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第九話 粗大ゴミ

 レクリエーションの翌日の朝、俺は雨音の相手をするのが面倒くさいので先に登校してきた。


「よぉ、待っていたぜ、西条飛鳥!」


 教室の扉を開けると、何故か仁王立ちしているリーゼントがいた。せっかく雨音から逃げたと思ったら、また面倒くさい奴が現れたな。

 まだ朝のSHRまで時間がある。適当に外のベンチに座って読書の続きでもするか。


「ちょっと待ちやがれ! どこに行くつもりだ!?」


 俺が移動しようとしたらリーゼントに止められた。

 雨音に惚れているのは聞いたが、そんなに俺に絡まなくていいだろ。て言うか、俺に絡む前に本人に告白しろ。そしてフラれてショックで引きこもれ。そうすれば俺が楽になる。


「……えーと、杉谷だっけ? 俺に何の用?」


「誰だ、それは!? 俺の名前は杉崎だ! そんなに覚えづらい名前じゃないだろ!? ふざけているのか!?」


 別にふざけているつもりはないんだが。何故か、こいつの名前は覚えられない。下の名前はなんだっけ?


「……で、何の用だ?」


「やっと話す気になったか。お前を俺のライバルと認めてやる!」


「ん? 灰崎兄妹か。おはよう」


 俺は後ろから教室に入ってきた灰崎兄妹に気付いて挨拶した。


「……ああ、おはよう」


「おはようございます」


 二人は挨拶を返して、そのまま自分の席に向かう。雨音みたいにしつこく絡まれるのも嫌だが、ここまであっさりしているのも嫌だな。もうちょっとリアクションがほしいところだ。


「人が大事な話をしているのに無視するな!」


「酷いよ、飛鳥ちゃん! 私を無視して先に行くなんて!」


 雨音が走って俺に詰め寄ってきた。廊下を走るな。校則違反だぞ。まぁ、不純異性交遊と不純同姓交遊を推奨するような学校だ。マトモな校則があるかは知らないが。

 にしても雨音とはもう何かずっと一緒にいるような気がするが、まだ会って三日目なんだよな。こいつの距離感が近すぎるから、そのことを忘れてしまう。


「だったら静かにしてくれ。俺は朝が苦手なんだ」


「おい、西――」


「だから煩い」


 俺はリーゼントの鳩尾を全力で殴る。リーゼントは悶絶しながら気絶した。


「後のことは座ってからにしないか? ここだと他のクラスメイトにも迷惑になる」


「んー、そうだね」


 そして俺達は自分の席に向かう。雨音から離れてのんびりと読書をする予定だったのに台無しだ。どこか俺が静かに読書と昼寝を出来る場所はないものか。


「グハッ」


 何か気持ち悪い声が聞こえた。


「雨音。今の音は何だ?」


「何かゴミを踏んじゃったみたい」


「そうか。ちゃんと下は確認しろよ」


「うん。じゃあ、今晩にでも確認する」


 雨音の視線が俺の股間に向いている。こいつの発想はどうなっているんだ? あの変態先生と変わらないぞ。


「……おい、雨音。俺が言っているのは床を見ろと言うことだぞ」


「そんなの分かってるわよ。もしかして変な妄想しちゃった? 飛鳥ちゃんはエッチだなぁ」


 相変わらず人をイラッとさせる天才だな。

 部屋替えを希望したいが、あの先生に何を言っても無駄だろう。


 俺は席に座って雨音を適当にあしらいながらSHRの時間が来るのを待つ。にしても、まだHRまで時間があるとは言え人数が少ないな。クラス三十人のうち半分くらいしか来ていない。昨日のレクリエーションの疲れで寝込んでいるのか。


 そしてSHRの開始時間ちょうどに扉が開いて不機嫌そうな先生が教室に入ってきた。何かあったのか?

 服装は最初から挑発的だったが今日は特に挑発的だ。ヒラヒラのミニスカートにサイズの小さいタンクトップ。大きい胸を更に強調するようでかなりエロい。

 普通の学校ならPTAから訴えられるレベルだ。教師がしていい格好ではない。


「……何、鼻の下を伸ばして。もしかして飛鳥ちゃんはああいうのが好きなの?」


 雨音が不機嫌そうに聞いてくる。何で、雨音が不機嫌になるんだ?


「いや、別に」


「本当に?」


「…………本当だ」


「その間は何?」


 いや、俺も年頃の男だからな。女には興味がある。て言うか、あれに反応しない方がおかしいだろ。反応しない奴はロリコンにホモ、不能ぐらいだ。


「あれ? 何か粗大ゴミが落ちてる」


 そう言うと先生はヒールの靴で床に落ちている粗大ゴミ(リーゼント)の股間をグリグリと踏みつける。


「グオッ!」


 気絶していたリーゼントが痛みで悶絶しながら意識を取り戻した。そして、また痛みで気絶する。これは直接されていなくても男として堪えるものがあるな。他の男も同じように微妙な顔をしている。


「ねぇ、私は女だから分からないけど、あれって痛いの?」


「……ああ、この世の地獄だ」


 確かに重要なものではあるが、何で男にはこんな弱点があるんだ? 意味が分からない。


「ほいっとな」


 先生は粗大ゴミ(リーゼント)を教室の外に向かって蹴り飛ばす。て言うか、今の俺の場所からは見えないが近くの席の奴にはスカートの中が見えただろ。その証拠に窓際の一番前の席の奴が鼻血を出している。

 そして先生はすっきりとした表情で言う。


「後でクラス委員はごみ捨てよろしくね」


 いや、クラス委員はまだ決まってないが。誰がごみ捨てをするんだ? あんなのが廊下に転がっていたら他のクラスの奴等にも迷惑になる。


「じゃあ、皆楽しみのSHRを始めるよ」


 誰も楽しみにしてねぇよ。SHRなんて面倒くさいだけだぜ。


「一応、昨日のレクリエーションの結果発表をするね。優勝は灰崎静夜くん、準優勝は西条飛鳥ちゃんです。二人には後で賞品として食券をプレゼントするから職員室に来てね」


 賞品なんてあったのか。そんな話は聞いてなかったがラッキーだな。


「ちなみに撃破数も静夜くんが十人で一位。雨音が五人で二位。飛鳥ちゃんと雫ちゃんが四人で三位よ」


 灰崎が一人でクラスの三分の一を倒したのか。そういや、思ったよりもレクリエーションが終わるのが早かったけど灰崎のおかげだったんだな。

 て言うか、何で雨音だけ呼び捨て?


「後、飛鳥ちゃんには別に先生から特別プレゼントがあるから放課後に先生の部屋に来てね」


 え? 何か先生がドSの顔をしているんだが。俺に何をする気だ?

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