SS ダンジョンの怪しい者達
「わははは~、マスター見てくれ。今日も大漁だぞ!」
今日もうちのバルキリーのバル子はご機嫌だ。地下2階層の連中に毎日貢物をもらってくるのだ、主に食物なのだが、中には高価そうな宝石等が混じっていることも有る、バル子は食物以外は興味が無いので宝石なんかは全部俺にくれるのだ。
何故こうなったのかと言うと多分宗教的なものだと思うのだが、俺にはハッキリした事は分からない。ただ羽を生やして空を飛ぶバルキリーは天使に見えるらしくて、一部の人達がバルキリーが飛ぶ姿を見て跪いて祈っているのは良く見る光景だった。そして気軽に地下2階層をバルキリーが歩いていると、信者達が集まって来て祈りを捧げたり、貢ぎ物を差し出したりするのだ。まあ、見た目は普通の人間の女では太刀打ち出来ないほどの美女でスタイルも抜群、この世界の女が全部集まっても勝てないのは間違いない。何せ実際に空を飛び、戦車を切り裂く程強いのだ、映画の中の特撮ヒーローが実在している様なものなのだから。
「ヘイ! マスターまたバル子ちゃんに取材の依頼が来てるよ、約100社位から」
「バル子はスゲ~人気だな、信者が益々増えてるみたいだぞ」
「写真集が大人気らしいよ、生写真は1枚1万ドルで取引されてるって話しさ。彼女は既に世界的な大スターだよ、大統領選挙に出たらダントツで一位だって噂だよ」
「それじゃあ、バルキリー饅頭でも造って売るか、儲かりそうだ」
「相変わらずマスターってショボイよね、もっと簡単に儲けられるのにね」
「商売って奴は長くコツコツやるもんだ、詐欺まがいの方法は長続きしないぞ」
こうしてダンジョンのお土産にバルキリー饅頭が加わった、普通の饅頭にバルキリーの絵を焼き付けただけのアンコ入の饅頭だ、それが千円で飛ぶように売れたから儲かった。因みに類似品が出てきたので、キングに呪いを掛けて貰ったら、類似品の販売は直ぐに止まった。それからは、ダンジョンの類似品を売ると神に呪われると言う事実が広がり、ダンジョンの権威は更に高くなったのだ。
呪われた人がどうなったのかって・・・・・・まあ、想像どおりとしか言えないな、キングは手加減なんてしないからね。
「それでどうするのマスター、バル子ちゃんの取材?」
「断ってくれ、部下で金儲けする趣味は無いからな」
「凄く儲かるんだけどね、まあマスターは既に大金持ちだから金なんて要らないよね」
そして地下2階層に有る石像の前で今度はコア子が何やら怪しげな説教をしている。この石像、前の異世界の人間達を貴族から救った時に建てられた石像なのだが、俺とバル子とコア子がモチーフに成っているのだ。まるで俺に似てない顎髭をはやした賢者の像、背中から羽の生えた凛々しいバルキリーの像、そして俺の横に立つ微笑んだメイド姿のコア子の像。
「何やってるんだ? コア」
「ああ、マスターですか。これは布教活動です。世界中にダンジョン教を広げるのです、そして私の石像を世界中に建てるのです」
「さいでやすか~ほな頑張っておくれやす」
コア子の考えは俺には分からない、あいつは何と戦っているのだろう? 大体ダンジョンコアって何だろうな、ダンジョンの核心だって事は分かっている。そしてコア子がダンジョンコアが遠隔操作している人型の魔物だっていう事も分かっているが、分かっているのはそれだけ、つまり俺はコアの事は全然分からないのだ。
「まあ良いや」
ダンジョンマスターの俺が分からないので誰かに聞いても無駄だって事は分かるのだ、物事は有るがままに受け入れた方が良い事だって有るのだ・・・・・・という事にした方が楽そうなので考えないようにした。
「ふはははは。マスター、ご機嫌はいかがですかな」
「よう、キング。ご機嫌じゃないか」
「ハハハハ、マスターの下僕を増やしましたぞ。お喜び下さい、マスターが世界征服する日も近いですぞ」
キングの後ろに黒いフードを被った怪しげな集団が居た。物凄く怪しい、絶対に碌な連中じゃ無い。近づきたくない人達みたいだった。
「まあ、ほどほどにな!」
何だか怪しい集団なので急いでそこから逃げる事にした。あれは関わっては駄目な人達なのだ、最近は胃が痛くなる事が増えたのだ、この世界って異世界よりもストレスが多いのだ。あっちはシンプルに毎日ご飯の心配だけしておけば良かったから楽だった。
「ヘイ! マスター、遊ぼうぜ」
「お~隊長じゃん、今日もやるのか?」
「当たり前だ! これは訓練だぜ! 訓練!」
アメリカの守備隊の隊長は俺を訓練に良く誘ってくれるのだ、ストレス発散には銃をぶっ放すのが一番だ。そしてその後で皆でバーベキュウをして騒ぐのだ。
「今日は何の訓練だい? キャプテン」
「今日はレミントン700Vだ、1000ヤード射撃でどうよ?」
「良いね、じゃあダンジョン地下3階層でやろうぜ。あそこは立ち入り禁止にしているから撃ち放題だぜ」
俺のストレス発散、アメリカの兵士達に混じっての長距離射撃訓練、アメリカ軍は山程弾を持ってるので打ち放題なのだ。そしてダンジョン内は無風なので良く当たる、重力の計算をするだけで良いので長距離射撃に最適な場所だった。ほぼ狙った場所に着弾するのだが、銃の弾は多少バラけるのが普通だ、此れは狙撃手の腕が悪いわけでは無く、銃弾の品質に差がある為なのだ、だから射撃大会の上位の成績って奴は運が大きく左右するのだな、腕は互角でも弾の品質に違いが有る為に得点が変わるのだ。
「ワハハハ、どうだ!」
「おいおい、マジかよ。マスター、ダンジョンなんか辞めてアメリカ軍に入れよ、直ぐにトップスナイパーになれるぜ」
「マスターを首になったら宜しく頼むわ、隊長」
山程レミントンを撃ってストレスを発散した俺は、気前よく肉を提供して皆とバーベキュウをして楽しむのだ、やはり気を使わないで済む連中といる時が一番楽しかった。
これがダンジョンの中心人物4人の日常風景である。




