な変な奴と親しみを持たれて半分馬鹿にされていた様だった。
まあここだけ見るとダンジョンは平和で良いね~て思うのだが。光あるとこには影が有るって事は常識で、このダンジョンには色々な影が存在しているのだ、それも世界で最も優秀で残虐な影たちが水面下で活動しているのだ。そしてそういう場面でこそ俺みたいな壊れた人間が活躍する場なのだ。
「マスター、地下4階部分に侵入者です」
「クククク、立ち入り禁止と言えば必ず来ると思ったぞ阿呆共」
「流石はマスター、人が悪いですな。吾輩尊敬致します」
「私が切り捨てて来ようか?」
「まあ待て、あいつらの実力が知りたい。あの国の特殊部隊がどの程度なのかな」
ダンジョンの調査団は世界の最先端技術を持っているので、その情報は各国共に興味を持っている。そして技術を持たない国は最先端技術を手に入れる為に多数のスパイを紛れ込ませていた。元々日本はスパイに対して異常に甘い国なので、国中のスパイがダンジョンに集結しているのだ。そして俺はスパイには辛い人間だった、軍部に対するスパイって奴は通常バレれば死刑なのだ。この場合は産業スパイかもしれないが、俺にとっては同じ事、ダンジョン内で俺の命令が聞けない人間は死刑なのだ。そしてダンジョンに侵入した全てのスパイを誘い出す為に俺は舐められた人間を演じているのだ。
「スケルトン部隊を出せ、銃撃に対する戦闘力と、相手の火力が知りたい」
「了解しました、スケルトンmarkⅡ部隊を出します」
そしてスパイ達は死ぬ前に俺のスケルトン部隊の戦闘データ収集の為に頑張って貰うのだ。俺は人間達を信用してない、いつか必ずダンジョンの制圧に乗り出して来ると思っていたのだ。人間って奴は愚かで欲深い生き物なのだから。